【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

38 どうぞ、ありがとう  成人

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 松吉まつきちと何回かやり取りしたお手紙で、誕生日会はどんなことをするのかを色々書いた。俺のお手紙で、鶴丸つるまる松吉まつちきも何をするか分かってくれたみたい。もちろん、手ぶらでもいいよって、緋色ひいろがいつも言っていることを書いておいたんだけど、鶴丸つるまるたちは、しっかりとプレゼントを準備してくれていた。

「どーぞ」
「ありあと」

 大きな箱を鶴丸つるまると一緒に持った亀吉かめきちが、末良すえよしにそれを差し出す。重たそう。表は、綺麗な包装紙に包まれていて何が入っているか分からない。末良すえよしが一人で持つのは無理だったので、横にいた広末ひろすえが一緒に受け取っていた。ちゃんと渡せた亀吉かめきちも、ちゃんとお礼を言って受け取った末良すえよしもたくさん褒められて、二人でにこにこと頷き合っていた。可愛い。
 末良すえよし、もらったものを返さなくなったね。どうぞって渡したら、ありがとうって頭を下げてから、またどうぞって品物が返ってくる時期もあったんだけど。今は、貸してって言っても、なかなかどうぞってしてくれない。これは末良すえよしのって言って握ったまま、渡してくれないんだ。ちょっと会わないだけで、出来ることとできない事がどんどん変わる。子どもって不思議だ。

「これ。すえーしの?」
「そうだぞ。大きいのもらったなあ。良かったなあ、末良すえよし鶴丸つるまるさま、亀吉かめきちさま、ありがとうございます」
「ええんよ。それな、うちの特産の木材で作った木の玩具やからちょっと重たいんやけど、使ってみて。楽しいと思うで。誕生日おめでとう、末良すえよし
「おめっとう」
「ありあと」

 一番大きな箱が気になったみたいで、末良すえよしがすぐに包装紙を破り始めた。びりびりびりって綺麗な包装紙が勢いよく破れていく。楽しそうだ。

「ああ、こら。そんな乱暴な」
「ええんよ、ええんよ。開けてみて」

 何が出てくるのか俺も気になるから、隣で座って一緒に見てた。
 箱の中に入ってたのは、動物の絵が描いてある木の玩具。積み木かな? でも、色んな形をしている。

「ぞう。なりゅしゃま、ぞう」
「本当だ。ぞうだ」

 末良すえよしも、俺と一緒でぞうが好き。ぞうを見つけて喜んでいる。ぞうの他に、さるもかばもとらもいる。ねずみとねこといぬも。くびが長いのはきりん。耳が長いのはうさぎ。あれ? これ、動物がちょっとだけおかしな形してると思ったら、パズルになってるんじゃない? 形を合わせて遊ぶ玩具。ぴったりはまると楽しいやつ。俺が青葉あおば力丸りきまるにもらって持っている紙の玩具が、木でできているんだ。すごい。これ、動物たちを積み上げて遊ぶこともできるなあ。

「かめのいっしょ」
「お。亀吉かめきちさまもおうちでこれで遊んでらっしゃるんですか?こりゃ楽しそうだ。良い品をありがとうございます」

 亀吉かめきちが、うんうんって頷く。そうか、亀吉かめきちも持ってるのか。いいねえ。

「可愛いし長く遊べる言うてな、うちの辺りでは子どもへの贈り物の定番なんや」
「積み木にしたり、動物を覚えたり、型はめしたりと色々できそうですね」

 末良すえよし亀吉かめきちは、箱の中身を引っくり返して一緒に動物を積み始めた。

「ありゃ、こんな所で」
「あと二人の人へのプレゼントも、亀吉かめきちが渡す予定やったんやけどなあ」

 仕方ない。こんな楽しい玩具をもらったら、すぐに遊びたくなるよね。分かるよ。
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