木漏れ日の中で

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㉓ セドリックside

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「・・・ふぅ」
一通り読み終えた。
アベルはこんなに辛い生活をしていたのか。
魔法が使えないことは既に周知の事実。
貴族で使えない人は確かにアベルの他に聞いたことがないが一歩外に出れば使えない民はたくさんいる。
魔法が使えないことが隔離していい理由にならないし暴力を振るっていい理由にならない。
それに、まさか学園内でもこんな目に遭ってるなんて。せいぜいアベルに関する噂話だけだと思っていた。が、実際は物理的な暴力と精神的な負担とイジメ。魔法が使えないアベルに魔法を使ったり、過度に晒し上げるなんて。
皆の手本になり基本となる貴族がこんな事をしていいのか。
それを指導する学園側もその行為を煽るような行動をしている。

・・・これは早急にどうにかしなければ。
1人でそんな事を考えているのアベルがゴソゴソと動いた。
「アベル?どうしたの?」
「・・・ん、セドリックさま?」
半分夢の世界にいるようで舌っ足らずで可愛らしい。
「うん。そうだよ」
「ほんもの?」
「うん。」
「やったぁ。ぼく、ずっとセドリックさまに会いたかったの。」
「本当?」
「うん。でもね、ぼくが無視しちゃったから怒ってる?」
アベルは少し涙目になりながら聞いてくる。
「怒ってないよ。嫌われてなくてよかった。」
俺がそう言って撫でるとアベルは目を細めた。
「んふふ。変なの!ぼく、セドリックさまのこと嫌いにならないよ」
普段の気張っているアベルとはずいぶん違う素直で驚く。そんなに熱が高いのか。思わずおでこを触るがここへきたときよりも下がっている。
「?」
きょとんとしているアベルを見て本来はこういう無邪気で可愛らしい顔をする子なのだと知る。 「もう少しだけ待っててね。お医者さん来てくれるよ。」
「お医者さん?」
「そう。」
「でも、ぼくお金払えないし、寝てたら良くなってきたから大丈夫だよ。」
「大丈夫。俺が勝手に呼んだから。ね?」
「うん。」
少しだけムスッとしたような不安そうな顔をして返事をするアベルはいつもよりも幼く見える。
「痛いことする?」
ふと不安そうに尋ねてくる。
「痛いことはしないよ。」
そう答えると安心したような顔をする。
「そうだ。アベル少しだけご飯食べよ。」
「ご飯?」
「そう。持ってきたの」
アベルが食べられるように消化に優しいお粥を差し出す。
「うわぁ~ぼくが食べていいの?」
「いいよ。ほら、あーん。」
おずおずと口を開ける仕草はとても可愛らしい。
一口食べると美味しかったのか頂戴と服を引っ張って催促してくる。
全てを食べ終えた時にはもうアベルは満腹になったようでカーディガンを脱いでいた。
「暑くなってきた。」
脱いだカーディガンは丁寧に畳んで枕元に置く。その動きを見ている時には気付いた。
「アベル?」
「ん?」
「その腕、どうしたの。」
「腕?えっ、あの、これは」
俺の指摘に気付いたアベルは慌てて右手首を掴み隠す。
「も、もう治ったよ。」
そう言ってはぐらかすアベルに日記の内容を思い出して胸を痛める。聞かなくても分かりきっているだろうと。
「腕、貸してごらん。」
そう言うとこちらを伺うように腕を差し出す。
火傷の跡だ。うすピンクの皮膚になっておりその部分は少し引き攣っている。
触ると痛いのかいい顔はしない。
「痛かったよね。」
そう言って魔力を込めて優しく撫でる。わずかに光が溢れ暖かく感じる。
これは治癒魔法だ。治癒魔法を使える貴族は少なく、俺を含めても数十人しかいない。
ただし俺は公言していないが。
「みんなには内緒ね。」
そう言って驚くアベルの手を離す。
アベルはまじまじと腕を見て触る。
「治った?」
それから俺を見てとびきりの笑顔でありがとうと言ってくる。
初めて見る顔にドキリとしてしまう。
アベルはセドリック様は凄いね。と言いながら治癒魔法を使った方の手をニギニギしている。

早く医者来てくれと真剣に思った。
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