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美しい人魚がいても動じない
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翔が異世界に転移した日の翌日。
翔が目を覚まし村を歩くと、ラビットヒュームやワーウルフが次々と翔に挨拶をする。
「ショウ様、おはようございます!」
「ショウ様、ずっと我々の指導者でいてください!」
挨拶をする者。
「ショウ様かっこいい」
「ショウ様ステキ」
遠くから翔に憧れの眼差しを向ける狼娘や兎娘。
「顔を洗おうと思うんだが、水は何処に有る?」
翔は村長に尋ねる。
「水はこの村の向こうにある草原を抜けたところにあります」
「此の村に水は無いのか?」
「ええ、我々ラビットヒュームやワーウルフは水辺ではなく森の中に住みますゆえ」
「いや、そうでは無く、此処まで水を引けば良い。その方が何かと便利だろう」
「み、みずをひく???」
皆は翔の提案を理解出来なかった。
「水が必要になった時に池や泉に行くのではなく、池や泉から前もって水を引いてくれば良い。あるいは貯蔵しておけば良い」
「そ、そのようなことが???」
「出来る」
「うおおおおおお」
翔の力強い断言に皆は狂喜乱舞した。
「刃物は有るか?」
翔は村長に問う。
「あ、ありますが一体何を?肉を切るのですか?」
「いや、木を切るんだ」
「き、きをきる???」
皆は翔の提案を理解出来なかった。
「木を切って、一体どうなさるお積りですか?まさか木を食べるので?」
「木を切って器を作る」
「き、きをきってうつわをつくる??」
皆は翔の提案を理解出来なかった。
「論より証拠。百聞は一見に如かず、だ。やって見せよう」
翔は手際よく木を加工して、器を作って見せた。
「な、なんと器用な!し、しかし一体それをどうなさるお積りで???」
「此の器に水を汲む」
「こ、このうつわにみずをくむ???」
「水を此処まで運べると言う事だ」
「そ、そのようなことが????」
「出来る」
「うおおおおおおおお」
皆は翔の力強い断言に狂喜乱舞した。
翔が泉に出掛ける準備をしていると、目が覚めて翔がいない事に気付いたマリーとユリアが全力疾走して来た。
「ショウ様ぁ――――――――――――!!!!」
「アタイを置いていかないでおくれ―――――――!!!!」
マリーとユリアは翔に抱きつく。
「ううううー。どうしてマリーを置いていこうとするんですか!!???」
「目が覚めた時にショウ様がいなくてアタイは気が気じゃなかったよ!!!」
「今から俺は泉に行く」
翔は動じる事無くマリーとユリアに説明する。
「泉ですか??マリーも行きます!!!」
「アタイも行くさ!ショウ様の行くところならどこだって!!」
「そうか、なら行くぞ」
翔はマリーとユリアを連れて泉へ向かう。
≪草原≫
「そういえば、泉にはマーメイドがいるんですよね」
マリーが泉に住むマーメイド達の話をする。
「マーメイド、人魚か」
翔はマリーの言葉から聞き出すべき情報が存在すると察知した。
「そうです!マーメイドは泉や湖に棲む種族で、すっごく美しいんですよー!」
「馬鹿!マリー!」
ユリアがマリーを罵倒する。
「ううううー。なんですか、ユリアさん!マリーは馬鹿じゃありません!!」
「マーメイドが美しいなんて言って、ショウ様がマーメイドに興味を持ったらどうするんだい!?」
「は!はわわわわわ!う、ううううそですショウ様!マーメイドは美しくなんてありません!だから泉に行くのはやめましょ――!!」
マリーは慌てて訂正する。
「なんだ、マリーは俺に嘘を吐いたのか?」
翔はマリーに問いかける。
「うううううう。ほ、ほんとはマーメイドは美しいです。マリーはショウ様に嘘をつきません。。。。。。。」
マリーは落ち込みうつむきながら訂正を訂正する。
翔がマーメイドに興味を持ち、自分が翔といられる時間が減るのは嫌だが、翔に嘘を吐く方がマリーにとっては嫌なのだ。
自己嫌悪と、翔がマーメイドに興味を持つかも知れないという不安にマリーは表情を曇らせる。
「ア、 アタイもショウ様に隠しごとをしようとしちまった、ごめんなさい。ショウ様。
アタイは悪い娘だよ。。。。。」
ユリアも落ち込みうつむきながら謝罪する。
