【完結】第一王子と侍従令嬢の将来の夢

かずえ

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7 これからの話

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 洗った小鍋を持って夕食を取りに行くと、料理長がわざわざ待っていてくれた。マクシムは、礼儀正しく頭を下げる。

「本当に美味しいスープでした。ありがとうございました。」

「それは良かった。待っててくださいよ、今、盛り付けるから。三人分ね。」

 目の前で、たくさん入っている鍋や籠やボウルから、手際よく盛り付けられる食べ物を見ていると、ほっとする。この状況で毒を仕込むことは難しいだろう。では、今まではどうだったのだろうか。取りに来ていたのが自分では無かったので、何とも判断が付かない。だがいつも、湯気は立っていなかったような……。

「できましたよ。どうされた?難しい顔をして。」

「あ、いや。今までは冷めた食事が多かったので、湯気の立ってるものが嬉しくて。」

「みんなと同じものって注文してたんですよね。……ふむ。」

「色々と思うところはありますが、今は。」

 忙しく立ち回る辺りを見回して二人は口をつぐみ、目を見交わして、別れた。


「どうだ?」

「はい。すべて、食べられるものです。」

 その一言が、なんと安心感をもたらすものか、とシリルとマクシムは思わず頬を緩めた。結論から言うと、二人が魔力を目に込めても、特に見え方に違いはなかった。今回は、食べられないものが入っていないから、すぐに判断をつけるのは難しいのだが。
 
 夕食はシリルの部屋に並べた。ソファにリュシルを座らせ、自分で食べられそうだと言うので、それぞれで食べ進める。和やかに食べて、すっかり心身ともに回復した三人は、これまでのことを思った。

「考えなくてはいけないことが、たくさんある。」

「そうですね。」

「思考力も奪われていたようだ。食べ物の大切さを思い知ったよ。」

「私もです、殿下。食べ物に毒を盛られることをおかしいと思うことや、替えの侍従や護衛騎士が来ないことがおかしいと思う気持ちも湧かず、ただただ、殿下を護れるのはもう、自分しかいないとの強迫観念のようなものに捕らわれておりました。」

「あの……。」

 しみじみとソファに体を預けて呟いたシリルとマクシムの言葉を、おずおずとリュシルが遮る。疲れて、ソファにもたれているのも怠そうな様子に、マクシムが慌てて立ち上がり、クッションを二つ重ねて置き、寝るような姿勢を取らせた。シリルも心配げに見守る。

「も、申し訳ありません。お手間を取らせて……。あの、先程のお話なのですが、私が聞いてもよろしかったのでしょうか?」

「ああ。」

 少し眉をしかめて、シリルはため息をついた。
 
「貴女はもう、私に毒が入っていることを知ってしまった。巻き込んでしまい、申し訳ない。」

「殿下、頭を下げてはいけません。」

 ソファに座ったまま、頭を下げるシリルに、リュシルが慌てる。王族は、非を認めたとしても、軽々しく頭を下げたりはしないものだ。

「いや、受け取ってほしい。あの毒?を取り出してもらえたことで、今、私がどれほど楽に息ができていることか。貴女は、苦しかったことだろう。」

「私の方こそ、命を救って頂きました。」

 リュシルは、にこ、と笑った。シリルは思わず見惚れてしまい、そんな自分に驚く。

「そう、私は、毒を盛られている。学園に入学してからは、毎日のように。毒見をした侍従が三人、倒れて帰って来ない。遅効性のものや軽いものは、毒見をしてもらっても気付かず、取り込んでいたようだ。護衛騎士も、すぐに辞めてマクシムしか残っていない。二人とも、少々、おかしくなっていたようだ。」

「殿下。私は一度、実家に戻り、兄に相談しようかと思います。考えてみれば、始めからおかしかったのです。私も他の二人も、騎士学校を卒業してすぐに殿下の護衛になった。新人三人など、あり得ない体制です。侍従も、やけに若い者たちの上、毒見の時の様子もおかしかった。回復したのかどうかも報告がない上、補充が一向に来ない。明日は、学園はお休みの日です。もう今すぐに動き始めます。お二人は、明日一日このお部屋からお出になりませんよう。護衛騎士は、心当たりの信用できる者を早急に手配します。侍従は、専門外ですので、少しお時間を頂きたい。まずは、今夜の護衛と明日の食事の手配を致します。」
 
 てきぱきとマクシムは言い、食べ終えたお皿などをワゴンに乗せて出ていこうとする。

「ベルナール様。殿下の侍従、というのは、侍女ではいけませんか?」

 慌ててリュシルの声が飛んだ。

「私は、学園の卒業後には、どこかのお屋敷で侍女として雇ってもらえないかと、エマから侍女の仕事を少しずつ習っておりました。回復すれば、朝から夜まで目も見えますので、殿下の食事の毒に、誰より早く気付くことができます。」

「それは、願ってもない申し出だが、学園での授業はどうする?」

「授業中も殿下のお側にいられるのですから、勉強はできます。昼食もお給金として食べさせて頂ければ、文無しの私には最高の環境です。」

「そうか。お互いに良いな。マクシム、どうだ?」

 シリルは、嬉しそうに笑う。マクシムは、申し訳無さそうに眉を下げた。

「殿下。お二人は年が近すぎるので、無理かと……。」

 がっかりしてしまった二人を置いて、マクシムはとりあえず、ワゴンを押して部屋を出た。

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