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第三章 幸せの行方
23 赤璃 7
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良い!
結婚とは、一番好きな人と、これから先の人生を共に生きる誓い。なんて素敵な誓いだろう。
朱実に会いたくなった。とっとと終わらせよう。成人の顔色も悪すぎるしね。
「おだまり! 贄の分際で立場も弁えず、何を世迷い事を。子も成せぬ癖に、贄の仕事を放棄して二条家を潰した疫病神が!」
初花の台詞が終わる前に、三条の護衛三人が吹っ飛んだ。初花を守ろうとして飛ばされたのか、動けもしないうちに飛ばされたのか。誰がやったのかも、全く分からなかった。素知らぬ顔で、全員元の位置にいるのだから。
面倒臭いことになった。初花の命を守れる自信が無いわ……。
「ごきげんよう。なる、退院したのね。まだ顔色が悪いわ。早く部屋に入りましょう」
そう声を掛けながら、緋色に近付く。緋色も目の下に隈がある。
「二人でお昼寝してらっしゃい」
背中を押すと、素直に玄関へ向かって歩き出した。力丸は掴まえておく。三条の護衛を回収してもらわなくちゃ。この子が、最低一人は飛ばしてるに違いないんだから。……見えなかったけど。
「乙羽。お相手、ご苦労様。素敵な誓いの言葉を教えてくれてありがとう。私、朱実殿下に会いたくなったわ。後で誓いを立てるつもり。今日はもう、常陸丸と一緒に休んだらどう?」
常陸丸に抱かれて立ち尽くす乙羽に声をかける。
「なるが、」
「うん」
「なるが、教えてくれたから。私には、常陸丸との誓いより大事なものなんて無いって」
「うん」
「それを守れないなら、他のことはもう仕方ないって」
「なるは正しい。それを守った乙羽も偉い」
にこり、と笑ってみせると、つられて薄く笑ってくれた。よし、大丈夫。常陸丸を見ると、頷いて抱き上げ、帰っていく。
後には、呆然と立ち尽くす三条初花だけ。
「……わたくしは、何も間違っていない」
震えながらも声を出せるその胆力は認めるわ。
緋椀が、護衛を一人回収して引き摺って来た。
「ご苦労様」
「ああ」
「力丸も回収してらっしゃい」
初花の言葉をこれ以上聞かせたら、攻撃しそうになる力丸を止めきれないからね。初花が、引いてくれたらいいのだけれど。
私の心の声は届かず、初花は震える声で話し続ける。
「わたくしは、緋色殿下を一番好きなのだから、誓いを立てることができる。何の問題も無いわ」
「一人で誓いは立てられない」
「あんな、あんな壊れた人形で誤魔化そうと……」
「宝物のように、大切に抱えていたのが見えなかったかしら?」
「わたくしが、三条初花が、緋色殿下を好きなのよ。誰よりも愛している。誰よりも、身分も年齢も何もかも合う」
「貴女が好きになるのは自由だわ。けれど誓いを立てるには、相手にも同じだけ気持ちをもらわなければできない。自分が一番好きな人が、自分を一番好きでいてくれる確率なんて、とても少ない。もしそうなら、それはもう奇跡。とても幸運なこと。そんな奇跡を前に、身分も年齢も性別すらも些細なことよ!」
結婚とは、一番好きな人と、これから先の人生を共に生きる誓い。なんて素敵な誓いだろう。
朱実に会いたくなった。とっとと終わらせよう。成人の顔色も悪すぎるしね。
「おだまり! 贄の分際で立場も弁えず、何を世迷い事を。子も成せぬ癖に、贄の仕事を放棄して二条家を潰した疫病神が!」
初花の台詞が終わる前に、三条の護衛三人が吹っ飛んだ。初花を守ろうとして飛ばされたのか、動けもしないうちに飛ばされたのか。誰がやったのかも、全く分からなかった。素知らぬ顔で、全員元の位置にいるのだから。
面倒臭いことになった。初花の命を守れる自信が無いわ……。
「ごきげんよう。なる、退院したのね。まだ顔色が悪いわ。早く部屋に入りましょう」
そう声を掛けながら、緋色に近付く。緋色も目の下に隈がある。
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背中を押すと、素直に玄関へ向かって歩き出した。力丸は掴まえておく。三条の護衛を回収してもらわなくちゃ。この子が、最低一人は飛ばしてるに違いないんだから。……見えなかったけど。
「乙羽。お相手、ご苦労様。素敵な誓いの言葉を教えてくれてありがとう。私、朱実殿下に会いたくなったわ。後で誓いを立てるつもり。今日はもう、常陸丸と一緒に休んだらどう?」
常陸丸に抱かれて立ち尽くす乙羽に声をかける。
「なるが、」
「うん」
「なるが、教えてくれたから。私には、常陸丸との誓いより大事なものなんて無いって」
「うん」
「それを守れないなら、他のことはもう仕方ないって」
「なるは正しい。それを守った乙羽も偉い」
にこり、と笑ってみせると、つられて薄く笑ってくれた。よし、大丈夫。常陸丸を見ると、頷いて抱き上げ、帰っていく。
後には、呆然と立ち尽くす三条初花だけ。
「……わたくしは、何も間違っていない」
震えながらも声を出せるその胆力は認めるわ。
緋椀が、護衛を一人回収して引き摺って来た。
「ご苦労様」
「ああ」
「力丸も回収してらっしゃい」
初花の言葉をこれ以上聞かせたら、攻撃しそうになる力丸を止めきれないからね。初花が、引いてくれたらいいのだけれど。
私の心の声は届かず、初花は震える声で話し続ける。
「わたくしは、緋色殿下を一番好きなのだから、誓いを立てることができる。何の問題も無いわ」
「一人で誓いは立てられない」
「あんな、あんな壊れた人形で誤魔化そうと……」
「宝物のように、大切に抱えていたのが見えなかったかしら?」
「わたくしが、三条初花が、緋色殿下を好きなのよ。誰よりも愛している。誰よりも、身分も年齢も何もかも合う」
「貴女が好きになるのは自由だわ。けれど誓いを立てるには、相手にも同じだけ気持ちをもらわなければできない。自分が一番好きな人が、自分を一番好きでいてくれる確率なんて、とても少ない。もしそうなら、それはもう奇跡。とても幸運なこと。そんな奇跡を前に、身分も年齢も性別すらも些細なことよ!」
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