嫉妬に駆られて翔に情報が伝わるのを妨害しようとしたこと、そしてマリーに嘘をつかせてしまったことに罪悪感を抱いていた。
翔が現れてわずか一日で敵対関係に有ったユリアがマリーに罪悪感を覚えるに至った。
それは今までの争いの歴史に由来するものではない。
同じ翔と言う主に仕える身。
同じ翔と言う男に心酔する女。
その共通する立場が友情を芽生えさせ、その立場ゆえに友情を裏切るようなことをしてしまった。
そのことに罪悪感を抱いたのである。
わずか一日で起こった急激な変化もまたショウ・タイム(翔と時間)を過ごしたがゆえである。
「嘘を認めたなら、それで良い。気にするな。それに、俺は水が必要だから泉に向かっているだけだ」
翔の言葉にマリーとユリアは表情を明るくする。
ショウ・タイム(翔の時間)により感情を上手く整理できずにマリーとユリアが起こしてしまった過ち。
それを翔はいとも容易く解決した。
これもまたショウ・タイム(翔の時間)である。
≪泉≫
そうこうしている内に、翔とマリーとユリアは泉に到着した。
翔は泉の水を調べる。
「なるほど。清浄な水だ」
「そうです、ここの水はとってもキレイなんです!」
マリーはウサギの耳をピョコピョコと動かし力説する。
「でも、早くした方がいいかも知れないよ。。。」
ユリアが顔を曇らせる。
「どういう理由からその様に判断する?」
翔はユリアの懸念の根拠を尋ねる。
「こ、この辺りにマーメイドがいるって話をしただろう?」
ユリアは不安そうに話す。
「ユリアさん!まだマーメイドに怯えてるんですか?マーメイドがどんなにキレイでも、マリーの方がショウ様を大好きだから心配いりません!」
マリーはユリアを励まそうとする。
「ちがう、そうじゃないんだ。。。。。」
ユリアはうつむく。
「話してみろ」
翔は再び尋ねる。
「マーメイドを狙って、出るってウワサなんだ」
「何が出現すると言うんだ?」
「リ、リザードマン。。。。。」
ユリアは不安に押しつぶされそうな声でつぶやく。
「リ、リザードマン!???危険です!!ショウ様!!!早く帰りたいです!!!」
マリーはリザードマンと言う言葉に慌てふためく。
「リザードマン、トカゲ人か。それほど手強いのか?」
「強さもそうだけど、恐ろしいのさ。残酷で、執拗で、とにかく関わりたくないんだよ」
ユリアの顔は青ざめている。
マリーは長いウサギの耳を折り畳み、ガタガタと震える。
「案ずるな。俺が付いている」
翔はマリーとユリアの肩を抱く。
「ショウ様!」
「ショウ様!」
マリーとユリアは翔に抱きつく。
翔に抱きついて少しすると、マリーとユリアは落ち着きを取り戻す。
「ショウ様と一緒なら、マリーは怖くありません」
「ショウ様といられるなら、何が起きたとしても後悔しないよ」
マリーとユリアはウットリした眼差しで翔を見詰める。
「ショウ様?」
泉から翔の名を呼ぶ声がする。
泉を見ると、其処には青い髪をしたマーメイドがいた。下半身は青い魚の鱗で。たわわな胸は二つの白い貝殻で隠されている。
「お前は此の泉に棲むマーメイドか」
翔は全く動揺せずにマーメイドに質問する。
「はい、この泉に棲む、レイナと申します」
レイナは濡れた青い髪のあいだから、紫色の目で翔を見詰める。
「レイナ、何故俺の名を知っている?俺が此の世界に現れて一日しか経過していないが」
「そ、それはショウ様が一日にしてラビットヒュームとワーウルフを傘下に収めたという偉業がマーメイドにも伝え聞こえたからです」
「そうです!ショウ様はすっごくすごいんです!」
「そうさ!ショウ様ほどすごい御方はいないよ!」
マリーとユリアは断言する。
「其れで、俺がラビットヒュームとワーウルフの争いに終止符を打ったと言う事実を聞き、マーメイドをリザードマンから救って欲しいと言う訳か」
翔は少ない情報からマーメイドの思惑を推察する。
「そ、そのとおりです。ショウ様は勇者とお聞きしましたが、賢者だったのですか?」
レイナは翔の推理力に驚嘆する。
「ショウ様はなんでもできるんです!」
マリーは得意げに胸を張る。
「其れは辻褄が合わないな」
翔は指摘する。
「つ、つじつま、ですか??」
翔の指摘にレイナは困惑する。
「俺がラビットヒュームとワーウルフを傘下に収めたと言う情報が拡散している事は辻褄が合う。しかし俺が勇者だと言う情報は何処から来た?
