【R18 恋愛 OL 同居】年下イケメンの彼に毎日焦らされてます

utsugi

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藤澤君に八つ当たりしてしまう

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「葉月さん、荒井課長っていつもあんな感じなんですか?」

 藤澤君のマンションに帰ってリビングでぼんやりしながら紅茶を飲んでいると、藤澤君が帰ってきた。ソファに並んで座って少し世間話をした後で藤澤君が遠慮がちに尋ねてきた。荒井課長のセクハラ発言はやはり第三者が聞いても問題に思うレベルなのだろう。

「うーん、いつもってわけじゃないけど……」

 私が口ごもると藤澤君はいつもの子犬のような瞳で私を黙って見つめた後、黙って頭をぽんぽんと撫でてきた。予想外のことにすぐに反応できない。

「お疲れ様です」

「え?」

「ああいうの、なんか難しいですよね」

 藤澤君は言葉を選ぶように言った。

「荒井課長って根は悪い人じゃないしめちゃくちゃ頭は切れるから、上もお目こぼしっていうか……。昔から有名みたいですよ。気に入った女の子がいると歯止め効かなくなるっていうか」

「あはは……私はもう女の子って年じゃないけど」

 私がおどけて言ったにも関わらず、藤澤君は笑うことなくしかめ面をしたままだった。

「気をつけたほうがいいですよ」

「え?」

「荒井課長って、年の割に見た目、結構かっこいいでしょ? たぶん、若い頃かなりモテたと思いますよ。実は聞いたことがあるんです。前に荒井課長が他の課にいたとき同じようなことがあって、その部下の子は結局関係を……」

「やめてよ!」

 思いのほか大きな声が出た。

「すみません。いやあの、葉月さんがそうなるって言ってるんじゃなくて、あの人、女の人の扱いがすごく上手いから……」

「わかってる。上司のあんな発言くらいで動揺してたら、男の中で仕事なんかやってらんないよ」

 何をムキになっているんだろう。

「今までだってあんな人たくさんいた。いちいち騒いでいられないよ」

 年下の藤澤君に心配されたのが癪に障ったのか、上司からあんな風に発言されていることを知られて悔しかったのか自分でもよくわからなかったけれど、藤澤君とはもうこの話をしたくないと思った。

「ごめんね。この話はもうおしまいにしよう?」

 私はそう一方的に藤澤君に告げた。藤澤君はまだ何か言いたそうな様子だったが、私は無理やり話題を変えた。

「藤澤君は今日も残業だったんだね。藤澤君はさ、うちの会社の営業がなんていうか天職っていう感じ」

 藤澤君はソファから立ち上がるとキッチンのほうへ歩いて行った。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しながら、ネクタイを緩めて私の話を聞いている。私は話を続けた。

「藤澤君はさ、これからきっとどんどん出世してくよ、あっという間に。私なんかと違ってさ。できる営業マンだもん」

 藤澤君が社内で活躍する姿を目にする度に、自分の立場と比較してしまっている自分がいた。

 藤澤君は容貌にも能力にも恵まれて、仕事の上でも結果を出して評価されている。一方の私は毎日舞い込んでくる事務仕事を淡々と処理するだけ。上司にセクハラまがいの発言をされても曖昧に笑ってなあなあの毎日を続けている。

 藤澤君は静かに私の話を聞いていたが、グラスに注いだミネラルウォーターを一気に飲み干して言った。

「……葉月さんってそんなにできる人なのに、どうしてそんなに自信がなさそうなんですか?」

「え?」

「俺は葉月さんのそういうところ、謙虚で嫌いじゃないですけど、なんていうか、もったいないと思います」

 藤澤君の言葉にずきりと胸が痛んだ。

「っていうか、そういうの、俺みたいな鈍感野郎が相手ならいいですけど、人によったら嫌味にとられますよ。葉月さんみたいに仕事をほぼ完璧にこなせる人がそんな風に……」

 しばらく沈黙があった。藤澤君は黙っている私の様子を不思議に思ったのか、キッチンからこちらに向かって歩いてきた。

「……嫌味、か」

 私の言葉に藤澤君は困惑した表情を浮かべて足を止めた。

 今の言葉は間違いなく藤澤君のフォローだ。

 なのに彼の言葉を素直に受け取れない自分がいた。

「私の話は、人によったら聞いてて不愉快だってこと?」

 鼓動が早くなっていた。自分の口調が熱を帯びていくのがわかった。

「ちょ……待ってください、そういう意味じゃなくて」

「私だってね、愚痴りたいときだってあるの! なんで嫌味だなんて言われないといけないわけ?」

 今の自分は馬鹿みたいでみっともないと頭ではわかっていても、溢れてくる言葉を止めることができなかった。

「ちょ……葉月さん?」

 気がつくと涙を流していた。ヤバい、完全に情緒不安定な人みたい。私が泣いていることに気がついた藤澤君は、慌てた様子で私の隣に腰を下ろして頭を下げた。
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