VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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番外編

ホワイトデー 真崎宵はクッキーになった。

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本話にはBLならび性交渉表現が含まれています。
苦手な方は読み飛ばしてください。
────────────────

⚫︎真崎宵(中学2年生)

 今日は3月14日、俗に言うホワイトデーだ。
 クラスの男子の様子はというと、意中の女子にチョコを渡そうと張り切っている者、義理チョコでもチョコを貰った以上はお返ししようという義理堅い者、そんなリア充イベントとか関係ないと見栄を張る者など様々だ。
 ちなみに今日の僕は義理チョコのお返しとクラスメイトへの友チョコ配布マシーンになっている。モルモットのおかげで僕のお菓子作りの腕もあがったので割と好評だ。

「先月はありがとう。これお返しね」

「うぅわぁ……なにこれ、手作り!?」

「うん」

「ありがとう!昼休に食べるね」

 僕らの通う深森中は比較的校則が緩く、授業の妨げにならない限りは特に干渉されない傾向にある。だいたいクラスに1人か2人は授業中にチョコを食べて怒られてるけど、それは怒られる奴が悪い。

「真崎!友チョコやるからクッキーくれ」

「なにそれ、まぁいいけど」

「っしゃぁ!」

 僕の用意した友チョコ(チョコチップ入りクッキー)はクラスメイトにはかなり好評だ。藍香や暁のために試行錯誤していたら少し作りすぎてしまったので今年は去年のように「俺は友達じゃないのか!」とか言い出すふざける奴もいない。

「真宵はいるかしら」

「真崎ー!嫁さんが来たぞー」

「はいはーい」

3時間目が終わった後の休み時間、今年は別のクラスになってしまった藍香が教室に訪ねてきた。ちなみに藍香が嫁さんと呼ばれている理由は分からないけれど、気がついたら『夫婦別姓なだけで結婚している』みたいな噂が流れていた。ちょうど僕が噂の存在を知った頃、藍香が先輩から立て続けに告白され困っていたので今に至るまで噂に関しては否定も肯定もせず放置している。そのせいかクラスメイトの中では完全に夫婦扱いだ。

「どうしたの?」

「……クッキー、配ってるって本当?」

「ちょっと作りすぎちゃったんだよ」

「うちクラスに真宵の手作りクッキー貰ったって子がいたのよね」

「あー、加藤さん?バレンタインにチョコくれたしお返しにあげたんだよね」

「(チッ、彼氏持ちの癖に真宵に粉掛けるとか……彼氏煽って破局させてやろうかしら)」

 藍香さーん、心の声が漏れてますよー?
 そういえば藍香はバレンタインやホワイトデーの義理チョコや友チョコという存在が嫌いらしい。特に付き合っている人がそうでない相手にチョコをあげるのは不義だと前に言っていた。
 実際、身内以外からは友チョコも義理チョコも受け取らないと以前から明言している。このことで藍香のことを悪く言うのは当日になって受取拒否された男子の一部と彼らに片想いしてる女子くらいだ。

「そうだ。藍香、今日は生徒会もないし一緒に帰らない?」

「いいわよ」

「それじゃ放課後、昇降口で待ってるから」

「分かったわ。あ、そろそろ授業始まるわね。また」

「またね」

 藍香のクラスは次の時間たしか体育だったはずだ。
 確かにそろそろ移動しないと間に合わないだろう。

「ったぁ~真崎、お前よく夏間と普通に話せるよな」

「普通じゃない?」

「なワケあるかっ!知ってるか?バレンタインに夏間に告った後藤先輩、寺に入るってよ」

「はい?……それマジ?」

「マジ。進学諦めるとかで親や学校と揉めてるってさ」

 後藤先輩というのが誰かは知らないけどご愁傷様としか言えない。バスケ部の人だった気もするけど顔も思い出せないし、そんな人が寺に入ろうが僕には関係ない。どうせ藍香が何食わぬ顔して痛烈な言葉を浴びせて心を折ったのだろう。南無三。

「さすがに高校までは進学した方がいいよね。中卒で働くのは僕には無理」

「爺ちゃんたちの世代は高卒で働いたら負け組とか言われてたらしいけどな」

「何それ怖っ」

 少子高齢化が進んだ影響なのか僕らの世代より少し上の世代からは高卒での就職を推奨している気風がある。目的もなく大学に行くくらいなら高卒で社会的に自立しろってことなんだろう。

「あ、そうだ。俺にもクッキーくれ。須美が旨いって言ってたんだ」

「はいはい」

「サンキュ、今度何かおごるわ」

「期待しないで待ってるよ」

 ちなみに彼、六堂正樹の言う須美というは彼の彼女で、藍香のクラスメイトである加藤須美のことだ。春休み中に加藤須美が浮気したとかで破局することになる。
 たぶん藍香の差金だろうと問い詰めたところ、どうやら以前から浮気はしていたらしく「遅かれ早かれ別れてたわよ」とのこと。


…………………………………


……………………………


………………………


「初めて見た時から君が好きだ!俺と結婚を前提に付き合ってくれ!」

「「「「「!?」」」」」

「はい?」

 僕は今、一言では言い表せない複雑な心境にある。
 放課後、昇降口で藍香を待っていると先輩──名前は覚えないけど元テニス部の部長さんだったはず──から声を掛けられ、壁ドンされた上に告られた。
 たぶん、この先輩は僕を女だと誤認している。初対面だと割といるので慣れてはいるけれど、さすがに告白までされるのは初めてだ。まずは誤解から解こう。

「せ、先輩。僕は男です」

「そうか。だが俺は君が男だって構わない」

 同性での恋愛とかあるのは知ってるけど、僕が男だと知っても逡巡することなく言い切る人はだ。藍香に女装させられて貞操の危機を幾度となく乗り越えた僕の対応力を知るがいい!

