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第2章
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ブタ男の住むアパートは公園から歩いてすぐとのことだった。智也と誠は並んで歩き、前をブタ男に歩かせた。
ブタ男の本名は辻村猛という。今はフリーターとのことだったが、この三ヶ月求職中というから実質無職ということだろう。
すでに免許証は返しているし、智也達と乃愛の関係も簡単に説明している。
「辻村さん、あんた、仕事もしないでどうやって食べてるんだよ?」
誠があきれた口調で聞く。
「いろいろだよ。貯金崩したり、パチンコで稼いだり、ネットで売ったりさ」
「ふーん」
相手が小学生だからなのか、股間の痛みが収まってきたからなのか、辻村の口調はかなりフランクなものになってきた。
辻村のアパートは比較的新しい造りだった。アパートの前には大きめの四駆が一台停めてある。
「いいだろ? 去年買ったんだぜ」
わざわざ振り返って言う辻村に、智也と誠は呆れた視線を返す。
「言っとくけどな。俺は本当に盗聴もハッキングもしてないぜ。本当にテレパシーなんだよ」
「分かった、分かった。分かったから、早く部屋に入れろ」
辻村の部屋は本人の外見同様、爽やかさの中にも色のある、オシャレな模様だった。
「パソコンはそれだな」
誠がパソコンを立ち上げ、中をチェックする。フォルダー、ネットの閲覧履歴、メール、全てを。だが不思議なほど、乃愛のプライベートに関する情報はなかった。乃愛の画像を保存したフォルダはあったが、それらは全てネットから拾ってきたものだった。
「乃愛や事務所のメールとか、ハッキングしてるかと思ったんだが……」
「データはUSBとかに保存してるのかな?」
「いや、智也。そもそもこのスペックのパソコンじゃ、ハッキングなんて無理だ」
「やっぱり盗聴とかかな」
「それも考えたけど、ここから乃愛の家まで距離がありすぎるんだよな。普通にマイクやカメラを隠しただけじゃ、直接映像や音声を受信するのは無理だし、もし電波の中継基地を持つとしたら、相当大掛かりだぜ」
「乃愛の家の近所まで来て、映像や音声の電波を拾ってたんじゃない?」
「乃愛の家の近所ってことは、俺達の家の近所でもある。智也、お前、こいつの顔見たことあるか?」
「……ううん。ない」
平気な顔で辻村が割り込んできた。
「だからさ、頭の中に情報が飛び込んでくるのよ。乃愛ちゃんの学校での出来事とかさ」
「ひとつ聞きたいんだけど、辻村さんて乃愛のファンなの? アンチなの?」
きょとんとする辻村を尻目に、智也の問いに答えたのは誠だった。
「あのな、わざわざ言わなかったけど、ファンとアンチは表裏一体なんだよ。愛の反対は嫌いじゃなくて、無関心っていうだろ?」
誠の言葉に辻村が大きく頷く。
「そう、そう。そうなんだよ。俺さ、チャットじゃけっこう手厳しいコメントもしてたけど、本当は乃愛ちゃんのことが好きなの。応援してるの。だからさ、そこんとこは乃愛ちゃんにもよく言っといてよ」
「だったら、普通に応援だけしとけよな」
「俺もそう思ったよ、最初は。でも乃愛ちゃん、公式のSNSもやってないし、バラエティ番組にも出ないしさ、イライラしちゃって……」
そう言うと辻村は、部屋に唯一ある戸棚からあるものを出してきた。
「そんな時、すごい美人が突然訪ねてきてさ。いや、それがすごい美人なのよ。化粧もほとんどしてないのに、すごい肌がキレイでさ」
智也も誠も黙っていた。
発する言葉がなかった。
「これを使えば、感覚や思考、記憶の共有ができるって言うんだよね。知りたいことを念じるだけで、情報が頭に入ってくるんだ」
辻村が持っているのは、高さ50cmほどの金属製のミニチュアの電波塔だった。
智也も誠も、それには見覚えがあった。
忘れるはずもない。