マリーが俺に助けを求めた時は、森に勇者が現れラビットヒュームを救うと言う伝承に基づいていた。レイナは何処で俺を勇者だと聞いたんだ?」
マリーとユリアは翔の指摘を理解出来なかった。
しかし、レイナは翔の頭脳の回転速度と情報を統合する能力に圧倒された。
「は、はい。ショウ様がお察しの通り、我々マーメイドにも伝承が有るのです。二人のアニマルヒュームを従えて、勇者が泉に現れる。そしてその勇者が我々マーメイドを御救いくださると」
レイナは祈るように掌を組み、翔に頭を垂れる。
「ラビットヒュームは伝承と共に勇者の腕輪を継承していた。マーメイドにも、伝承と共に継承した勇者にまつわる武具が有るのでは無いか?」
翔はRPGの勇者の様に、次のイベントが発生するまで待ちぼうける男では無い。
少ない情報から仮説を組み立て、能動的に自らに必要な道具や環境を整える。
それが食肉であろうと、木を加工する刃物であろうと、水であろうと、伝説の勇者の武具であろうと。
「お、おっしゃる通りです。すべてお見通しなんですね。我々マーメイドも、勇者の腕輪を継承してきました」
翔の仮説は当たっていた。
レイナは腰に巻き付けた布袋から腕輪を差し出す。
「お納めください」
翔は躊躇うこと無く腕輪を装着する。
腕輪は光、唸りを上げる。
しばらくすると収まった。
翔は腕輪の能力をステータスで確認する。
≪勇者の腕輪・選ばれし真の勇者にのみ装着が許された伝説の武具。酸素の供給が必要では無くなり、水中での活動が難無く行えるようになる。目や耳、鼻などに水が流入することを防ぐ。体が濡れることも防げる。
水圧の影響も排除出来る。水中で活動する際に生じるいかなる弊害も排除可能。他者にも同じ効果を付与することが出来る。マーメイドの地上での活動能力も付与出来る≫
「なるほど。リザードマンと戦う為に有るような武具だな」
翔は腕輪の効果を確認した。
「じ、実は、我々マーメイドが継承してきた武具は、もう一つあるのです。。。」
レイナは後ろめたそうに話す。
「もう一つの武具とは何だ?」
翔が問いかける。
「勇者の剣です」
「勇者の剣か」
「で、ですが、その」
「リザードマンに奪われたのか?」
「は、はい。。。。勇者の剣は海底神殿の最奥に有る聖櫃に突き立てられていて、選ばれし真の勇者にしか引き抜く事が出来ないとされています。
ですが、海底神殿がリザードマンに占領されてしまったんです」
「なるほど、鍵は箱の中、か」
翔は思案する。
「申し訳ありません!ショウ様に御渡しするべき伝説の武具をリザードマンに奪われてしまい。。。。」
レイナは、どんな罰も受ける積もりだった。
「それは問題では無い。俺にしか使えないのなら、リザードマンの戦力が上がった訳でもあるまい。聖櫃に突き立てられているのなら、移動してもいないだろう」
翔は寛大な心で話を続ける。
翔はレイナを許したのでは無い。そもそもレイナに落ち度が有ると考えていないのだ。
許す寛大さや、責めない寛大さでは無い。
気にも留めない寛大さを翔は持っていた。
「海底神殿と言うからには、当然、海の底に有るんだろう?此処は泉だ。此の泉の何処かが海に繋がっていて、レイナが俺達を海底神殿まで案内出来るんだろうな?
