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三十二話
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謎の需要過多なのかと思ったら一つのクランが買い占めているとは。あの黒服が全員メンバーなのだとしたら家具も必要……なのだろうか?
というか黒服の人たちゴブリンヘッドシャークの構成員より増えていないだろうか。あの時ミヅキ先輩が全滅させていて、僕が担当した人数は少なかったとはいえ、と思いながら外へ出ると路地裏の脇にずらっと並ぶ黒服黒服、いや怖い。全員やや斜め上を見て休めのポーズなのだが何故か睨まれている気がする。
というか絶対メンバー増えてるって!この前潰したばっかりですよね!なんなら僕らが帰ってくるより早くキャラ作ったってことですかね。確かに【暴風】さんたちと戦っていた時間などがあるとはいえ、会議とかもすべてその間に済ませたのだろうか。
それにしても装備が、いやそもそも第二の街にまで……わからない。あの人も謎が多い人だな。
とりあえず目的の物は買えたのだ。クランハウスへ帰ろう。いつこの黒服たちが反転して殴り掛かってくるかわからないし。
◇
クランハウスへ帰ってきた。二階あたりで物音がするので先ほどと違い誰かしらが帰ってきているのかもしれない。僕も二階へ上がり、自分の部屋まで歩く。物音がしたのはどの部屋だろうか。今は静かになったようでわからない。
コマイヌと書かれた部屋を開けると、引っ越したてというか新築の家の匂いがする。元々あった部屋だったのか、それともゲームの機能などで増やした部屋なのかわからないけれど、新しくできた部屋だというのが匂いでわかる。VRMMOすげぇ。
窓から見える外の景色はこの前ハナミさんと戦闘した庭のようなところだ。それより先は木々に囲まれよく見えなかった。とりあえず窓を全開にし、空気を取り入れる。窓の外から植物のような爽やかな香りが部屋に広がった。
さて、ハウジングの時間だ。箱、テーブル、椅子に備え付けのタンスや台、これらをうまく組み合わせなければいけない。しかしながら僕はこういうセンスがないんだよなぁ。
とりあえず乱雑に展開してみた。買ってきた家具は奇抜過ぎず、部屋と合いそうな雰囲気のものを買ってきたので、まぁ無難だ。悪くはならない。
部屋の四隅を埋めるように配置するべきだろうか。すると真ん中が明らかに空いてしまって、部屋が寂しく感じてしまう。
しかし真ん中のスペースを埋めるようにすると謎の空白地帯が四隅のどこかにできる。とはいってもまだ部屋にそこまで置くものがないのでこれが無難か。
イメージしたのは結局、第二の街の王妃、アル様と会談した場所だった。つまり応接室だ。自室だけど。
テーブルと椅子を設置し、箱を設置。箱の中に色々とアイテムをぶち込んでいく。世界樹の葉やら枝やら、PKから奪ったアイテムやらを乱雑に入れていく。設定にプレイヤー以外の取り出し:という項目があったのでリーシュ君や他の人でも活用できるように、取り出し設定をクラン内なら自由にしておく。
アイテムを入れ終わった辺りでちょうど部屋の外から音がする。やっぱり誰かいたのか。
それより先にハウジングだ。あとはこのタンスを……とインベントリや間取りを見ながら考えていると全く力の入っていないノックの音が響いた。誰だろう。
ドアを開けるとそこには抱き枕らしきものを抱えた女性……ワンダードリームさん?
「これなんですけどー」
そういうとアイテムを取り出す。えっとそれは、【世界樹の葉】。先ほど入れたばかりなのに取り出すのが早いな。
「単刀直入に言いますけど、これもう一回取って来れます?」
何用かと思ったら世界樹の葉の採集?うーん、アル様と双子に言えばなんだかもらえそうな気もするけど、確かあの人たちからの依頼を達成すれば手に入れられるんだっけ?
