木漏れ日の中で

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夢を見た。まだ幼い頃の夢だ。
貴族の子は大体6歳になると魔力測定をし家庭教師をつけ魔法の使い方を覚える。
例に漏れず侯爵家に生まれた僕も大好きな両親に見守られながら魔力測定を行った。
教会から持ってきた水晶に手をかざす。

「・・・」

本来ならここで魔力の量に応じて光が出るらしい。
僕は何度かざしても無反応だ。たまに少しぼやっと白く光るくらいで。

「魔力がないですね」
無慈悲な宣告に僕は家族の方を振り返る。
父と母はそれまでのにこやかな表情が嘘のように無表情で僕を見下ろし、兄の目には軽蔑の色が。

「も、もう一回・・・」
そういいながら手をかざそうとするが、するりと水晶をとられてしまう。

「何度やっても結果は変わりませんよ」
やはり、こちらも測定前とは違う侮蔑的な目をしていた。

それから部屋を出るなと命じられる。
幼いながらに自分の身に何が起きているのかを理解し恐怖する。
ご飯も食べさせてもらえず泣きながら眠っていた僕は頬の痛みで起きる。
状況が掴めず困惑していると冷ややかな声がする。
「主様の命令により、部屋を移ってもらいます。何も持たずについてきてください。」

何も持たずに?5歳の誕生日に父からもらったぬいぐるみも?兄からもらったお手紙も?母がくれたハンカチも?

有無を言わせないメイドの高圧的な態度。初めて見る態度に怯えトボトボとついていく。
中庭を抜け、メイドたちの部屋がある階も通り過ぎ、裏庭に出る。裏庭は少し苦手だ。後ろが森になっており、日も当たらない。夜だからか余計に怖く感じる。

つい足が遅くなるがメイドに置いていかれるとそれこそ一人ぼっちで彷徨うことになるので慌ててついていく。そしてついた先は・・・

「・・・最悪。」
軋むベッドの上で薄い布団を握りしめ状態を起こす。
なぜあの時の夢を見たのか。僕の全てが狂ったあの日の夢。

ため息をつきながら立ち上がり窓を開ける。空気の入れ替えのつもりだが、果たして意味はあるのか。日中ずっと隙間風がピーピーうるさいし夜は寒いし。開けなくても空気は入れ替わっていそうだ。

狭い部屋で特にすることもできることもないので窓の外をぼーっと眺める。ふと、ガシャンと陶器が雑に置かれる音がする。
ご飯の時間だ。
貴族の子が食べるとは誰も思わない硬いパンと冷めたスープ。薄汚れた陶器の食器に乗って渡される。
食べたくない。が、食べないとまた体調を崩ししんどい思いをするのだ。

今日で2回目のため息をついて食事を済ませ、扉の隙間から返却する。
いつもより食べるのに時間がかかったからだろうか。舌打ちが聞こえ、扉を思い切り蹴られてしまった。
少しだけびっくりして尻もちをついてしまったが仕方ない。

6歳の誕生日から時は経ち、僕は15歳になっていた。
初めてここへ連れてこられたとき、あまりにもボロボロな外見に本当に人が住めるのかと目を疑った。
部屋だと言われた場所を覗けば使い古した机と椅子に、穴の開いたクローゼット。薄いシーツがかぶせられた硬いベッド。
ここに住むのです。と頭の上から降ってくる言葉を理解する前から「嫌だ。いい子にするからお部屋に帰りたい。ごめんなさい」と泣きじゃくった。
しかし、「あなたのお部屋はここです。お部屋に帰りたいのですよね。早く入ってください」と言われる。
メイドのスカートに縋り「嫌だ。父様と母様に会いたい。お兄様と寝たい」と言うも鼻で笑われ部屋に投げ入られて扉を閉じられた。

しばらくは誰かが迎えに来てくれると扉の前でじっと座り込んで過ごし、誰も来ないとわかると外側からしかあかない扉をなんとか開けようと椅子をぶつけてみたり、ノックしてみたり、爪で引っ掻いてみたりと必死だった。それでも誰も来ないと分かると熱を出してしまった。ご飯は扉の前に放置。1人で熱を乗り越えご飯の存在に気づいた時には虫がたかり食べることはできなかった。

「嫌な事思い出しちゃった。」
空を眺めながら呟く。今日はもうダメだな。ずっと思い出してしまう日だ。僕は諦めて窓辺に寄りかかりながら膝を抱えて目をつむった。
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