レイナを地上で活動させる事も可能だが」
「は、はい。それでは、ショウ様は我々を御救いくださるのですか?」
「救ってやるよ」
「あ、ありがとうございます!!!」
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
翔は腕輪の能力を発動し、翔とマリーとユリアが水中での活動を地上での活動と同レベルにまで引き上げた。
レイナの案内により、リザードマンの占領する海底神殿へと向かう。
翔が目を覚まし村を歩くと、ラビットヒュームやワーウルフが次々と翔に挨拶をする。
「ショウ様、おはようございます!」
「ショウ様、ずっと我々の指導者でいてください!」
挨拶をする者。
「ショウ様かっこいい」
「ショウ様ステキ」
遠くから翔に憧れの眼差しを向ける狼娘や兎娘。
「顔を洗おうと思うんだが、水は何処に有る?」
翔は村長に尋ねる。
「水はこの村の向こうにある草原を抜けたところにあります」
「此の村に水は無いのか?」
「ええ、我々ラビットヒュームやワーウルフは水辺ではなく森の中に住みますゆえ」
「いや、そうでは無く、此処まで水を引けば良い。その方が何かと便利だろう」
「み、みずをひく???」
皆は翔の提案を理解出来なかった。
「水が必要になった時に池や泉に行くのではなく、池や泉から前もって水を引いてくれば良い。あるいは貯蔵しておけば良い」
「そ、そのようなことが???」
「出来る」
「うおおおおおお」
翔の力強い断言に皆は狂喜乱舞した。
「刃物は有るか?」
翔は村長に問う。
「あ、ありますが一体何を?肉を切るのですか?」
「いや、木を切るんだ」
「き、きをきる???」
皆は翔の提案を理解出来なかった。
「木を切って、一体どうなさるお積りですか?まさか木を食べるので?」
「木を切って器を作る」
「き、きをきってうつわをつくる??」
皆は翔の提案を理解出来なかった。
「論より証拠。百聞は一見に如かず、だ。やって見せよう」
翔は手際よく木を加工して、器を作って見せた。
「な、なんと器用な!し、しかし一体それをどうなさるお積りで???」
「此の器に水を汲む」
「こ、このうつわにみずをくむ???」
「水を此処まで運べると言う事だ」
「そ、そのようなことが????」
「出来る」
「うおおおおおおおお」
皆は翔の力強い断言に狂喜乱舞した。
翔が泉に出掛ける準備をしていると、目が覚めて翔がいない事に気付いたマリーとユリアが全力疾走して来た。
「ショウ様ぁ――――――――――――!!!!」
「アタイを置いていかないでおくれ―――――――!!!!」
マリーとユリアは翔に抱きつく。
「ううううー。どうしてマリーを置いていこうとするんですか!!???」
「目が覚めた時にショウ様がいなくてアタイは気が気じゃなかったよ!!!」
「今から俺は泉に行く」
翔は動じる事無くマリーとユリアに説明する。
「泉ですか??マリーも行きます!!!」
「アタイも行くさ!ショウ様の行くところならどこだって!!」
「そうか、なら行くぞ」
翔はマリーとユリアを連れて泉へ向かう。
≪草原≫
「そういえば、泉にはマーメイドがいるんですよね」
マリーが泉に住むマーメイド達の話をする。
「マーメイド、人魚か」
翔はマリーの言葉から聞き出すべき情報が存在すると察知した。
「そうです!マーメイドは泉や湖に棲む種族で、すっごく美しいんですよー!」
「馬鹿!マリー!」
ユリアがマリーを罵倒する。
「ううううー。なんですか、ユリアさん!マリーは馬鹿じゃありません!!」
「マーメイドが美しいなんて言って、ショウ様がマーメイドに興味を持ったらどうするんだい!?」
「は!はわわわわわ!う、ううううそですショウ様!マーメイドは美しくなんてありません!だから泉に行くのはやめましょ――!!」
マリーは慌てて訂正する。
「なんだ、マリーは俺に嘘を吐いたのか?」
翔はマリーに問いかける。
「うううううう。ほ、ほんとはマーメイドは美しいです。マリーはショウ様に嘘をつきません。。。。。。。」
マリーは落ち込みうつむきながら訂正を訂正する。
翔がマーメイドに興味を持ち、自分が翔といられる時間が減るのは嫌だが、翔に嘘を吐く方がマリーにとっては嫌なのだ。
自己嫌悪と、翔がマーメイドに興味を持つかも知れないという不安にマリーは表情を曇らせる。
「ア、 アタイもショウ様に隠しごとをしようとしちまった、ごめんなさい。ショウ様。