「たぶん……?」
「取ってきてほしいんですよー」
まぁレア素材っぽいし使えるのだろうけれど……ワンダードリームさんが使うのだろうか。それたぶん蘇生アイテムとかではないが。
「差し支えなければ……何に使うんですか?」
「葉っぱ系のアイテムはポーションとかの素材に使うのがほとんどなんですけどー、これは説明文的に繊維が取れるみたいでしてー」
植物の繊維……普通にツタとかの繊維だろうか。何に使えるんだそれ。
「ファンタジー素材だからかー、服飾に使えるみたいなんですよー、だからー」
「ああ、布装備作るんですか」
「いやー、これで枕カバーとかパジャマ作ってみたいなーってー」
この人印象通り睡眠特化なんだな。
しかし採集か、できそうではあるし、これの装備も確かに気になるからな……受けてみるか。
「わかりまし……」
「ドリちゃん!なんでもう帰ってるのー!」
そういうと玄関の方からボタンさんの叫び声が聞こえる。そういえばレベリングをしていたはずでは。
「むー、レベリング乳でかが来ました。夢は眠っているのであとは任せたのです」
そういうと唐突に僕の部屋に布団を出現させたかと思うと……そこで寝た。えっ、本当にこの人ゲーム内で寝てるんですか。そして物の数秒で規則正しい寝息が聞こえてきたのと同時に、階段をボタンさんが昇ってくる音が聞こえる。えーっと、誤魔化したほうがいいのかな。
あたふたしていると扉をノックする音が聞こえる。ワンダードリームさんよりも力は強いが、控えめなノックの音だ。
「コマ君、ごめんね。ドリちゃん出してもらえる?」
バレてる。誤魔化す前にバレてる。
するとその音を聞いたのかワンダードリームさんが顔をあげ、唇に指をあて静かにの合図を出す。そのままジェスチャーで隠し通せと合図してきた。
いや、いるのバレてますけど。
「あー、ワンダードリームさんなら先ほどどこかへ出かけて」
「隠さなくて平気だよ。そもそもクランハウス管理者権限でクランハウス内のどこにいるかは表示されてるから」
ダメですって。バレるバレない以前の問題ですよワンダードリームさん。
ドアを開けるとワンダードリームさんが驚いたような顔をする。いやバレてるんですって。何で隠し通せると思ったんですか。
ボタンさんが足音を立てながらワンダードリームさんの元へ歩いていくと、布団を引っぺがした。ワンダードリームさんはその勢いのまま転がるように壁まで追いやられる。
「ドーリーちゃん!」
「ぐおー、夢の聖域がー。サンクチュアリがー」
「聖域の前に私たちを守って!ボス周回中にまさか一人だけ帰ってるとは思わなかったし!」
それは思わない。というかなんで気付かなかったんだ。
「酒魔人がいれば大丈夫かなってー」
「ハナちゃんの負担がすごいでしょうが!」
ハナミさんすげぇな。結果的にここにボタンさんがいてハナミさんがいないってことは何とかなってるんだ。雰囲気的に【暴風】さんと似たような空気あったしな。戦闘狂と酒狂いのとことかじゃなく。
「それで、なんでコマ君のところにいるの」
「レア素材持ってたからー」
「後輩の初心者からたからない!」
いや、僕はたぶん使わない素材なんで問題ないですよー、なんてことは庇ってくれている人に対して言えない。すまないワンダードリームさん。僕は基本的にボタンさんの味方でありたい。まともそうだから。
いや、とりあえず経緯だけは説明しておくか。
「ボタンさん、かくかくしかじか」
「かくかくしかじかって本当に言う人初めて見たよ」
小説的表現技法では何も伝わらなかったか、しょうがない説明しよう。
~かくかくしかじか中~
「というわけなんです」
「なるほど……いや擁護っぽく言ってるけどドリちゃんたかってるよね?コマ君もいやだったら言うんだよ」
「コマイヌ君はそんなこと言わないのでー」
言いますけど、と言いたいところだがややこしくなるので言わない。
