VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
183 / 228
本編

第170話 マヨイは交換する。

しおりを挟む

⚫︎マヨイ

 僕は鋼王龍の噛み付き攻撃を回避しながら何度も叩きつけようとするが、鋼王龍には学習能力でもあるのか無闇矢鱈な攻撃をやめてフェイントまで混ぜはじめた。
 しかし、僕の狙いは変わらない。鋼王龍の鱗が魔術や魔法を反射するというなら鱗のない部分を狙えばいいのだ。杖での攻撃の目的は牽制と挑発。僕は回避しながら鋼王龍が正面から噛み付いてくるのを待った。

「SHAAAAA!!」

「(攻撃威力調整+100%・魔力弾×1000)」

 大雑把に狙いを付けるだけならいざ知らず、迫り来る鋼王龍の口内をピンポイントで狙うなら1000発が限度だろう。これ以上は確実性に欠ける。

「GYAAAAA!!!」

 そして鋼王龍の口内に着弾した魔力弾は反射されることなく鋼王龍の体力バーを最後の1本を残り4分の1近くまで削り怯ませることに成功した。

「はぁっ!」

「GIYAAAAAA!!」

 そして僕はのたうち回る鋼王龍に接近して鋼王龍の見開かれた目に杖を突き立てて鋼王龍の体力も削り切った。魔力弾に頼って厄に苦戦していた頃なら勝つのは難しかったと思うけど、あの頃とはステータスが違い過ぎる。


[Ore Dragon Kingを倒した]
[素材:鋼王龍の龍麟を400個獲得した]
[素材:鋼王龍の肉を300個獲得した]
[素材:鋼王龍の血液を600個獲得した]
[素材:鋼王龍の鋼骨を250個獲得した]
[素材:鋼王龍の心臓を1個獲得した]
[素材:鋼王龍の鉄牙を50個獲得した]
[素材:鋼王龍の魔眼を2個獲得した]
[素材:鋼王の魔石を1個獲得した]
[称号:鋼王龍の討伐者]
[称号:同属討ち]
[称号:ドラゴンスレイヤー]
[称号:レギオンスレイヤー]


 こうして僕と鋼王龍との戦闘は終わった。アイテム欄に入った鋼王龍の素材を一通り確認した僕は鋼王龍が地表に出てきた際に空いた大穴の中に足を踏み入れた。

「血の匂いまで再現するなよ……」

 大穴の中は強烈な血の錆びた鉄のような匂いが充満していた。光源が少ないこともあってとてもホラーチックだ。

「体力バーが1本しか無いってことは子どもとか?」

 鋼龍たちの体力が尽きた時点でアイテム欄に鋼龍の素材が大量に入ったのだけど、この大穴の奥にまだ体力バーの残った個体がいる。しかし、その個体には体力バーが1つしかない。僕は鋼王龍もしくは鋼龍の子どもでもいるのではないかと予測を立てたのだけど、それはある意味で正解だった。

「卵か……」

 奥まで進んで見つけた体力バーのある時は鋼王龍の卵だった。高位鑑定の結果はクルルと同じ原竜の卵だ。いくつか落石によって潰れてしまっているが、完全に無傷のたまこが4つある。僕はその4つの卵と割れた卵の殻をアイテム欄に入れて大穴から出た。それにしても天井からパラパラと小石が降ってくるのは危ないと思う。

「なぁ!おっきな蛇を倒したのはあんたか!?」

 そして大穴から出たところで見知らぬ男性プレイヤーから声を掛けられた。鋼王龍を蛇と形容した彼の名前はクオン。素質に戦士と剣士、覚醒に剣士を持った位階は49のプレイヤーだ。

「ちょ、ちょっと、いきなり失礼だよ!ごめんなさい、悪気はないんです。ごめんなさい」

 そして彼の無遠慮な問い掛けを諫めて謝罪しているのはカナタというプレイヤーだ。位階はクオンと同じ49。素質に魔術士と商人、覚醒に料理人と翠風の魔術士がある。

「あら、君は……」

 そして3人目は……数日前、エイトの街壁近くで発生したトラブルに巻き込まれた際にいたプレイヤーだ。名前はジャスティ。位階は58とクオンやカナタよりも高く、素質は騎士と神使。そして覚醒には正騎士と青のとある。パーソナルには男と書いてあるけれど巫女とあるのなら女性とみた方がいいだろう。パーソナルの性別は任意で設定できるので本来と別の性別に設定することも可能だ。