一年前、ネイレが見せたミニチュアの人間達が住むジオラマの街。その中心にあった電波塔と全く同じものだったのだ。
ブタ男の本名は辻村猛という。今はフリーターとのことだったが、この三ヶ月求職中というから実質無職ということだろう。
すでに免許証は返しているし、智也達と乃愛の関係も簡単に説明している。
「辻村さん、あんた、仕事もしないでどうやって食べてるんだよ?」
誠があきれた口調で聞く。
「いろいろだよ。貯金崩したり、パチンコで稼いだり、ネットで売ったりさ」
「ふーん」
相手が小学生だからなのか、股間の痛みが収まってきたからなのか、辻村の口調はかなりフランクなものになってきた。
辻村のアパートは比較的新しい造りだった。アパートの前には大きめの四駆が一台停めてある。
「いいだろ? 去年買ったんだぜ」
わざわざ振り返って言う辻村に、智也と誠は呆れた視線を返す。
「言っとくけどな。俺は本当に盗聴もハッキングもしてないぜ。本当にテレパシーなんだよ」
「分かった、分かった。分かったから、早く部屋に入れろ」
辻村の部屋は本人の外見同様、爽やかさの中にも色のある、オシャレな模様だった。
「パソコンはそれだな」
誠がパソコンを立ち上げ、中をチェックする。フォルダー、ネットの閲覧履歴、メール、全てを。だが不思議なほど、乃愛のプライベートに関する情報はなかった。乃愛の画像を保存したフォルダはあったが、それらは全てネットから拾ってきたものだった。
「乃愛や事務所のメールとか、ハッキングしてるかと思ったんだが……」
「データはUSBとかに保存してるのかな?」
「いや、智也。そもそもこのスペックのパソコンじゃ、ハッキングなんて無理だ」
「やっぱり盗聴とかかな」
「それも考えたけど、ここから乃愛の家まで距離がありすぎるんだよな。普通にマイクやカメラを隠しただけじゃ、直接映像や音声を受信するのは無理だし、もし電波の中継基地を持つとしたら、相当大掛かりだぜ」
「乃愛の家の近所まで来て、映像や音声の電波を拾ってたんじゃない?」
「乃愛の家の近所ってことは、俺達の家の近所でもある。智也、お前、こいつの顔見たことあるか?」
「……ううん。ない」
平気な顔で辻村が割り込んできた。
「だからさ、頭の中に情報が飛び込んでくるのよ。乃愛ちゃんの学校での出来事とかさ」
「ひとつ聞きたいんだけど、辻村さんて乃愛のファンなの? アンチなの?」
きょとんとする辻村を尻目に、智也の問いに答えたのは誠だった。
「あのな、わざわざ言わなかったけど、ファンとアンチは表裏一体なんだよ。愛の反対は嫌いじゃなくて、無関心っていうだろ?」
誠の言葉に辻村が大きく頷く。
「そう、そう。そうなんだよ。俺さ、チャットじゃけっこう手厳しいコメントもしてたけど、本当は乃愛ちゃんのことが好きなの。応援してるの。だからさ、そこんとこは乃愛ちゃんにもよく言っといてよ」
「だったら、普通に応援だけしとけよな」
「俺もそう思ったよ、最初は。でも乃愛ちゃん、公式のSNSもやってないし、バラエティ番組にも出ないしさ、イライラしちゃって……」
そう言うと辻村は、部屋に唯一ある戸棚からあるものを出してきた。
「そんな時、すごい美人が突然訪ねてきてさ。いや、それがすごい美人なのよ。化粧もほとんどしてないのに、すごい肌がキレイでさ」
智也も誠も黙っていた。
発する言葉がなかった。
「これを使えば、感覚や思考、記憶の共有ができるって言うんだよね。知りたいことを念じるだけで、情報が頭に入ってくるんだ」
辻村が持っているのは、高さ50cmほどの金属製のミニチュアの電波塔だった。
智也も誠も、それには見覚えがあった。
忘れるはずもない。
一年前、ネイレが見せたミニチュアの人間達が住むジオラマの街。その中心にあった電波塔と全く同じものだったのだ。
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