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「そんな……まさか、アイシラ嬢が精霊憑きだったとは……」
精霊王サクヤが卒業パーティの会場に姿を現し、混乱を招く中、アイシラはその理由を全て話した。
国王陛下の口がぽかんと開く。
だがすぐに打算にまみれた顔でアイシラに詰め寄る。
「アイシラ嬢、水臭いではないか。精霊憑きであると黙っているなんて……それも精霊王とは……」
「報告しておけばリカ王子に捨てられることはなかったと?」
アイシラの言葉に陛下は言葉を詰まらせた。
当然だ。
国の繁栄のために精霊王の力も欲しい。
でも、息子の願いも叶えてあげたい。
アイシラの気持ちを無視した身勝手な願いに今陛下は悩まされているのだから。
息子の婚約者には公爵家の令嬢がふさわしいと陛下が勝手に決めた婚約なのに。
「国王陛下、これ以上私の心を乱さないでください。今よりも事を大きくしたいとお考えですか?」
精霊憑きを傷つける者を精霊は許さない。
つまり、アイシラを傷つける者は精霊王を敵に回すということ。
「い、いやいや、まさかそんな……」
陛下の顔に焦りが見える。
「わしはただ、もっと早く精霊憑きだと知らせてくれれば国をあげて手厚く扱ったのにと……」
「それはつまりぃ、俺がいなければアイシラにそれほどの価値はないってこと?王子様の婚約者なのに?」
いきなり肩に腕を回され、隣を見ればサクヤがにぃっと笑みを浮かべていた。
そのどことなく恐怖を感じさせる笑みは幼い頃の記憶と変わらない。
陛下の顔が青ざめる。
「とんでもない!わしはただ……」
「ただ?」
「ただ、ただ……」
「言葉は慎重に選んだ方がいいよ。口は災いの元っていうからね。ただでさえ君は歴代の王の中でもそれほど賢くはなさそうだから」
陛下の口は何かを言わなければともがいていたが、結局その口から洩れたのは音のない吐息だけだった。
「おい!お前!いい加減にしたらどうだ!無礼にもほどがあるぞ!名を名乗れ!!」
いまだに絡みついた蔓から逃れようともがき続けているリカ王子が愚かにも声を上げた。
蔓をほどくのに夢中でアイシラの話をあまり聞いていなかったのか。
サクヤの顔が嫌悪の表情に変わる。
「えぇー……名を名乗れって、俺は君と契約するの嫌だなぁ」
精霊にとって名前とは特別なもの。
だからアイシラと精霊王は名前で契約し、魂で繋がっている。
幼い頃の話をしたアイシラもその重大さを理解し、サクヤの名だけは伏せていた。
それなのに……。
「はっ、名も名乗れぬ不届き者め!貴様など王族に歯向かった罪で牢獄へぶちこんでやるぞ!」
「や、やめるんだ!リカ!」
たまらず陛下がリカ王子を制止する。
「父上、何故そんな奴に臆するのです!我々はこの世の誰よりも崇高で、偉大な存在であると常々父上は言っていたではありませんか!」
確かにこの国の人間の中ではそうかもしれない。
だが、人ならざる者なら話は別だ。
「精霊など恐るるに足りませんよ!我々には王宮神官もいるのですから!」
どうして、たったそれだけのことにリカ王子は気付かないのか。
どういう教育をしてきたのか。
アイシラはふと今までのことを思い出した。
一体なんのために心を殺してきたのか。
一体なんのために王妃になるための責務を全うしてきたのか。
全てはこの思慮の浅い王子と身勝手な陛下のためだったのか。
考えてはだめ。
心を殺すことには慣れている。
それなのに、込み上げてくる想いが抑えられない。
「アイシラ」
精霊王サクヤが愛おしそうにアイシラの名前を呼んだ。
その瞳はまるで砂糖菓子のように甘く、甘く……。
「もう我慢しなくていいんだよ」
精霊王サクヤが卒業パーティの会場に姿を現し、混乱を招く中、アイシラはその理由を全て話した。
国王陛下の口がぽかんと開く。
だがすぐに打算にまみれた顔でアイシラに詰め寄る。
「アイシラ嬢、水臭いではないか。精霊憑きであると黙っているなんて……それも精霊王とは……」
「報告しておけばリカ王子に捨てられることはなかったと?」
アイシラの言葉に陛下は言葉を詰まらせた。
当然だ。
国の繁栄のために精霊王の力も欲しい。
でも、息子の願いも叶えてあげたい。
アイシラの気持ちを無視した身勝手な願いに今陛下は悩まされているのだから。
息子の婚約者には公爵家の令嬢がふさわしいと陛下が勝手に決めた婚約なのに。
「国王陛下、これ以上私の心を乱さないでください。今よりも事を大きくしたいとお考えですか?」
精霊憑きを傷つける者を精霊は許さない。
つまり、アイシラを傷つける者は精霊王を敵に回すということ。
「い、いやいや、まさかそんな……」
陛下の顔に焦りが見える。
「わしはただ、もっと早く精霊憑きだと知らせてくれれば国をあげて手厚く扱ったのにと……」
「それはつまりぃ、俺がいなければアイシラにそれほどの価値はないってこと?王子様の婚約者なのに?」
いきなり肩に腕を回され、隣を見ればサクヤがにぃっと笑みを浮かべていた。
そのどことなく恐怖を感じさせる笑みは幼い頃の記憶と変わらない。
陛下の顔が青ざめる。
「とんでもない!わしはただ……」
「ただ?」
「ただ、ただ……」
「言葉は慎重に選んだ方がいいよ。口は災いの元っていうからね。ただでさえ君は歴代の王の中でもそれほど賢くはなさそうだから」
陛下の口は何かを言わなければともがいていたが、結局その口から洩れたのは音のない吐息だけだった。
「おい!お前!いい加減にしたらどうだ!無礼にもほどがあるぞ!名を名乗れ!!」
いまだに絡みついた蔓から逃れようともがき続けているリカ王子が愚かにも声を上げた。
蔓をほどくのに夢中でアイシラの話をあまり聞いていなかったのか。
サクヤの顔が嫌悪の表情に変わる。
「えぇー……名を名乗れって、俺は君と契約するの嫌だなぁ」
精霊にとって名前とは特別なもの。
だからアイシラと精霊王は名前で契約し、魂で繋がっている。
幼い頃の話をしたアイシラもその重大さを理解し、サクヤの名だけは伏せていた。
それなのに……。
「はっ、名も名乗れぬ不届き者め!貴様など王族に歯向かった罪で牢獄へぶちこんでやるぞ!」
「や、やめるんだ!リカ!」
たまらず陛下がリカ王子を制止する。
「父上、何故そんな奴に臆するのです!我々はこの世の誰よりも崇高で、偉大な存在であると常々父上は言っていたではありませんか!」
確かにこの国の人間の中ではそうかもしれない。
だが、人ならざる者なら話は別だ。
「精霊など恐るるに足りませんよ!我々には王宮神官もいるのですから!」
どうして、たったそれだけのことにリカ王子は気付かないのか。
どういう教育をしてきたのか。
アイシラはふと今までのことを思い出した。
一体なんのために心を殺してきたのか。
一体なんのために王妃になるための責務を全うしてきたのか。
全てはこの思慮の浅い王子と身勝手な陛下のためだったのか。
考えてはだめ。
心を殺すことには慣れている。
それなのに、込み上げてくる想いが抑えられない。
「アイシラ」
精霊王サクヤが愛おしそうにアイシラの名前を呼んだ。
その瞳はまるで砂糖菓子のように甘く、甘く……。
「もう我慢しなくていいんだよ」
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