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本編
第170話 マヨイは交換する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
僕は鋼王龍の噛み付き攻撃を回避しながら何度も叩きつけようとするが、鋼王龍には学習能力でもあるのか無闇矢鱈な攻撃をやめてフェイントまで混ぜはじめた。
しかし、僕の狙いは変わらない。鋼王龍の鱗が魔術や魔法を反射するというなら鱗のない部分を狙えばいいのだ。杖での攻撃の目的は牽制と挑発。僕は回避しながら鋼王龍が正面から噛み付いてくるのを待った。
「SHAAAAA!!」
「(攻撃威力調整+100%・魔力弾×1000)」
大雑把に狙いを付けるだけならいざ知らず、迫り来る鋼王龍の口内をピンポイントで狙うなら1000発が限度だろう。これ以上は確実性に欠ける。
「GYAAAAA!!!」
そして鋼王龍の口内に着弾した魔力弾は反射されることなく鋼王龍の体力バーを最後の1本を残り4分の1近くまで削り怯ませることに成功した。
「はぁっ!」
「GIYAAAAAA!!」
そして僕はのたうち回る鋼王龍に接近して鋼王龍の見開かれた目に杖を突き立てて鋼王龍の体力も削り切った。魔力弾に頼って厄に苦戦していた頃なら勝つのは難しかったと思うけど、あの頃とはステータスが違い過ぎる。
[Ore Dragon Kingを倒した]
[素材:鋼王龍の龍麟を400個獲得した]
[素材:鋼王龍の肉を300個獲得した]
[素材:鋼王龍の血液を600個獲得した]
[素材:鋼王龍の鋼骨を250個獲得した]
[素材:鋼王龍の心臓を1個獲得した]
[素材:鋼王龍の鉄牙を50個獲得した]
[素材:鋼王龍の魔眼を2個獲得した]
[素材:鋼王の魔石を1個獲得した]
[称号:鋼王龍の討伐者]
[称号:同属討ち]
[称号:ドラゴンスレイヤー]
[称号:レギオンスレイヤー]
こうして僕と鋼王龍との戦闘は終わった。アイテム欄に入った鋼王龍の素材を一通り確認した僕は鋼王龍が地表に出てきた際に空いた大穴の中に足を踏み入れた。
「血の匂いまで再現するなよ……」
大穴の中は強烈な血の錆びた鉄のような匂いが充満していた。光源が少ないこともあってとてもホラーチックだ。
「体力バーが1本しか無いってことは子どもとか?」
鋼龍たちの体力が尽きた時点でアイテム欄に鋼龍の素材が大量に入ったのだけど、この大穴の奥にまだ体力バーの残った個体がいる。しかし、その個体には体力バーが1つしかない。僕は鋼王龍もしくは鋼龍の子どもでもいるのではないかと予測を立てたのだけど、それはある意味で正解だった。
「卵か……」
奥まで進んで見つけた体力バーのある時は鋼王龍の卵だった。高位鑑定の結果はクルルと同じ原竜の卵だ。いくつか落石によって潰れてしまっているが、完全に無傷のたまこが4つある。僕はその4つの卵と割れた卵の殻をアイテム欄に入れて大穴から出た。それにしても天井からパラパラと小石が降ってくるのは危ないと思う。
「なぁ!おっきな蛇を倒したのはあんたか!?」
そして大穴から出たところで見知らぬ男性プレイヤーから声を掛けられた。鋼王龍を蛇と形容した彼の名前はクオン。素質に戦士と剣士、覚醒に剣士を持った位階は49のプレイヤーだ。
「ちょ、ちょっと、いきなり失礼だよ!ごめんなさい、悪気はないんです。ごめんなさい」
そして彼の無遠慮な問い掛けを諫めて謝罪しているのはカナタというプレイヤーだ。位階はクオンと同じ49。素質に魔術士と商人、覚醒に料理人と翠風の魔術士がある。
「あら、君は……」
そして3人目は……数日前、エイトの街壁近くで発生したトラブルに巻き込まれた際にいたプレイヤーだ。名前はジャスティ。位階は58とクオンやカナタよりも高く、素質は騎士と神使。そして覚醒には正騎士と青の巫女とある。パーソナルには男と書いてあるけれど巫女とあるのなら女性とみた方がいいだろう。パーソナルの性別は任意で設定できるので本来と別の性別に設定することも可能だ。
