木漏れ日の中で

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その日も僕は相変わらず破られた教科書を抱きしめ、机に増えた落書きにため息をついていた。
僕より少し離れたところではヒソヒソとでも、僕に聞こえるように悪口が言われている。
「てか、侯爵家生まれでも魔力ないって、この学校に通う意味ある?」
「確か、わがまま放題で家族を困らせているんだとか?」
「最近ではあの公爵家のセドリック様にちょっかいかけているようだね」
「正直、セドリック様が自分からあんな奴に関わってると少しイメージ変わるよね。」
「わかる。少しだけ冷めちゃうもん。でも、そんなわけないよね。だって、あいつと関わっても得ないじゃん!」
いつも言われている悪口だと聞き流していると、セドリック様の名前が出てきてドキリとする。
僕のせいでセドリック様の評価が下がる?
それは・・・ヤダ。

モヤモヤとした不安な気持ちが広がり何となくセドリック様に会いたくなる。いるはずがないと思いながら校舎裏に足早に向かう。
校舎裏に教室から向かうには人気のない物置となっているフロアを通る必要がある。そこで聞き慣れた声がした。ーセドリック様だ。
きっと荷物の運搬を頼まれたのだろう。友人と一緒に並んで歩いている姿が見えた。
僕は何となく物陰に隠れ息を殺す。
「で、セドリックはあの子、どう思ってんの?」
「あの子?」
「ほら、侯爵家の。」
「あー、アベル?」
僕の名前が出てドキリとする。音を立てないように意識しながら会話を聞くがあまり聞こえない。
「ずいぶんあの子に熱心じゃん。まさか?」
「あれは違うよ。やめろって。」
「はは。そうだよな。あんな子無理だよな。」
「そ。冗談でもやめろ。これを聞かれでもしたら・・・」
その言葉にズキンと胸が痛む。このばから去りたくて後ずさるとカタンと傍にあったものを踏んでしまい音が鳴る。
やばいと焦るも今自分のいる場所は背中が壁になっており、壁から出ている柱の影に座って隠れている状態。もし、人がのぞき込めば簡単にバレてしまうのだ。
口を押さえ俯きなんとか乗り切れないかと緊張する。
2人の会話は途絶え、足音が近づいている気がする。でも、近づく足音と同じくらい心臓の音も凄くて。もしバレたらどうなるのか。

俯く僕に影ができる。視界に入るのは綺麗に磨かれた靴。
「アベル。」
耳に入ってくるのは少し遠慮がちな優しい声。
それでも僕は俯いていた。
「アベル、さっきの話聞いてた?」
俯いているけれど、セドリック様がしゃがみ目線を合わせようとしてくれているのがわかる。
そして僕に手を伸ばし髪を撫でる。
それでも僕はあの会話が忘れられない。

パシッと伸ばされた手をはねのけて立ち上がる。
視線を前に向けて気づいたがあの友人もいるようだ。
少し驚いたけど、目にたまる涙を拭いてセドリック様に向かって言った。
「さ、さっきの話、聞いてました。僕、ごめんなさい。何も気づかなくて。・・・僕といることであなたの評判が落ちるのも嫌です。でも、同じくらいあなたから嫌われるのも嫌です。明日からもうあそこには行きません。話しかけないです。・・・セドリック様・・・公爵様も僕よりも友人と過ごしてください。」
僕が公爵様と言い直すとセドリック様は少しショックを受けた顔をしていた。それに罪悪感を覚えつつ最後の言葉を言った。
「あの、楽しかったです。さようなら。」
なにかいいかけるセドリック様の横をすり抜けて教室には戻らず寮へと走る。

心臓はまだドキドキしていてズキズキする。目からは涙が溢れそうで、それを何度も拭いながらやっと部屋にたどり着く。
相変わらずホコリ臭い部屋に安堵し制服のままベッドに突っ伏し気が済むまで涙を流した。
ここでなら誰も見ていないし気づかない。

その日僕は泣きつかれたのかいつの間にか眠ってしまっていた。
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