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45 使用人の子
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私の子が王の子?
シャルルは、しばらく呆然とその言葉の意味を考えていた。
「私は貴女の子ですが、私の父は陛下ではない。私は、王の子ではありませんよ?」
「おかしなことを言うのね、シャルル。私は王妃なのですから、私の子が王の子なのです。」
「違います。違います、母上。貴女は、陛下と婚姻されましたか?」
「いいえ。あの方が、妻は生涯ただ一人、などと我が儘を言われるものですから、婚姻しておりませんわ。」
「……?」
「王妃でなくては生きていけないと言うのなら、王妃という役職を与える、給金も与える、職を全うなされよ。退職したくなったら早めに言ってほしい、とあの方は仰った。」
「……婚姻されていないなら何故、私は生まれたのです?私の父はどこに?」
「知らないわ、そんなこと。」
「え?」
その声は、その場にいた全員から漏れたのではないだろうか。全員が、目を見開いて王妃を見た。
「……先日、学園で閨教育を受けました。婚姻して、愛し合う行為をしたら子どもができるのだと教わりました。」
「婚姻していなくとも、愛し合わなくとも、行為をしたら生まれますよ?」
「その、行為をした相手はどなたなのです?」
「さあ?色味を合わせればよい、と父上が寄越した方です。私は目隠しをされておりましたし、分かるわけありません。」
そこにいたのは、言ってみれば子どもたちばかりであったので、王妃の話は、よく意味は分からなかった。けれど、何かとんでもない話が行われているのだろうということだけは分かった。
書記官の耳にしっかりと届いていれば、書き留められて、誰かが判断してくれるだろう。マクシムはそう思い、書記官を呼んだ判断は正しかったと胸を撫で下ろした。
「……つまり、私はどこの誰とも知れぬ者の子であるのに、王子として育てられていたということか。」
「シャルル。」
シリルの声は届いていないようだ。シャルルは肩を落とし、小さな声で呟いた。
「この罪を、どう償えば……。」
「知らなかった子どもに、何の罪があろうか、シャルル。」
シリルはシャルルの肩に手を置いて声を張った。
「償わなければいけないのは、あの女だ。そなたを王の子と詐称し、私と私の父と母を苦しめた、あの女だ。」
「あに……、シリル殿下。」
自分の立ち位置を見失い、シャルルは視線をさ迷わせる。予想もしていなかった。母の罪を聞く覚悟をしてきたつもりであった。覚悟が足りなかったのだろうか。
私は、何なのだろう。
「シャルル。」
王妃に呼ばれて、びくりとシャルルは肩を震わせた。怯えた視線を向ける。
「貴方は、私の子です。王妃の子が王宮で暮らして何がおかしいというの?」
シャルルは力なく首を振った。
「おかしいのは、貴女だ。王妃という役職の方が王宮に住むのはあるかもしれないが、その子はそこに住むべきでない。もし住むとしても、使用人の子として育てなければならない。王の子などと、なんという大きな嘘を……。」
青い顔でがっくりと俯く。病み上がりのシャルルには、そろそろ限界だった。精神的なショックも大きい。
「シャルル様。大丈夫ですか?」
マクシムが跪いて、様子を伺う。
「ああ、すみません……。」
シャルルは、どんな立ち位置で人に接したらよいのか分からず、溜め息をついた。
「シャルルの具合が悪くなったようなので、私たちはこれで失礼する。」
シリルが立ち上がり、リュシルはあまり減っていない紅茶を机から片付けた。
そのまま、なにも言わずに部屋を出ようとするシリルに女の声がかかる。
「わたくしも、わたくしの部屋へかえろうと思うのですけれど。ここの侍女は、躾がなっていなくて、色々と不自由しておりますの。」
シリルも、シャルルも、シャルルの車椅子を押すマクシムも、リュシルも。誰もその声には返事もせず、振り返りもせず、胸に重たい石でも飲み込んだかのような気分で部屋を出ていった。
シャルルは、しばらく呆然とその言葉の意味を考えていた。
「私は貴女の子ですが、私の父は陛下ではない。私は、王の子ではありませんよ?」
「おかしなことを言うのね、シャルル。私は王妃なのですから、私の子が王の子なのです。」
「違います。違います、母上。貴女は、陛下と婚姻されましたか?」
「いいえ。あの方が、妻は生涯ただ一人、などと我が儘を言われるものですから、婚姻しておりませんわ。」
「……?」
「王妃でなくては生きていけないと言うのなら、王妃という役職を与える、給金も与える、職を全うなされよ。退職したくなったら早めに言ってほしい、とあの方は仰った。」
「……婚姻されていないなら何故、私は生まれたのです?私の父はどこに?」
「知らないわ、そんなこと。」
「え?」
その声は、その場にいた全員から漏れたのではないだろうか。全員が、目を見開いて王妃を見た。
「……先日、学園で閨教育を受けました。婚姻して、愛し合う行為をしたら子どもができるのだと教わりました。」
「婚姻していなくとも、愛し合わなくとも、行為をしたら生まれますよ?」
「その、行為をした相手はどなたなのです?」
「さあ?色味を合わせればよい、と父上が寄越した方です。私は目隠しをされておりましたし、分かるわけありません。」
そこにいたのは、言ってみれば子どもたちばかりであったので、王妃の話は、よく意味は分からなかった。けれど、何かとんでもない話が行われているのだろうということだけは分かった。
書記官の耳にしっかりと届いていれば、書き留められて、誰かが判断してくれるだろう。マクシムはそう思い、書記官を呼んだ判断は正しかったと胸を撫で下ろした。
「……つまり、私はどこの誰とも知れぬ者の子であるのに、王子として育てられていたということか。」
「シャルル。」
シリルの声は届いていないようだ。シャルルは肩を落とし、小さな声で呟いた。
「この罪を、どう償えば……。」
「知らなかった子どもに、何の罪があろうか、シャルル。」
シリルはシャルルの肩に手を置いて声を張った。
「償わなければいけないのは、あの女だ。そなたを王の子と詐称し、私と私の父と母を苦しめた、あの女だ。」
「あに……、シリル殿下。」
自分の立ち位置を見失い、シャルルは視線をさ迷わせる。予想もしていなかった。母の罪を聞く覚悟をしてきたつもりであった。覚悟が足りなかったのだろうか。
私は、何なのだろう。
「シャルル。」
王妃に呼ばれて、びくりとシャルルは肩を震わせた。怯えた視線を向ける。
「貴方は、私の子です。王妃の子が王宮で暮らして何がおかしいというの?」
シャルルは力なく首を振った。
「おかしいのは、貴女だ。王妃という役職の方が王宮に住むのはあるかもしれないが、その子はそこに住むべきでない。もし住むとしても、使用人の子として育てなければならない。王の子などと、なんという大きな嘘を……。」
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そのまま、なにも言わずに部屋を出ようとするシリルに女の声がかかる。
「わたくしも、わたくしの部屋へかえろうと思うのですけれど。ここの侍女は、躾がなっていなくて、色々と不自由しておりますの。」
シリルも、シャルルも、シャルルの車椅子を押すマクシムも、リュシルも。誰もその声には返事もせず、振り返りもせず、胸に重たい石でも飲み込んだかのような気分で部屋を出ていった。
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