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気づかない
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しおりを挟む「覚えてる?まーくんが、初めてこの家に来たときに座ってた縁側」
「……」
最初に来た場所。
懐かしい場所。
何故か閉じ込められるようになってからは、一度も来なかった場所。
……覚えている。
忘れるわけがない。
あの頃は、蒼の家に行ってみたいと駄々をこねる俺に、ずっと嫌だと拒否し続けてた蒼の許しをようやく得ることが出来て、本当に嬉しかった。
初めて蒼の家に来れたって、自分でも驚くくらい浮かれてたっけ。
草履をはくかと聞かれて首を振りながら、それが知ってる場所だということを聞いて軽く安堵の息をつき、ためらうことなく足をそこにおろした。
「…はは…っ」
笑いをこらえきれないという様な、そんな吹き出すような声が聞こえて、驚いて思わずその方向を見る。
「……っ、子どもみたいにわーわーはしゃいでたもんな」
そのことを思い出したのか、笑いを含んだ震える声に、少しむっとして、何か言おうとして。
ぽつりぽつりと言葉を呟く優しい声に思わず口をつぐむ。
「俺は、そんな風に思ったことなかったけど、広くて綺麗だって、…すごい、理想のお屋敷だなんて言って、喜んでて、」
「……」
「…まーくんにそう思ってもらえるなら、この家に生まれてよかったなって思ったよ」
最近の蒼には珍しいくらいやわらかい声に、どんどん気が緩んでいくのを感じる。
感情のこもった、あたたかい声。
違和感を覚える前に、その穏やかな声を聞くとあの頃のように安心して、頬が緩む。
「…(…)」
今思い出すと恥ずかしいくらい、浮かれていたのを思い出した。
蒼もすごく困ったような表情をしてたな。
「…(でも、)」
楽しくて、ずっと蒼とこうして一緒にいれたらいいなって思った。
(…もちろん、こんなことになるとは夢にも思わなかったけど)
今でも、蒼のことは嫌いだと思えないけど、あの頃の気持ちとはもう違う。
そう思うと悲しくて、暗い気持ちになる。
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