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恐怖 【ライリー】
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「お前たちの命はこの国のものだ!国の為に命を捧げ、国の為に死ぬ!近衛騎士として志願した以上その覚悟を持って職務を全うせよ!」
幼い頃から親に、騎士見習いの時から上官にそう言われて育ってきた。
ハリス家は代々近衛騎士としてこの国に仕えている。
だから俺も国の為に命を捧げるなど当然のことと思っていた。
自分の命は軽い。
価値などなく、国の道具なのだと。
初めての任務は王子の婚約者の護衛だった。
それも兄貴と一緒の任務。
強くて、凛々しい兄貴は俺の憧れだった。
王子の婚約者ローズ・ランズベリーに初めて会った時、特に何も思うことはなかった。
彼女はいずれ王族の一員となる。
ならば彼女の道具になることは当然のことだ。
彼女がどんな人であるかは関係ないし、興味ない。
そう思っていた。
あの事件までは……。
ある日、ローズ様たちが参加したお茶会の帰りに何者かの奇襲を受けた。
きっと王子の婚約者であるローズ様を狙ってのこと。
ランズベリー家の繁栄を妬む者の仕業か、あるいはローズ様を抹殺した後の婚約者候補が狙いか。
どちらにせよローズ様をお守りせねば。
だが、思いのほか敵は手強かった。
特に兄貴が相手をしているのはプロの殺し屋のようだった。
兄貴に加勢しないと。
だが、こちらもなかなか手強く、しかも複数を相手にしていたため兄貴のもとなど到底行けそうになかった。
殺される。
兄貴が。
国の為に死ねるなら兄貴も本望か。
本望……本望って、なんだ。
嫌だ。
洪水のように別の感情が押し寄せてきた。
死ぬな。
死ぬな!!!
そう思った時、視界の端を何かが駆け抜けていった。
……は?
ローズ様?
「やめて!!」
そう叫んでローズ様は敵の懐に突進した。
刺客の男はバランスを崩したものの、すぐに態勢を立て直しローズ様へ剣を振り上げた。
でも、遅い。
一瞬の隙さえできれば、兄貴は負けない。
敵が剣を振り下ろすより早く、兄貴が相手を斬りつけた。
辺りに血が飛び散る。
勝った。
兄貴が、勝った。
ドサッ。
鈍い音が聞こえ、そちらを見ると恐怖からか安心からかローズ様が気を失って倒れていた。
なんで飛び出して来たんだ。
俺たちが戦っている間は馬車の中にいれば安全なのに。
助けた?
公爵家のお嬢様が、俺たちを?
そんなこと、ありえない。
だって、俺たちはこの国の……。
「どうして泣いている?」
「え?」
兄貴に言われ、頬に手をやる。
知らぬ間に涙が頬を伝っていた。
「あれ、なんで……」
「怖かったか?」
怖かった?
確かに怖かった。
そうだ、兄貴が死んでしまうと思って怖かった。
そう思ったら次から次へと涙があふれ、止まらなくなった。
「あ、あ……よかった、兄貴死ななくて……」
兄貴が驚いた顔をする。
そりゃそうだ。
自分だってこんな感情知らない。
近衛騎士の命は軽い。価値がない。
そう思ってきたはずなのに。
兄貴が死んでいたらと思うとこんなにも苦しい……。
兄貴がははっと笑った。
そして倒れたローズ様を抱える。
「ライリー。俺たちはこのお嬢様のせいで死にづらくなるかもしれないな」
そんなの近衛騎士として失格じゃないか。
のちに彼女は言った。
「守りたかった」と。
公爵家のお嬢様が、近衛騎士を。
笑える。
国の道具である俺を。
「様も敬語もいらないわ。あなたらしくない」
俺らしさ?
道具であるはずの俺に人間らしさを求めるなんて。
「道具でないとするなら……」
俺はあんたの何になれる?
どうすれば傍にいられる?
あんただけなんだ。
俺を、俺たちを人間にしてくれるのは。
幼い頃から親に、騎士見習いの時から上官にそう言われて育ってきた。
ハリス家は代々近衛騎士としてこの国に仕えている。
だから俺も国の為に命を捧げるなど当然のことと思っていた。
自分の命は軽い。
価値などなく、国の道具なのだと。
初めての任務は王子の婚約者の護衛だった。
それも兄貴と一緒の任務。
強くて、凛々しい兄貴は俺の憧れだった。
王子の婚約者ローズ・ランズベリーに初めて会った時、特に何も思うことはなかった。
彼女はいずれ王族の一員となる。
ならば彼女の道具になることは当然のことだ。
彼女がどんな人であるかは関係ないし、興味ない。
そう思っていた。
あの事件までは……。
ある日、ローズ様たちが参加したお茶会の帰りに何者かの奇襲を受けた。
きっと王子の婚約者であるローズ様を狙ってのこと。
ランズベリー家の繁栄を妬む者の仕業か、あるいはローズ様を抹殺した後の婚約者候補が狙いか。
どちらにせよローズ様をお守りせねば。
だが、思いのほか敵は手強かった。
特に兄貴が相手をしているのはプロの殺し屋のようだった。
兄貴に加勢しないと。
だが、こちらもなかなか手強く、しかも複数を相手にしていたため兄貴のもとなど到底行けそうになかった。
殺される。
兄貴が。
国の為に死ねるなら兄貴も本望か。
本望……本望って、なんだ。
嫌だ。
洪水のように別の感情が押し寄せてきた。
死ぬな。
死ぬな!!!
そう思った時、視界の端を何かが駆け抜けていった。
……は?
ローズ様?
「やめて!!」
そう叫んでローズ様は敵の懐に突進した。
刺客の男はバランスを崩したものの、すぐに態勢を立て直しローズ様へ剣を振り上げた。
でも、遅い。
一瞬の隙さえできれば、兄貴は負けない。
敵が剣を振り下ろすより早く、兄貴が相手を斬りつけた。
辺りに血が飛び散る。
勝った。
兄貴が、勝った。
ドサッ。
鈍い音が聞こえ、そちらを見ると恐怖からか安心からかローズ様が気を失って倒れていた。
なんで飛び出して来たんだ。
俺たちが戦っている間は馬車の中にいれば安全なのに。
助けた?
公爵家のお嬢様が、俺たちを?
そんなこと、ありえない。
だって、俺たちはこの国の……。
「どうして泣いている?」
「え?」
兄貴に言われ、頬に手をやる。
知らぬ間に涙が頬を伝っていた。
「あれ、なんで……」
「怖かったか?」
怖かった?
確かに怖かった。
そうだ、兄貴が死んでしまうと思って怖かった。
そう思ったら次から次へと涙があふれ、止まらなくなった。
「あ、あ……よかった、兄貴死ななくて……」
兄貴が驚いた顔をする。
そりゃそうだ。
自分だってこんな感情知らない。
近衛騎士の命は軽い。価値がない。
そう思ってきたはずなのに。
兄貴が死んでいたらと思うとこんなにも苦しい……。
兄貴がははっと笑った。
そして倒れたローズ様を抱える。
「ライリー。俺たちはこのお嬢様のせいで死にづらくなるかもしれないな」
そんなの近衛騎士として失格じゃないか。
のちに彼女は言った。
「守りたかった」と。
公爵家のお嬢様が、近衛騎士を。
笑える。
国の道具である俺を。
「様も敬語もいらないわ。あなたらしくない」
俺らしさ?
道具であるはずの俺に人間らしさを求めるなんて。
「道具でないとするなら……」
俺はあんたの何になれる?
どうすれば傍にいられる?
あんただけなんだ。
俺を、俺たちを人間にしてくれるのは。
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