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第2章
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三ヶ月前、突然辻村の前に現れたネイレが電波塔を置いていったのだという。流石に当初は半信半疑だった辻村も、やがて使い方に慣れていき、ついには知りたい様々な情報が頭に流れ込んでくるようになったとのことだった。
「裏面のスイッチを入れて、キーワードを強く思い浮かべるだけでいいんだ。乃愛ちゃんについて知りたいなら、乃愛ちゃん。パチンコの当たり台ならパチンコ。ホントにそれだけで色んな情報が頭に入ってくるのよ。言葉として入ってくることもあれば、映像や音声で入ってくることもある」
「誰から? 他にもこれを持ってる奴はいるのか?」
「それは分からないよ。アドレス付きじゃないしさ。ただ毎回同じ発信元ではない気がするんだよな。不特定多数から同じネタがくることもあるし」
「ってことは、一度に幾つもの情報が頭に入ってくることもあるわけだ。よく理解できるな」
「だから、慣れるまでは大変なんだって」
智也は誠に目配せした。
誠も頷き返す。
辻村は嘘は言ってないだろう。確かにあのネイレなら、それくらいの機械を持っていても不思議ではない。
もちろん人や物をどうやって小型化したのか、智也には想像もつかない。だがあのネイレなら、テレパシーを助ける機械を作るのは十分に可能だろうと思う。
智也の脳裏に一年前に見たネイレの姿が浮かぶ。
あの圧倒的な美しさ。それも化粧や流行の髪型によるものではない、あるがままの姿であれだけの透明感と品格を醸し出す美女は芸能界にもいないと乃愛が話したあの美しさは、それだけで彼女がただの人間ではないことを十分に示していた。
「知りたい情報を得るには、キーワードを頭に浮かべるだけでいいんだよね? 逆に誰かに教えたいことがある場合はどうするの?」
智也の質問に辻村は首を傾げた。
「それは考えたことがないな。特定の相手に何かを伝えるのは無理な気がするけどな」
そう言ってから辻村は手にした電波塔の裏側を見せる。
「まあ、でもスイッチは一度入れたら切れないからな。ひょっとしたら、俺が意識してないだけで今も、頭の中の情報は引き出されているのかもしれないし」
しばしの沈黙。それから誠が口を開いた。
「何だと?」
「いやいや、別に俺が知ってる事なんて、わざわざ隠すことなんて特にないしさ。心配してくれなくて大丈夫。ホント、俺なんて全然大した人間じゃないしさ」
何を勘違いしているのかニヤニヤしながら手を振る辻村を前にして、智也と誠は顔を見合わせた。
もし辻村の言っていることが本当なら、例えば今、同じ電波塔を持っていて乃愛について知ろうとした人物がいた場合、智也達の居場所がばれている可能性がある。
もちろんただの一回のファンならそこまで問題はないだろう。
だが、それがもしそれが普通のファンではなかったら?
もしそれが……
「「ネイレ!!」」
智也と誠は同時にその名前を口にした。
「あの女、俺達がどこにいるか、それから俺達がこの電波塔の存在を知ったことに気づいた可能性がある」
「うん」
もちろん、だからと言って具体的にそれがどんな危険につながるのかは分からない。
ただ間違いなくネイレは、自分達より、親や学校の先生や事務所の社長よりも高い次元の存在だった。
そんな存在にうかつに近づくのがどれほど危険なことか、智也も誠も本能的に察していた。
「おっさん、あんたの車、確か窓ガラスはスモークがかかってたよな?」
「え? ああ。あれ、車検通すの大変で」
「悪いが借りてくぜ」
「「え?」」
智也と辻村の声がタイミングよく重なった。
「心配するなよ。あとで乃愛とツーショットの写真を撮らせてやるからさ」
そう言うと、誠はニヤリと口の端を上げた。
それはまるで猫科の猛獣を思わせる仕草だった。
「裏面のスイッチを入れて、キーワードを強く思い浮かべるだけでいいんだ。乃愛ちゃんについて知りたいなら、乃愛ちゃん。パチンコの当たり台ならパチンコ。ホントにそれだけで色んな情報が頭に入ってくるのよ。言葉として入ってくることもあれば、映像や音声で入ってくることもある」
「誰から? 他にもこれを持ってる奴はいるのか?」
「それは分からないよ。アドレス付きじゃないしさ。ただ毎回同じ発信元ではない気がするんだよな。不特定多数から同じネタがくることもあるし」
「ってことは、一度に幾つもの情報が頭に入ってくることもあるわけだ。よく理解できるな」
「だから、慣れるまでは大変なんだって」
智也は誠に目配せした。
誠も頷き返す。
辻村は嘘は言ってないだろう。確かにあのネイレなら、それくらいの機械を持っていても不思議ではない。
もちろん人や物をどうやって小型化したのか、智也には想像もつかない。だがあのネイレなら、テレパシーを助ける機械を作るのは十分に可能だろうと思う。
智也の脳裏に一年前に見たネイレの姿が浮かぶ。
あの圧倒的な美しさ。それも化粧や流行の髪型によるものではない、あるがままの姿であれだけの透明感と品格を醸し出す美女は芸能界にもいないと乃愛が話したあの美しさは、それだけで彼女がただの人間ではないことを十分に示していた。
「知りたい情報を得るには、キーワードを頭に浮かべるだけでいいんだよね? 逆に誰かに教えたいことがある場合はどうするの?」
智也の質問に辻村は首を傾げた。
「それは考えたことがないな。特定の相手に何かを伝えるのは無理な気がするけどな」
そう言ってから辻村は手にした電波塔の裏側を見せる。
「まあ、でもスイッチは一度入れたら切れないからな。ひょっとしたら、俺が意識してないだけで今も、頭の中の情報は引き出されているのかもしれないし」
しばしの沈黙。それから誠が口を開いた。
「何だと?」
「いやいや、別に俺が知ってる事なんて、わざわざ隠すことなんて特にないしさ。心配してくれなくて大丈夫。ホント、俺なんて全然大した人間じゃないしさ」
何を勘違いしているのかニヤニヤしながら手を振る辻村を前にして、智也と誠は顔を見合わせた。
もし辻村の言っていることが本当なら、例えば今、同じ電波塔を持っていて乃愛について知ろうとした人物がいた場合、智也達の居場所がばれている可能性がある。
もちろんただの一回のファンならそこまで問題はないだろう。
だが、それがもしそれが普通のファンではなかったら?
もしそれが……
「「ネイレ!!」」
智也と誠は同時にその名前を口にした。
「あの女、俺達がどこにいるか、それから俺達がこの電波塔の存在を知ったことに気づいた可能性がある」
「うん」
もちろん、だからと言って具体的にそれがどんな危険につながるのかは分からない。
ただ間違いなくネイレは、自分達より、親や学校の先生や事務所の社長よりも高い次元の存在だった。
そんな存在にうかつに近づくのがどれほど危険なことか、智也も誠も本能的に察していた。
「おっさん、あんたの車、確か窓ガラスはスモークがかかってたよな?」
「え? ああ。あれ、車検通すの大変で」
「悪いが借りてくぜ」
「「え?」」
智也と辻村の声がタイミングよく重なった。
「心配するなよ。あとで乃愛とツーショットの写真を撮らせてやるからさ」
そう言うと、誠はニヤリと口の端を上げた。
それはまるで猫科の猛獣を思わせる仕草だった。
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