「それに僕には好きな人がいるんです」

「なら俺の方が好きだって言わせて見せる!」

 そこは諦めてくれないかな?
 無駄にイケメンな先輩の顔が僕の顔に近づいてくる。
 放課後の昇降口という一目も多い場所でキスするつもり!?
 あんまり好きじゃないけれど、こうなったら実力行使するしかないだろう。

「ごめんなさい」

 そう言って僕は先輩の股間を膝で蹴り上げる。
 あまり想像したくない激痛によってうずくまろうとする先輩の脇腹を殴った。脇腹にめり込んだ拳からメキメキと骨が軋む気持ち悪い感触が伝わってくる。感触的には折れてはないはずだ。
 折れたら響くような音が伝わってく




──ゴキッ




「あ゛あ゛ぁぁぁああ゛」

「あ、折れた」

 床に倒れた先輩が股間と脇腹を抑えながら踞ってしまったので腹を蹴り上げて仰向けにしてから隙だらけの鳩尾を踏みつける。既に抵抗できるような様子ではないけれど、現実にはダウン中はダメージを受けないなんて都合のいい仕様はないんだ。

「って、なに顔を赤くしてんだよ。この変態っ」

 涎なのか鼻水なのか、それとも涙なのか判別できないくらいぐちゃぐちゃになった先輩を見下しながら鳩尾を爪先でにじる。足を掴んで爪を立てようとしてきたので、僕は一度足を持ち上げてなら手のひらごと踏み付けることにした。
 僕の体重は50kgもないのでそこまで痛くはないだろう。

「ぐあ゛ぁあ!!」

 抵抗らしい抵抗をしなくなった先輩を見た時、客観的にどちらが加害者という疑問が頭をよぎった。どう見ても僕が加害者だろう。
 このままだと不都合なので誤魔化そうと思う。そして真っ先にやって来るのはおそらく生活指導の滝沢佳子先生だ。言動は荒っぽいが生徒に真摯に向き合ってくれるし、藍香ほとではないけど美人なので、校内には滝沢先生のガチ恋勢を自称する生徒(と先生)がいるくらい人望のある先生だ。
 ただ残念なことに重度のショタコン(藍香調べ)らしいので、僕が涙腺を緩めて「襲われて暴れました」というていを作っておけば多少は甘く見てもらえるだろう。

「おい、何があった!」

「ぐずっ、ごわがっだぁぁぁぁぁ……ぐふっ」

 不本意ながら滝沢先生に泣きつ……こうとしたところを藍香に横から体当たり……というか抱きしめられた。どうやら藍香に密告した伝書鳩がいたらしい。

「宵!宵!ごめんね、ごめんねっ」

「んー!んー!」

 鼻と口を胸で押さえつけられて息が出来ないなんてアニメみたいなことはない。確かに息苦しさはあるけれど、胸の谷間の僅かな隙間のお陰でどうにか窒息はせずに済むはずだ。
 それと藍香が僕に謝っているのは昇降口に来るのが遅くなったからだろうな。そんなの結果論でしかないんだから謝る必要なんてないのにね。

「おねショタてぇてぇ……」

 おいショタコン、こっち見て悶えてんな。
 この後、僕と先輩の両親が学校に呼び出され滝沢先生や担任の御手洗みたらい先生ら同席の元で3時間ほどOHANASI罵り合いがあったようだ。
 もちろん僕が先輩の肋骨を折ったことは問題になったが、先輩が僕にキスしようと迫っていたという目撃証言が複数あったこと、先輩が自分の非を認めていた上「抵抗されなければ犯してた」などと発言をしたせいで結果的に僕の行為は正当防衛として扱われることになった。
 ただ先輩のご両親は納得せず揉めに揉めたようだ。最終的に僕が先輩の肋骨の治療費と通院に必要な交通費を支払い、先輩のご両親が僕に150万円の慰謝料を支払うことで決着した。

「(でも少しやりすぎだったよね……先輩、卒業式来るかな?)」

 学校という狭いコミュニティで醜聞が広まる速度は尋常じゃないし、これを収めるのには年単位になる。特に強姦未遂なんて外聞が悪すぎるし、起こった場所が人目の多い放課後の昇降口だ。少なくとも今の1年生が卒業するまでは毎年のように噂されるだろう。

「すぅ…………すぅ……」

 それはそうと僕は現在、被害者ということで隔離され保健室のベットの上で藍香の抱き枕にされている。おかげで今は隣で寝ている藍香を襲わないよう理性を振り絞るので精一杯だ。
 様子を見に来てくれた滝沢先生は「おねショタてぇてぇ」という言葉を残して即座に出て行ってしまったし、保健室の先生は先輩を病院に連れて行ったため不在。
 無理に動くと藍香の柔らかな身体を妙に意識してしまい理性が削られる。じっとしてても藍香の寝息で理性が削られていく。誰でもいいから助けて欲しい。

「……ふぁぁ」

 結局、僕は目を瞑って耐えている間に寝てしまった。
 なので僕が藍香に食べられたなんて事実はありません。
 そういうことにしてください。

───────────────
お読みいただきありがとうございます。
バレンタイン回で予告していた(?)告白回です。
なお、この4ヶ月後に新入生妹の友達からも似たような告白をされる模様。

宵たちが夫婦扱いされているのは2人の仲の良さを見た誰かが「お前ら付き合ってるの?」と宵に聞いた際に「藍香はだけど彼女ではないよ」と否定したことが原因。藍香は噂や恋人関係についてはニッコリ笑うだけで否定も肯定もにしていません。
この説明、本話に上手く挟みたかった……

お気に入り登録人数1000人突破ありがとうございます。
(2021/3/14)
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