お願いです、私を悪役令嬢にしないでください。じゃないと……国が滅びますよ。

曼珠沙華

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「リカ……やめなさい。それ以上はやめるんだ」

国王陛下は必死になってリカ王子を止めた。
そして精霊王に詫びる。

「心から謝罪する。申し訳ない。息子の言葉をどうか許してほしい。アイシラ嬢はそなたの奥方だ。誰もそれに異論はない」

「父上!何故ですか!」

「この国の危機が精霊王にかかっているからだ!」

陛下が息子に声を荒げたのは、これが初めてだった。

リカ王子が思い通りにならない怒りで唇を震わせる。

「何を言っているのですか……そんなの、そんなの国民にどうにかさせたらいいじゃないですか!」

その言葉にクレイや他の従者たちがざわつく。
だが、リカ王子は止まらなかった。

「俺が贅沢な暮らしをするために国民は働いているって父上はいつも言ってたじゃないですか!それが国民の喜びだって!だったらもっと喜ぶよう、もっと働かせたらいいじゃないですか!」

「なんだよそれ……」と従者の一人が呟いた。

「俺たちが頑張っているのは王子のためじゃない。この国のためなのに……」

「国民の喜び?王子が贅沢な暮らしをすることが?ふざけるな!」

王子が相手だろうと、もう関係なかった。
従者たちが一斉に抗議の声をあげた。

陛下は焦った。
ただでさえ精霊王が相手で厄介なのに、ここで従者たちまで敵に回してしまったら……。

「なるほどなるほど」

精霊王が従者たちの反応を目にし、にんまりと笑った。

「いやぁ、嬉しいよ。国民の支持を得るのには苦労しなさそうだから」

「未来は明るいねぇ」と精霊王は声を弾ませる。

「正直、アイシラ以外の気持ちを動かすなんて全然やる気出ないしさ。よかったよかった。まぁ、人を魅了することが得意な精霊もいるから、苦労しないんだけどね」

「何をごちゃごちゃとわけの分からないことを!さっさとアイシラを……」

「うるさいよ」

精霊王が右手をかざす。
そしてリカ王子を指さした。

「っ!!」

冷たい風が吹き抜ける。
それを感じた瞬間、激しい痛みが顔を襲った。

ぼたぼたと血が滴る。

「そんなに喋っていたいなら、ずっとお口を開けておけるようにしようね」

陛下が息子の顔を見て悲鳴をあげた。

リカ王子の口が左右に裂けていたのだ。

「あああぁぁぁぁぁっ!!!!」

痛みと衝撃に、リカ王子が叫ぶ。

「あれ?使い物にならなくなっちゃった?ごめんね。でもアイシラを欲しがるお口はいらないから、いっか」

白々しい。
しかし誰も精霊王の言葉に異を唱えることができなかった。

「この国で新しく俺が王になり、アイシラが王妃になる。そして国民を救い、誰もが幸せに暮らしましたとさ。ハッピーエンド。めでたし、めでたし。このハッピーエンドに、君たちは不要なんだよ」

精霊王はさらに笑みを深くした。
その顔はとても幸せそうで、でもどこか歪みを感じさせた。




「最後に教えてあげるよ。人間の王、そして王子様。傲慢でいられるのは真の王だけだってね」
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