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第三章 幸せの行方
74 赤璃 9
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気になるなら、自分で行けばいいのに。
そう思いながら、皇妃殿下の部屋の扉をノックする。返事もなく、すぐに扉は開いた。誰がこちらに向かっているかは、優秀な使用人達が把握しているのだろう。
皇妃殿下の楽しげな声がする。ここ一年ほどは、病状も落ち着いていらしたが、それでも、ここまででは無かった。最近、急に以前の明るさを取り戻されている。
「失礼します。私も少しお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、赤璃さん。」
「ありがとうございます。」
礼をして入った部屋の中では、荘重が寝てしまった成人を抱いて、口のなかに何も残っていないか確かめ、口の回りをそっと布巾で拭って、布団へ置いていた。成人は、最高級の敷布を掛けた肌触りの良さそうな布団の上で、幸せそうに寝息をたてはじめる。
「疲れちゃったのね。なるひとちゃんが、アイスクリームを残すなんて。」
「朝から、仕事とか言ってバタバタしてるからですよ。体力無いくせに。」
「お仕事してるのね。偉いねえ。」
「俺が、買い物に行こうとか余計なことを言ったから、お金がいると思ったみたいで…。」
「何も、余計なことじゃないわ。いいことじゃない。力丸ちゃんのお陰で、色んな事を知っていけるのよ。」
「でも、その、色々あって……。子どもなのに、病気なのに、仕事しなくても買ってやるのに…。」
「やりたいことができたのは、良いことだと思うわ。疲れても、寝たらいいんだから、大丈夫。」
「はい……。」
たぶん、皇妃殿下は、成人が買い物を知らない事や、力丸と色々あったことなどの事の顛末をご存知なのだろう。力丸の拙い説明にも、特に首を傾げることなく言葉を紡いでいらっしゃる。
「だいぶお金が貯まったらしいから、そろそろ一緒に買い物に行こうと思っています。」
「いいわね。何処へ行くの?」
「駄菓子屋と雑貨屋です。成人、飴が好きだから、いっぱい売ってるのを見たら喜ぶかなって。後は、宝箱買いに雑貨屋へ。大切なものを入れとく箱があるといいと思って。今は、大事なのは緋色殿下の指輪だけだから、ずっと付けてるから、箱はいらないみたいだけど、きっと今から増えると思うんですよね。飴も隠したいらしいし。」
「素敵ねえ。力丸ちゃんは、良い子ね。きっとそれは、必要になるわ。」
皇妃殿下の誉め言葉に、力丸が照れくさそうに笑った。
「私も、お買い物に一緒に行こうかな。行く日が決まったら教えてね。」
アイスクリームを堪能していたらしい乙羽が、ふと力丸に告げる。あ、うん、と頷く力丸に、皇妃殿下が良い笑顔で言った。
「私も行くわ。教えてね。」
流石に目を丸くした力丸だが、一拍置いて頷いた。とんでもない面子で出掛けることになってしまったようである。
その後の雑談に付き合って、よく寝ている成人はそのままに、乙羽と力丸と一緒に部屋を辞した。
そう思いながら、皇妃殿下の部屋の扉をノックする。返事もなく、すぐに扉は開いた。誰がこちらに向かっているかは、優秀な使用人達が把握しているのだろう。
皇妃殿下の楽しげな声がする。ここ一年ほどは、病状も落ち着いていらしたが、それでも、ここまででは無かった。最近、急に以前の明るさを取り戻されている。
「失礼します。私も少しお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、赤璃さん。」
「ありがとうございます。」
礼をして入った部屋の中では、荘重が寝てしまった成人を抱いて、口のなかに何も残っていないか確かめ、口の回りをそっと布巾で拭って、布団へ置いていた。成人は、最高級の敷布を掛けた肌触りの良さそうな布団の上で、幸せそうに寝息をたてはじめる。
「疲れちゃったのね。なるひとちゃんが、アイスクリームを残すなんて。」
「朝から、仕事とか言ってバタバタしてるからですよ。体力無いくせに。」
「お仕事してるのね。偉いねえ。」
「俺が、買い物に行こうとか余計なことを言ったから、お金がいると思ったみたいで…。」
「何も、余計なことじゃないわ。いいことじゃない。力丸ちゃんのお陰で、色んな事を知っていけるのよ。」
「でも、その、色々あって……。子どもなのに、病気なのに、仕事しなくても買ってやるのに…。」
「やりたいことができたのは、良いことだと思うわ。疲れても、寝たらいいんだから、大丈夫。」
「はい……。」
たぶん、皇妃殿下は、成人が買い物を知らない事や、力丸と色々あったことなどの事の顛末をご存知なのだろう。力丸の拙い説明にも、特に首を傾げることなく言葉を紡いでいらっしゃる。
「だいぶお金が貯まったらしいから、そろそろ一緒に買い物に行こうと思っています。」
「いいわね。何処へ行くの?」
「駄菓子屋と雑貨屋です。成人、飴が好きだから、いっぱい売ってるのを見たら喜ぶかなって。後は、宝箱買いに雑貨屋へ。大切なものを入れとく箱があるといいと思って。今は、大事なのは緋色殿下の指輪だけだから、ずっと付けてるから、箱はいらないみたいだけど、きっと今から増えると思うんですよね。飴も隠したいらしいし。」
「素敵ねえ。力丸ちゃんは、良い子ね。きっとそれは、必要になるわ。」
皇妃殿下の誉め言葉に、力丸が照れくさそうに笑った。
「私も、お買い物に一緒に行こうかな。行く日が決まったら教えてね。」
アイスクリームを堪能していたらしい乙羽が、ふと力丸に告げる。あ、うん、と頷く力丸に、皇妃殿下が良い笑顔で言った。
「私も行くわ。教えてね。」
流石に目を丸くした力丸だが、一拍置いて頷いた。とんでもない面子で出掛けることになってしまったようである。
その後の雑談に付き合って、よく寝ている成人はそのままに、乙羽と力丸と一緒に部屋を辞した。
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