「以前にもお会いしましたが自己紹介はしませんでしたね。僕はマヨイ。迷い家っていうギルドのギルドマスターをしているよ」
「俺はクオン。こっちの口うるさいのがカナタだ!ギルドには入ってないぜ」
「口うるさいって何よっ!あ、ごめんなさい。カナタです。私もギルドには入ってません」
「私はジャスティ。今はクオンやカナタと同じくギルドには入っていない。前は現実の友人に誘われてイベント中はギルドに入ったんだが少しソリが合わなくてね」
何か嫌なことでも思い出したのかジャスティの顔が歪む。その表情からは少しどころではないのがありありと伝わってくる。
「ここへは何が目的で来たの?」
「クオンの盾を作るために抗魔鱗という素材が落ちてることがあるらしい廃坑の調査依頼を組合で受けたんです。ドラゴンの鱗らしいのですが何か知りませんか?」
抗魔鱗とは鋼龍の鱗の別名だとアイテムを高位鑑定した時に確認している。鋼骨──もちろん鋼龍のもの──も数は十分にあるので対価さえ貰えるなら譲ってもいいだろう。
「持ってるよ」
「マジで!?」
「対価さて貰えるならあげてもいいんだけど、僕には鱗の相場なんて分からないから珍しい素材とかないかな?もしよかったら交換しようよ」
「交換かぁ…….俺、ワイバーンの翼膜くらいしかないぞ?」
ワイバーンの翼膜か。それがあればククルよ揺り籠を作る時に鋼龍や鋼王龍の素材では無理だった時にワイバーンを狩りに行く必要がなくなる。
「それでいいよ。作る盾の大きさによるだろうけど10枚くらいあれば足りるかな?」
「え、いいのか!?」
「マヨイさん、それは貰いすぎですよ!」
「ちょうどワイバーンの素材が要り用になりそうでね。わざわざワイバーンを狩りに行く必要がなくなるならこれくらい安いものさ」
「「ありがとう/ありがとうございます)」」
こうして僕とクオンはそれぞれ欲しいものを手に入れたわけだけど、おそらくジャスティはカナタと違ってクオンの手伝いというわけじゃないよね。
「どういたしまして。それでジャスティも鱗が欲しいの?」
「現時点で最強のプレイヤーだと言われてる貴方が欲しがるような素材に心当たりがなくてね。私もワイバーンの素材は持ってるけどクオンと交換したなら要らないだろ?」
「いや、骨とかあるなら欲しいな」
揺り籠の素材にどれくらい必要になるか分からないし、たった1度で上手く作れるとも限らない。保険として少し多めに持っておくのも悪くはないはずだ。
「鎧のために数が必要なんだが、これで何枚くらい交換して貰えるだろうか」
「まるまる1匹分か……」
「ジャスティすげぇな!」
頭から尻尾の先まで丸々1匹分の素材か。鎧にどれくらい必要なのか分からないけど、翼膜に10枚出したのだから少なくとも倍は出すべきだよね。
「100枚でいいかな?」
「そんなに貰っていいのか?」
「クオンには翼膜だけで10枚出したからね」
「そうか。ならお言葉に甘えさせて貰おう」
こうして僕はジャスティとも素材を交換した。ワイバーンの素材はクレアなら素材として優秀だと聞いているし揺り籠に使わなくても無駄にはならないはずだ。
「あとは廃坑を探している調査依頼を終わらせるだけだな!」
「…………ごめん」
「なんでマヨイさんが謝るんだ?」
「そうだぞ。依頼を受けたのは私たちであってマヨイではないんだ。何も気に病む必要はない」
ジャスティは僕が彼らの受けた依頼に同行出来ないことへの負い目から謝っているのだと勘違いしたようだ。これは後でトラブルになる前に素直に教えておいた方がいいだろう。
「…………廃坑ぶっ潰しちゃった」
「「……………………え?」」
カナタだけは何となく察していたのか「やっぱり」と小さく呟いた。察しの良い子は好きだよ。
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お読みいただきありがとうございます。
また更新が遅くなって申し訳ありません。
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自筆です。
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