美しき怪人は少年少女探偵団を眠らせてくれない

white love it

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第2章

9.

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 少しも呼吸の乱れを見せずに、誠が言った。

「智也、ブタ男の免許証を取り出せ。財布がポケットにあるはずだ」
「う、うん」

 言われたとおり智也がブタ男のポケットを探る中、誠がブタ男を見下ろしたまま、少し低い、それでいてとても冷たい声で言った。

「余計なことを言ったら〇〇する。大声を出したら△△だ。分かったな? よし、じゃあ聞くぞ。何で乃愛のプライベートを知ってる?」

 しばらくの間モゴモゴと言いながら身体を震わせていたブタ男だったが、ついに口を開いた。

「テレパシーだ」
「……あん?」
「だから、テレパシーだよ。知りたい情報があると、頭の中にその答えが入ってくるんだ」
「……」

 智也達は何も言わなかった。
 ただ黙ってお互いを見つめていた。

「ええっと……」

 亜紀が智也の横で、おそるおそるといった風に手を上げた。

「ブタ男さん?」

 脂汗を垂らしながら、ブタ男が亜紀に顔を向ける。

「何だよ?」

 少し迷った様子だったが、亜紀が続けて言った。

「私は暴力は嫌いよ。でも友達のためだったら、ある程度汚いこともするつもり。だから、もう一回聞くわよ。十分注意して答えてね。なぜ、乃愛のプライベートが分かったの?」

 ブタ男は股間を押さえたまま答える。

「だから、テレパシーだよ。嘘じゃないって」

 誠の目つきがスッと鋭くなったのを見て、智也が慌てて口を開く。

「とりあえず、ブタ男の家に行ってみようよ。ひょっとしたら、盗聴器とかハッキング用のコンピューターとか見つかるかもしれないし」
「そうね。それが確実かも」

 亜紀も頷く。

「よし、いいだろう。ただし家に行くのは俺と智也だ。乃愛と亜紀はここで待ってろ。いいよな?」

 最後の問いかけはブタ男に対してのものだった。
 ブタ男はしばらくの間、悔しそうな表情を見せていたが、やがて渋々といった様子で頷いた。

「それにしても……」

 亜紀がため息をつきながら言った。

「こんななのにねぇ……」

 確かに。
 ブタ男は鼻筋の通った、彫りの深い顔立ちだった。
 四人がため息をつくのを、ブタ男は眉間にシワを寄せながら睨んでいた。
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