手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
322 / 842
不良と

20

しおりを挟む



彼は、熱の籠った声で、呟く。


「今日は、まーくんに大事な用があって会いに来たんだけど、…聞いてくれる?」

「なに?何かあった?俺に出来ること?」

「…うん。まーくんにしか、できないこと」


何か出来ることがあれば遠慮なく言って。と頷きながらも、そのぼたぼたと地面に垂れる液体に、ああもうどうしよう、なんとかしないと、と焦る。

ハンカチでおさえても、これ以上ないってほど血が止まらない。

一度なにかを言い出したら、蒼は俺の言うことなんて聞かなくなるから、とりあえず早口でその用事を聞こうと決めた。


……けど


「――あの日、『真冬』とした約束をやっと守れるよ」

「やくそく…?」


何故か酷く幸せそうで、愛しそうな表情で切ない笑みを零す蒼に、わけもわからずに胸が苦しくなる。

……真冬、なんて蒼に呼ばれたことないのに。

疑問に思っていると、蒼が何かをポケットから取り出して包みのようなビニール袋を捨てた。


「…?なに、そ」

「…っ、…長かった。この日をずっと待ってた」


背中に回された腕で、抱き締められる。
震える声で、泣きそうに言葉を零す彼に、戸惑うばかりで何も返せない。


「蒼、…?どうしたの?一体何の話を、」

「……ごめん」

「っ、…ふ、?!」


謝罪の言葉とともに身体が離され、黒い布で鼻と口を覆われる。

肌に触れる布のような感触と、一気に入ってくる甘い香りに息がつまりそうになった。

吸った途端に、頭痛と途方もない眠気が襲ってくる。
蒼の血の気の引いた顔に浮かぶ、泣きそうに微かに眉を寄せた綺麗な微笑みだけが、目に映る。


「…どう、して…っ」


酷く、身体が怠い。

気を抜けば、すぐに瞼が閉じてしまいそうだ。
身体を支えられなくなって、ふらりと倒れかけた瞬間抱きとめられる。
ぎゅっと背に回った腕に、強く抱きしめられた。

吐息まじりの、熱の籠った声。


「――…もう離さない。触らせない。誰の目にも映させない。あの日の真冬の望み通り、俺が世界から切り離して、大切に守ってあげる」

「………ぁお…、い………?」


目が合えば、彼は今にも倒れそうな顔で、酷く嬉しそうな表情で熱に浮かされたように薄く整った唇で微笑んだ。


「やっと、手に入れた。俺だけの、可愛い可愛いオヒメサマ。これで、ずっと一緒にいられる」


『真冬』


もう一度、その名前を呼ぶ声は
今まで聞いたことがないほど愛おしそうで。


――――――――


”…あの時守れなかった約束を、今度こそ守ってみせるから。”

そう小さく耳元で囁かれた言葉は、すぐ近くにいる俺ではなく、きっと別の誰かに向けられていた。

しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...