「以前にもお会いしましたが自己紹介はしませんでしたね。僕はマヨイ。迷い家っていうギルドのギルドマスターをしているよ」

「俺はクオン。こっちの口うるさいのがカナタだ!ギルドには入ってないぜ」

「口うるさいって何よっ!あ、ごめんなさい。カナタです。私もギルドには入ってません」

「私はジャスティ。今はクオンやカナタと同じくギルドには入っていない。前は現実の友人に誘われてイベント中はギルドに入ったんだが少しソリが合わなくてね」

 何か嫌なことでも思い出したのかジャスティの顔が歪む。その表情からはどころではないのがありありと伝わってくる。

「ここへは何が目的で来たの?」

「クオンの盾を作るために抗魔鱗こうまりんという素材が落ちてることがあるらしい廃坑の調査依頼を組合で受けたんです。ドラゴンの鱗らしいのですが何か知りませんか?」

 抗魔鱗とは鋼龍の鱗の別名だとアイテムを高位鑑定した時に確認している。鋼骨──もちろん鋼龍のもの──も数は十分にあるので対価さえ貰えるなら譲ってもいいだろう。

「持ってるよ」

「マジで!?」

「対価さて貰えるならあげてもいいんだけど、僕には鱗の相場なんて分からないから珍しい素材とかないかな?もしよかったら交換しようよ」

「交換かぁ…….俺、ワイバーンの翼膜くらいしかないぞ?」

 ワイバーンの翼膜か。それがあればククルよ揺り籠を作る時に鋼龍や鋼王龍の素材では無理だった時にワイバーンを狩りに行く必要がなくなる。

「それでいいよ。作る盾の大きさによるだろうけど10枚くらいあれば足りるかな?」

「え、いいのか!?」

「マヨイさん、それは貰いすぎですよ!」

「ちょうどワイバーンの素材が要り用になりそうでね。わざわざワイバーンを狩りに行く必要がなくなるならこれくらい安いものさ」

「「ありがとう/ありがとうございます)」」

 こうして僕とクオンはそれぞれ欲しいものを手に入れたわけだけど、おそらくジャスティはカナタと違ってクオンの手伝いというわけじゃないよね。

「どういたしまして。それでジャスティも鱗が欲しいの?」

「現時点で最強のプレイヤーだと言われてる貴方が欲しがるような素材に心当たりがなくてね。私もワイバーンの素材は持ってるけどクオンと交換したなら要らないだろ?」

「いや、骨とかあるなら欲しいな」

 揺り籠の素材にどれくらい必要になるか分からないし、たった1度で上手く作れるとも限らない。保険として少し多めに持っておくのも悪くはないはずだ。

「鎧のために数が必要なんだが、これで何枚くらい交換して貰えるだろうか」

「まるまる1匹分か……」

「ジャスティすげぇな!」

 頭から尻尾の先まで丸々1匹分の素材か。鎧にどれくらい必要なのか分からないけど、翼膜に10枚出したのだから少なくとも倍は出すべきだよね。

「100枚でいいかな?」

「そんなに貰っていいのか?」

「クオンには翼膜だけで10枚出したからね」

「そうか。ならお言葉に甘えさせて貰おう」

 こうして僕はジャスティとも素材を交換した。ワイバーンの素材はクレアなら素材として優秀だと聞いているし揺り籠に使わなくても無駄にはならないはずだ。

「あとは廃坑を探している調査依頼を終わらせるだけだな!」

「…………ごめん」

「なんでマヨイさんが謝るんだ?」

「そうだぞ。依頼を受けたのは私たちであってマヨイではないんだ。何も気に病む必要はない」

 ジャスティは僕が彼らの受けた依頼に同行出来ないことへの負い目から謝っているのだと勘違いしたようだ。これは後でトラブルになる前に素直に教えておいた方がいいだろう。

「…………廃坑ぶっ潰しちゃった」

「「……………………え?」」

 カナタだけは何となく察していたのか「やっぱり」と小さく呟いた。察しの良い子は好きだよ。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
また更新が遅くなって申し訳ありません。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...