アタイは悪い娘だよ。。。。。」
ユリアも落ち込みうつむきながら謝罪する。
嫉妬に駆られて翔に情報が伝わるのを妨害しようとしたこと、そしてマリーに嘘をつかせてしまったことに罪悪感を抱いていた。
翔が現れてわずか一日で敵対関係に有ったユリアがマリーに罪悪感を覚えるに至った。
それは今までの争いの歴史に由来するものではない。
同じ翔と言う主に仕える身。
同じ翔と言う男に心酔する女。
その共通する立場が友情を芽生えさせ、その立場ゆえに友情を裏切るようなことをしてしまった。
そのことに罪悪感を抱いたのである。
わずか一日で起こった急激な変化もまたショウ・タイム(翔と時間)を過ごしたがゆえである。
「嘘を認めたなら、それで良い。気にするな。それに、俺は水が必要だから泉に向かっているだけだ」
翔の言葉にマリーとユリアは表情を明るくする。
ショウ・タイム(翔の時間)により感情を上手く整理できずにマリーとユリアが起こしてしまった過ち。
それを翔はいとも容易く解決した。
これもまたショウ・タイム(翔の時間)である。
≪泉≫
そうこうしている内に、翔とマリーとユリアは泉に到着した。
翔は泉の水を調べる。
「なるほど。清浄な水だ」
「そうです、ここの水はとってもキレイなんです!」
マリーはウサギの耳をピョコピョコと動かし力説する。
「でも、早くした方がいいかも知れないよ。。。」
ユリアが顔を曇らせる。
「どういう理由からその様に判断する?」
翔はユリアの懸念の根拠を尋ねる。
「こ、この辺りにマーメイドがいるって話をしただろう?」
ユリアは不安そうに話す。
「ユリアさん!まだマーメイドに怯えてるんですか?マーメイドがどんなにキレイでも、マリーの方がショウ様を大好きだから心配いりません!」
マリーはユリアを励まそうとする。
「ちがう、そうじゃないんだ。。。。。」
ユリアはうつむく。
「話してみろ」
翔は再び尋ねる。
「マーメイドを狙って、出るってウワサなんだ」
「何が出現すると言うんだ?」
「リ、リザードマン。。。。。」
ユリアは不安に押しつぶされそうな声でつぶやく。
「リ、リザードマン!???危険です!!ショウ様!!!早く帰りたいです!!!」
マリーはリザードマンと言う言葉に慌てふためく。
「リザードマン、トカゲ人か。それほど手強いのか?」
「強さもそうだけど、恐ろしいのさ。残酷で、執拗で、とにかく関わりたくないんだよ」
ユリアの顔は青ざめている。
マリーは長いウサギの耳を折り畳み、ガタガタと震える。
「案ずるな。俺が付いている」
翔はマリーとユリアの肩を抱く。
「ショウ様!」
「ショウ様!」
マリーとユリアは翔に抱きつく。
翔に抱きついて少しすると、マリーとユリアは落ち着きを取り戻す。
「ショウ様と一緒なら、マリーは怖くありません」
「ショウ様といられるなら、何が起きたとしても後悔しないよ」
マリーとユリアはウットリした眼差しで翔を見詰める。
「ショウ様?」
泉から翔の名を呼ぶ声がする。
泉を見ると、其処には青い髪をしたマーメイドがいた。下半身は青い魚の鱗で。たわわな胸は二つの白い貝殻で隠されている。
「お前は此の泉に棲むマーメイドか」
翔は全く動揺せずにマーメイドに質問する。
「はい、この泉に棲む、レイナと申します」
レイナは濡れた青い髪のあいだから、紫色の目で翔を見詰める。
「レイナ、何故俺の名を知っている?俺が此の世界に現れて一日しか経過していないが」
「そ、それはショウ様が一日にしてラビットヒュームとワーウルフを傘下に収めたという偉業がマーメイドにも伝え聞こえたからです」
「そうです!ショウ様はすっごくすごいんです!」
「そうさ!ショウ様ほどすごい御方はいないよ!」
マリーとユリアは断言する。
「其れで、俺がラビットヒュームとワーウルフの争いに終止符を打ったと言う事実を聞き、マーメイドをリザードマンから救って欲しいと言う訳か」
翔は少ない情報からマーメイドの思惑を推察する。
「そ、そのとおりです。ショウ様は勇者とお聞きしましたが、賢者だったのですか?」
レイナは翔の推理力に驚嘆する。
「ショウ様はなんでもできるんです!」
マリーは得意げに胸を張る。
「其れは辻褄が合わないな」
翔は指摘する。
「つ、つじつま、ですか??」
翔の指摘にレイナは困惑する。
「俺がラビットヒュームとワーウルフを傘下に収めたと言う情報が拡散している事は辻褄が合う。しかし俺が勇者だと言う情報は何処から来た?
