【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

66 護衛とは何か  成人

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「そのように大切な女人にょにんであるなら尚更、しっかりと護らねばなりますまい」

 弐角にかく橙々だいだいが可愛い顔で笑っているから、俺もとっても幸せな気分になった。好き同士のお話は楽しい。何だか、にこにこしてしまう。
 そんな事思って二人を見ていたら、じいやが口を開いた。じいやが自分から話をするなんて珍しい。ああ、でも、俺がさっき弐角にかくに言った話だよね。橙々だいだいが大切な人なら、もっと強い護衛を付けた方がいいって。じいやも、気にしてくれてたんだ?ありがとう。
 頷いていると、じいやは俺へ向けて、にこりと笑った。
 そして瞬きの間に、じいやは橙々だいだいの首元に小刀を当てていた。
 俺は、素早く緋色ひいろの頭に覆いかぶさっていた。緋色ひいろは、俺に覆い隠されたまま、右手に銃を出して正面に構えている。左手は俺に回して、力がこもる。常陸丸ひたちまるは、その俺たちの前に出て座卓に足をかけ、銃でじいやを狙っている。じいやの代わりの一ノ瀬が、俺の横に立った。
 半助も移動して、壱臣いちおみを背中に庇える場所で膝立ちになり、左手には銃が持たれていた。もちろん銃口は、じいやに向けられている。
 才蔵は、弐角にかくを抱えて後ろに飛んだ。そうして距離を取ってから、両手の銃を後ろからじいやに向ける。すぐに起き上がった弐角にかくの右手にも、銃が握られていた。
 しん、とした室内。

「姫さま!!」

 橙々だいだいの護衛の椿つばきが叫んだのは、その後。まだ立ち上がっただけ。

「あ、あ、ああ......」

 橙々だいだいが事態に気付いて、がたがたと震え始める。橙々だいだいも、少しは鍛えているんだな。だから余計に、椿あれでもいいと思ったんだろうか。
 侍女のしま壱臣いちおみは、ぽかんと口を開けている。それは、いい。仕方ない。二人は、それが仕事じゃないから。

「ほらね。大事な橙々だいだいが死んじゃう」

 俺は、緋色ひいろの頭を隠したまま、弐角にかくを振り返った。

「ええ、はい」
「わ、若様......」
椿つばき。護衛ごっこはしまいや。俺が、ちゃんとせなあかんかった。すまんな」
「そ、そんな......。私は、姫さまを守るために、鍛えて、鍛えて......」
「守れんかったなあ」

 命を握られて、かたかたと震える橙々だいだいに、近寄ることもできない椿つばき

橙々だいだい椿つばきは鍛えてもこの程度や。侍女として教育し直した方がええ」
「に、さま......。でも、うちは......」
成人なるひとさまの忠告の意味は、まだ理解できぬか?」

 じいやが、橙々だいだいの耳元でそっと告げる。

「い、いえ。いいえ」

 じいやが本気だから、誰も銃を下ろさない。そして、じいやに弾が届く前に橙々だいだいの首はかき切られることを、護衛は皆知っている。
 向けられた銃は、自分の主を守るためのもので、橙々だいだいを守るためのものじゃないから。任せられた命以外の命の事まで、考えている余裕はない。だから今日は、橙々だいだいのことは椿つばきが守らなきゃいけなかった。
 橙々だいだいの答えに、じいやが刀を下ろす。

「温情を頂き、ありがとうございました」

 す、と弐角にかくがじいやに平伏して、才蔵もそれに倣う。しまも素早くその姿勢になり、橙々だいだいも崩れるように頭を下げた。最後に、唇をかみ締めた椿つばき
 俺は、むうとした顔の緋色ひいろに、ぐいと下ろされて、ごめんねと言いながら、頬にちゅっとした。
 
 
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