ボタンさんは事情を聞いて何か悩むように考え始めた。そしてこちらとワンダードリームさんを見ると良いことを思いついたというような顔で手を叩いた。
「じゃあさ、折角だしみんなで取りにいこうよ、それ!」
僕はワンダードリームさんと顔を見合わせた。二人の考えていることはおそらく同じだったろう。
あ、そうなるん?と……
というか黒服の人たちゴブリンヘッドシャークの構成員より増えていないだろうか。あの時ミヅキ先輩が全滅させていて、僕が担当した人数は少なかったとはいえ、と思いながら外へ出ると路地裏の脇にずらっと並ぶ黒服黒服、いや怖い。全員やや斜め上を見て休めのポーズなのだが何故か睨まれている気がする。
というか絶対メンバー増えてるって!この前潰したばっかりですよね!なんなら僕らが帰ってくるより早くキャラ作ったってことですかね。確かに【暴風】さんたちと戦っていた時間などがあるとはいえ、会議とかもすべてその間に済ませたのだろうか。
それにしても装備が、いやそもそも第二の街にまで……わからない。あの人も謎が多い人だな。
とりあえず目的の物は買えたのだ。クランハウスへ帰ろう。いつこの黒服たちが反転して殴り掛かってくるかわからないし。
◇
クランハウスへ帰ってきた。二階あたりで物音がするので先ほどと違い誰かしらが帰ってきているのかもしれない。僕も二階へ上がり、自分の部屋まで歩く。物音がしたのはどの部屋だろうか。今は静かになったようでわからない。
コマイヌと書かれた部屋を開けると、引っ越したてというか新築の家の匂いがする。元々あった部屋だったのか、それともゲームの機能などで増やした部屋なのかわからないけれど、新しくできた部屋だというのが匂いでわかる。VRMMOすげぇ。
窓から見える外の景色はこの前ハナミさんと戦闘した庭のようなところだ。それより先は木々に囲まれよく見えなかった。とりあえず窓を全開にし、空気を取り入れる。窓の外から植物のような爽やかな香りが部屋に広がった。
さて、ハウジングの時間だ。箱、テーブル、椅子に備え付けのタンスや台、これらをうまく組み合わせなければいけない。しかしながら僕はこういうセンスがないんだよなぁ。
とりあえず乱雑に展開してみた。買ってきた家具は奇抜過ぎず、部屋と合いそうな雰囲気のものを買ってきたので、まぁ無難だ。悪くはならない。
部屋の四隅を埋めるように配置するべきだろうか。すると真ん中が明らかに空いてしまって、部屋が寂しく感じてしまう。
しかし真ん中のスペースを埋めるようにすると謎の空白地帯が四隅のどこかにできる。とはいってもまだ部屋にそこまで置くものがないのでこれが無難か。
イメージしたのは結局、第二の街の王妃、アル様と会談した場所だった。つまり応接室だ。自室だけど。
テーブルと椅子を設置し、箱を設置。箱の中に色々とアイテムをぶち込んでいく。世界樹の葉やら枝やら、PKから奪ったアイテムやらを乱雑に入れていく。設定にプレイヤー以外の取り出し:という項目があったのでリーシュ君や他の人でも活用できるように、取り出し設定をクラン内なら自由にしておく。
アイテムを入れ終わった辺りでちょうど部屋の外から音がする。やっぱり誰かいたのか。
それより先にハウジングだ。あとはこのタンスを……とインベントリや間取りを見ながら考えていると全く力の入っていないノックの音が響いた。誰だろう。
ドアを開けるとそこには抱き枕らしきものを抱えた女性……ワンダードリームさん?
「これなんですけどー」
そういうとアイテムを取り出す。えっとそれは、【世界樹の葉】。先ほど入れたばかりなのに取り出すのが早いな。
「単刀直入に言いますけど、これもう一回取って来れます?」
何用かと思ったら世界樹の葉の採集?うーん、アル様と双子に言えばなんだかもらえそうな気もするけど、確かあの人たちからの依頼を達成すれば手に入れられるんだっけ?
