実の父に隣国へ死にに行けと言われた王女は、隣国の王に溺愛される。

曼珠沙華

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体が軋むような痛みで目が覚めた。

何がどうなっているのか理解できず、かろうじて床の上で寝ていたらしいことだけは分かった。

どうしてわたくしがこんなところで?

オリビアの腕をつねったことは覚えている。
それから、ロゼ様の声を聞いたような気がする。
でも姿は見えなくて……。
でもそれはきっと気のせいね。
わたくしがこんなとこに倒れていることにロゼ様が気付いたらそのまま放っておくはずがないもの。

そういえばオリビアは?

部屋中を見回しても、姿はない。

代わりに使用人たちが床に転がっているのに気付いた。

かぁっと頭に血が昇る。

「あんたたちっ!!」

ありったけの声で叫ぶ。
一人、また一人と使用人たちが目を覚ました。

自分の置かれた状況にみんな訳が分からないという顔だった。
それが余計に苛立たせる。

「オリビアはどこに行ったの!わたくしは監視を命じたはずよ!」

そこでやっとばかな使用人たちも自分たちがどれだけ罪深いことをしでかしたか分かったようで、皆一様に顔が青ざめていった。

「も、申し訳ございません!姫様!」

「お許しくださいませ!」

次々と謝罪の言葉が飛んでくる。

「今すぐ王宮の者にオリビア様の行方を聞いて参ります!」

「逃亡したとしてもまだ遠くへは行かれていないはず!すぐに街へ捜しに出ます!」

どうしてこうも無能なのばかり集まっているのかしら。
本当に役に立たない。

帰ったらお父様に頼んで家族もろとも八つ裂きにしてやるわ。

それにしてもオリビアったらどこに消えたのかしら。

本当に逃げた?
お父様からの命令を無視して?

なんて身の程知らずなの。
今まで生かしてもらっておきながらその恩を忘れるなんて。

お母様がどんな気持ちで育ててきたと思っているの。

妾の娘のくせに。
醜いくせに。

どんなに願ったってあの女が手に入れられるものなんて何もないわ。

その命も、ロゼ様のことも、ね。

さてと。
何故街にまで出たのか分からない役に立たずの使用人たちを待っていても無駄だわ。

オリビアの居場所なんてわたくしが調べればすぐに分かることよ。

王宮の全てを把握しているのはわたくしに想いを寄せているロゼ様なんだもの。

テーブルの上に置かれた小さなベルを鳴らす。
これを鳴らせばすぐにあのラビンスとかいう侍女が来るはず。

そう思っていたのにどれだけ待ってもラビンスはおろか、サファイア国の誰も姿を見せなかった。

傍にいるわたくし専属の侍女はおろおろし始める。

あぁ、本当に苛々させることばかりだわ。
ラビンスの態度といい、この国の使用人たちはわたくしがどういう存在か分かっていないのかしら。

わたくしは、この国の王が愛してやまないエメラルド国の姫アリスよ。

見てなさい。
わたくしがこの国の王妃になったあかつきにはわたくしをないがしろにした全ての使用人たちを処刑してやる。

「ねぇ」

「は、はいっ!」

侍女が声を震わせながら返事をする。

「何をぼーっとしているの?さっさとロゼ様を呼んできなさい」

「こ、国王様を、ですか?」

「そうよ」

「お言葉ですが……アリス様が赴かれた方がよろしいかと……」

「はぁ?」

「なんでもありません!すぐに呼んでまいります!」

わたくしに口答えするなんて身の程知らずめ。
ロゼ様はわたくしのことが大好きでたまらないのよ。
わたくしが呼んだとなればすぐに子犬のように走ってやってくるわ。

そういえば、そろそろティータイムの時間ね。
待っている間に他の侍女に紅茶でも準備させて……。

「大変申し訳ございません!アリス様!」

「……ずいぶん早いじゃない」

出て行った侍女が大した時間もかけずに戻ってきた。

顔を蒼白にし、がたがたと体を震わせているところを見ると、わたくしに良い報告を持ってきたわけじゃないんでしょう。

「アリス様、本当に……本当に、申し訳ございません……国王様の側近の方に、国王様に会いにきて頂くようにお伝えしたのですが、断られてしまいまして……国王様は忙しいので、用があるならこちらが会いに来るようにと……」

……はぁ?
なんて使えないの。
本当に殺してやる。

使用人が直接ロゼ様と話すなんて所詮無理な話なんでしょうけど、わたくしを苛々させた罰よ。

ロゼ様に直接わたくしが呼んでいることを伝えたら間違いなく会いに来るのに。

「仕方ないわ。わたくしから出向きましょ」


そのままロゼ様のお部屋でティータイムを過ごすのも悪くないわ。
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