マリーが俺に助けを求めた時は、森に勇者が現れラビットヒュームを救うと言う伝承に基づいていた。レイナは何処で俺を勇者だと聞いたんだ?」
マリーとユリアは翔の指摘を理解出来なかった。
しかし、レイナは翔の頭脳の回転速度と情報を統合する能力に圧倒された。
「は、はい。ショウ様がお察しの通り、我々マーメイドにも伝承が有るのです。二人のアニマルヒュームを従えて、勇者が泉に現れる。そしてその勇者が我々マーメイドを御救いくださると」
レイナは祈るように掌を組み、翔に頭を垂れる。
「ラビットヒュームは伝承と共に勇者の腕輪を継承していた。マーメイドにも、伝承と共に継承した勇者にまつわる武具が有るのでは無いか?」
翔はRPGの勇者の様に、次のイベントが発生するまで待ちぼうける男では無い。
少ない情報から仮説を組み立て、能動的に自らに必要な道具や環境を整える。
それが食肉であろうと、木を加工する刃物であろうと、水であろうと、伝説の勇者の武具であろうと。
「お、おっしゃる通りです。すべてお見通しなんですね。我々マーメイドも、勇者の腕輪を継承してきました」
翔の仮説は当たっていた。
レイナは腰に巻き付けた布袋から腕輪を差し出す。
「お納めください」
翔は躊躇うこと無く腕輪を装着する。
腕輪は光、唸りを上げる。
しばらくすると収まった。
翔は腕輪の能力をステータスで確認する。
≪勇者の腕輪・選ばれし真の勇者にのみ装着が許された伝説の武具。酸素の供給が必要では無くなり、水中での活動が難無く行えるようになる。目や耳、鼻などに水が流入することを防ぐ。体が濡れることも防げる。
水圧の影響も排除出来る。水中で活動する際に生じるいかなる弊害も排除可能。他者にも同じ効果を付与することが出来る。マーメイドの地上での活動能力も付与出来る≫
「なるほど。リザードマンと戦う為に有るような武具だな」
翔は腕輪の効果を確認した。
「じ、実は、我々マーメイドが継承してきた武具は、もう一つあるのです。。。」
レイナは後ろめたそうに話す。
「もう一つの武具とは何だ?」
翔が問いかける。
「勇者の剣です」
「勇者の剣か」
「で、ですが、その」
「リザードマンに奪われたのか?」
「は、はい。。。。勇者の剣は海底神殿の最奥に有る聖櫃に突き立てられていて、選ばれし真の勇者にしか引き抜く事が出来ないとされています。
ですが、海底神殿がリザードマンに占領されてしまったんです」
「なるほど、鍵は箱の中、か」
翔は思案する。
「申し訳ありません!ショウ様に御渡しするべき伝説の武具をリザードマンに奪われてしまい。。。。」
レイナは、どんな罰も受ける積もりだった。
「それは問題では無い。俺にしか使えないのなら、リザードマンの戦力が上がった訳でもあるまい。聖櫃に突き立てられているのなら、移動してもいないだろう」
翔は寛大な心で話を続ける。
翔はレイナを許したのでは無い。そもそもレイナに落ち度が有ると考えていないのだ。
許す寛大さや、責めない寛大さでは無い。
気にも留めない寛大さを翔は持っていた。
「海底神殿と言うからには、当然、海の底に有るんだろう?此処は泉だ。此の泉の何処かが海に繋がっていて、レイナが俺達を海底神殿まで案内出来るんだろうな?
レイナを地上で活動させる事も可能だが」
「は、はい。それでは、ショウ様は我々を御救いくださるのですか?」
「救ってやるよ」
「あ、ありがとうございます!!!」
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
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相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
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