VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第98話 マヨイはフラグを回収する。

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⚫︎マヨイ

 ゲーム7日目、そしてイベント3日目の昼間、今日もパーティ部門の難易度10を周回していた僕らは壁にぶつかっていた。ちなみに迷い家のメンバーの位階は先ほど終わった周回で全員が100に到達している。

「スコアの上限って19970なの?」

「パーティ部門はもう上がらなそうよね。そろそろギルド部門に挑む?先に進化してしまう?」

「進化することでステータスが下がることを考慮すれば先にギルドランキングを詰めてしまってもいい気がするなぁ……でも」

「経験値を無駄にしてるみたいで嫌なんでしょ?」

「そうなんだよね」

 正直なところギルドホームを手に入れたことで僕らがギルドランキングに参加する意味はほとんどないと言っていい。それに今のままなら1位を取るのは簡単そうだ。なら参加はイベント終盤までギルドランキングへの参加を見送って個々人の戦力強化に充てても問題ないはずだ。
 ただ暁たちがどう思っているかも聞いておきたい。最終判断は僕と藍香でするとはいえ、ギルドで行動しているのだからギルドメンバーの意見を聞くべきだろう。

「アカトキたちはどうしたい?」

「え、私は今のとこ寄生みたいになってるから意見言う資格ないかなー」

 透明獅子からの不意打ちを片っ端から防いでくれているだけでも充分に活躍していると思うけどね。僕も暁と同じように視覚以外で透明獅子からの不意打ちを察知しようと試したけれど、何度か暁の方が先に反応していたような気がする。

「クレアちゃんは?」

「その、ドワーフの女の子は可愛いって掲示板にあって……」

「早く進化してみたいのね?」

「は、はい。お兄さんのおかげでハイドワーフの進化条件も満たしてますし……その、進化、したいです」

「なら今からアルテラ行くと昼飯の時間になるし、午後は自由行動にしようか。アカトキは竜人になりたいんだろ?なら竜の素材についての情報を集め「待って!」……ん?」

「その……竜人なんだけどビジュアルが……ね」

 そういえば朝方に竜人に進化したというプレイヤーが自分のアバターの全身像を掲示板に載せていた。あの蜥蜴人間に翼が生えたような外見は好みの分かれるところだろう。肌も全体的にゴツゴツしていたし、暁の好みからは大きく外れていそうだ。

「なるほど、で進化先はどうするんだ?」

「ドワーフもいいかなって思ったんだけど、精神が下がると魔法防御力も下がるでしょ?だから満遍なく強化される人間にしようかなって思ってる」

「今のアカトキのスタイルだと知力以外は捨てられないものね」

「アカトキが考えた結果ならいいんじゃないか?」

 暁は他人に色々と言われてコロコロと意見を変えるような性格じゃない。ここで「万能と言えれば聞こえはいいけど、下手すると器用貧乏になるだけだぞ」と注意しても返って反発されるだけだろう。

「もうすぐ正午になるわね。全員でアルテラに行ってから解散、午後は自由行動にしましょうか」

「進化は明日の合流までにしておけばいいかな」

「そうね。ただし、何かトラブルに巻き込まれたらギルドで情報を共有すること。可能なら録画もしておきなさい。いいわね?」

「おっけー

「「はーい」」

 面倒見のいい藍香のことだから暁たちがクラスメイトや流星群のメンバーから絡まれた時のことを想定した上での注意だよな。僕なら暁のクラスメイトたちとは話し合いで済ませたいけれど、流星群──特にシブンギ──には遠慮する必要がないから躊躇なく運営に頼ろうかな。あ、でもトリスやユウジに絡まれたら社会的に死んで貰ってもいいかもしれない」

「兄さん、その、一応はクラスメイトだから社会的に抹殺するのはやめてあげて欲しいかなー、なんて」

「あれ、口に出てた?」

「はい。流星群の人と会ったら通報すればいいんですね!」

「流星群の人に難癖つけられたらだからね?」

 声を掛けただけで通報されるのは流星群の人でも可哀想だ。
 藍香の協力者もいるだろうし線引きはしっかりしておかないとね。

「トリスやユウジに絡まれたら非公式掲示板の腐女子スレに個人情報を晒しちゃえば、アバターの見た目も大衆受けしそうだし色々と面白くなりそうね」

「あー、あの2人って幼馴染だもんね」

「そうなのアカちゃん?」

「前にトリスが幼稚園からの腐れ縁だって言ってた」

「「へー」」

 非公式掲示板にそんな恐ろしいスレッドがあるなんて初耳だ。
 トリスとユウジ、絶対絡んでくるなよ?絶対だからな!

「そろそろ移動しましょうか」


…………………………………


……………………………


………………………


 回収したくもないフラグが回収されたのは、僕らがアルテラに到着して藍香とクレアちゃんがログアウトした直後だった。
 暁と一緒に組合へイベントモンスターの素材を売りに行く途中でトリスを含めたパーティを見つけてしまったのだ。それだけなら道を逸れて避ければいいだけなんだけど、向こうも僕らに気がついたのか剣呑な様子で向かってくる。あの様子だとトリスが僕らに友好的な対応をしてくるとは思えないので念のために録画しておこう。

「てめぇ!俺の装備返しやがれ!」

「お前がトリスから装備をって奴か」

「つーか、後ろにいんのまさk……っといけね。えーっと、アカトキだよな?何でそんな奴と一緒にいんの?」

 トリスが組んでいるのは一昨日会った時とは別のプレイヤーだ。全員かどうかは知らないけど暁のことを知っているプレイヤーがいるということは何人かは暁たちのクラスメイトなんだろう。

「兄さんに吹っかけて無様に負けただけのイキリのクセに盗んだとか言い掛かりつけるとか……あんた生きてて恥ずかしくないの?」

「ふざけんな!そっちの奴がチート使ったに決まってんだろ!」

「チートしてんの運営にバラされてくなきゃさっさと装備返せよ」

「つーか、慰謝料寄越せや」

「皆さーん、こいつチート使いでーす!」

 これまで暁やクレアのクラスメイトだから色々と我慢していたけれど、何事にも限度や超えてはならない一線ともいうものがある。僕の方を見ながら何か言っている野次馬にも無性に腹が立つけれど、彼らを相手するのは時間の無駄だ。
 僕は撮影した動画を添付して運営に通報すると、それから10秒も経たずにトリスたちと野次馬たちが消えた。おそらく一定時間のログイン制限などのペナルティを受けたのだと思う。

「おぉ……やっぱり運営の対応が早いね」

「ねぇ兄さん、まだ怒ってるでしょ」

「殺意湧いてるだけで別に怒ってはないよ」

「…………」

「とりあえず組合で素材売って昼飯にしようか」

 暁と一緒に組合でイベントモンスターの素材を売った僕らは昼飯を食べるためログアウトした。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
竜人のビジュアルイメージはSW2.0のリルドラケンです。

トリスに対する追撃は次話冒頭にて。
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