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テスト
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しおりを挟むその笑顔を見る時は、大体あんまりおれにとってよろしくないことを考えている時で。
「な、何…?」
反射的に少し身体を後ろに後退させる。
笑顔が引きつった。
「食べさせて」
と、そんなことを言いながら「あーん」と口を開いてくるので「な、ななななな、」と怯んで、またそれかとツッコミたくなる。
凄く恥ずかしいのに、蒼は恥ずかしくないのかな。
教室で食べているから周りの熱い視線が怖い。
「早く」と口を開いてくる蒼に、「してくれないと答えない」なんて訳がわからないことを言うから、こどもか、と心の中で突っ込む。
「…っ、ちょ、やばいんですけど…、あの超絶イケメン顔であーんしてる顔えっちすぎるんですけど…!!」
「…わかる…すごいわかるその気持ち…」
こそこそと他のクラスメイトが興奮してる声が聞こえてきて、「…っ、」ぐ、深く考えたくないことまで強制的に思考させられる。
確かに普段だったら、絶対に見られない無防備な姿。
…普段澄ましている、冷酷に感じるほど冷たく美しい顔が、「あーん」待ちしている。
薄く整った唇を開き、その隙間から見える赤い舌。
「……っ、」
勝手に耳が、全身が熱を上げる。
ええい、さっさと終わらせてしまおうと、無言のままその口にグラタンをつっこんだ。
「ひゅーひゅー」と茶化してくる周囲に、頬が熱すぎる。ああ、もう、慣れない。
「まーくんは絶対に良いお嫁さんになる」とよくわからないことを言って微笑む蒼に「嬉しくない」と即答した。
なんでお嫁さんなんだ。婿じゃないのか。
拗ねて顔を背けつつ、ちらりと横目で見る。
…相変わらず蒼は持ってきているお弁当を食べないから、いつか倒れるんじゃないかと心配で、こうして何回か分けたりはしてるんだけど。
蒼はどうせ自分の弁当は食べないだろうと、最近は蒼の分も含めて多めに作って持ってきている。
最初は遠慮してたけど、今は食べるようになってくれた。
…だが、しかし。
前は同じくらいの背だったのに、何故か蒼の身長が伸びてきていることにちょっとだけ嫉妬する。
今までそんなに食べてなかったと思うのに。どう考えてもおれのほうが食べてきたはずなのに。この違いはなんだ。
……おれも身長高くなるかな。
別に低いわけではないんだけど、どうせならもっと伸びたい。
でも、…随分最初に比べて仲良くなった…と思う。
転入初日の蒼は、完璧に作られた人形みたいだった。
体温があるのかと思うほど陶器のように綺麗な肌と、端整な顔立ちに感情がないような冷たい目は人間なのかと疑ってしまうぐらいで。
まだその雰囲気は抜けてないけど、身長が少し伸びて以前よりも表情が優しくなった蒼に、一層女子は夢中になっていた。
思考を巡らしたところで、蒼は何事もなかったようにまたおれの分けた弁当の中身を食べ始めたので、じーっと答えを要求するように見つめる。
…と、それに気づいたらしく見つめ返され…不意に、何故か照れたように僅かに視線が逸らされる。
「まーくん、あーんしてほしいの?」
「違う」
思わず大きな声が出てしまう。
まさか、わかっててわざとはぐらかしてるんじゃないだろうなと疑ったけど、…もしかしたらそんなに言いたくないことなのかと思い直して、なんか無理に聞こうとしている感じがして反省した。
やっぱり言わなくていいと言おうと口を開く、
と、
「いい高校なんて行こうと思ってないけど。100点じゃなかったから焦ってただけ」
「100点?」
「…うん。満点取らないと、大変なことになっちゃうから」
冗談じみた口調でそう言って笑う彼に、「親が厳しいの?」と問うてみれば「まぁ、そんな感じ」と頷くので確かにあんな大きな屋敷なら躾も厳しそうだなと思って「そっか」と頷いた。
「蒼ってさー、いつが初体験だった?」
「ぶっ」
おれと蒼の会話を「へー」と頷きながら聞いていた依人からの唐突な質問。
食事中にいきなりなんてことを聞くんだと、驚いて口から勢いよくお茶が飛び出た。
結構ずばずば聞くんだから本当依人にはいつも驚かされる。
「ごほっ、ごほっ、依人のばか!!」
気管支に入りそうになって咳き込んでいると、蒼がティッシュを渡してくれたのでごしごしと机と口を拭く。
ああもう、汚れた。
急いで拭いている間に、依人がぶーっと不満げに口を尖らせる。
こっちがその顔をしたいくらいだ。
「えーだって気になるじゃんかー。あの王様ゲームの巧みなキスとかさー」
「う…」
確かに。蒼のキスはすごかった。
まるでドラマみたいで、なんかとりあえずすごかったのを覚えている。
…それと同時に無理やり記憶から消去したはずの自分と蒼の…その、き、キスを思い出して頬が熱くなってくる。
蒼がそんなおれの反応を見て、ふ、と微笑む。
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