「たぶん……?」
「取ってきてほしいんですよー」
まぁレア素材っぽいし使えるのだろうけれど……ワンダードリームさんが使うのだろうか。それたぶん蘇生アイテムとかではないが。
「差し支えなければ……何に使うんですか?」
「葉っぱ系のアイテムはポーションとかの素材に使うのがほとんどなんですけどー、これは説明文的に繊維が取れるみたいでしてー」
植物の繊維……普通にツタとかの繊維だろうか。何に使えるんだそれ。
「ファンタジー素材だからかー、服飾に使えるみたいなんですよー、だからー」
「ああ、布装備作るんですか」
「いやー、これで枕カバーとかパジャマ作ってみたいなーってー」
この人印象通り睡眠特化なんだな。
しかし採集か、できそうではあるし、これの装備も確かに気になるからな……受けてみるか。
「わかりまし……」
「ドリちゃん!なんでもう帰ってるのー!」
そういうと玄関の方からボタンさんの叫び声が聞こえる。そういえばレベリングをしていたはずでは。
「むー、レベリング乳でかが来ました。夢は眠っているのであとは任せたのです」
そういうと唐突に僕の部屋に布団を出現させたかと思うと……そこで寝た。えっ、本当にこの人ゲーム内で寝てるんですか。そして物の数秒で規則正しい寝息が聞こえてきたのと同時に、階段をボタンさんが昇ってくる音が聞こえる。えーっと、誤魔化したほうがいいのかな。
あたふたしていると扉をノックする音が聞こえる。ワンダードリームさんよりも力は強いが、控えめなノックの音だ。
「コマ君、ごめんね。ドリちゃん出してもらえる?」
バレてる。誤魔化す前にバレてる。
するとその音を聞いたのかワンダードリームさんが顔をあげ、唇に指をあて静かにの合図を出す。そのままジェスチャーで隠し通せと合図してきた。
いや、いるのバレてますけど。
「あー、ワンダードリームさんなら先ほどどこかへ出かけて」
「隠さなくて平気だよ。そもそもクランハウス管理者権限でクランハウス内のどこにいるかは表示されてるから」
ダメですって。バレるバレない以前の問題ですよワンダードリームさん。
ドアを開けるとワンダードリームさんが驚いたような顔をする。いやバレてるんですって。何で隠し通せると思ったんですか。
ボタンさんが足音を立てながらワンダードリームさんの元へ歩いていくと、布団を引っぺがした。ワンダードリームさんはその勢いのまま転がるように壁まで追いやられる。
「ドーリーちゃん!」
「ぐおー、夢の聖域がー。サンクチュアリがー」
「聖域の前に私たちを守って!ボス周回中にまさか一人だけ帰ってるとは思わなかったし!」
それは思わない。というかなんで気付かなかったんだ。
「酒魔人がいれば大丈夫かなってー」
「ハナちゃんの負担がすごいでしょうが!」
ハナミさんすげぇな。結果的にここにボタンさんがいてハナミさんがいないってことは何とかなってるんだ。雰囲気的に【暴風】さんと似たような空気あったしな。戦闘狂と酒狂いのとことかじゃなく。
「それで、なんでコマ君のところにいるの」
「レア素材持ってたからー」
「後輩の初心者からたからない!」
いや、僕はたぶん使わない素材なんで問題ないですよー、なんてことは庇ってくれている人に対して言えない。すまないワンダードリームさん。僕は基本的にボタンさんの味方でありたい。まともそうだから。
いや、とりあえず経緯だけは説明しておくか。
「ボタンさん、かくかくしかじか」
「かくかくしかじかって本当に言う人初めて見たよ」
小説的表現技法では何も伝わらなかったか、しょうがない説明しよう。
~かくかくしかじか中~
「というわけなんです」
「なるほど……いや擁護っぽく言ってるけどドリちゃんたかってるよね?コマ君もいやだったら言うんだよ」
「コマイヌ君はそんなこと言わないのでー」
言いますけど、と言いたいところだがややこしくなるので言わない。
ボタンさんは事情を聞いて何か悩むように考え始めた。そしてこちらとワンダードリームさんを見ると良いことを思いついたというような顔で手を叩いた。
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あ、そうなるん?と……
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