【R18 恋愛 OL 同居】年下イケメンの彼に毎日焦らされてます

utsugi

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友人の結婚式

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次の週の金曜日、相変わらず私はデスクに向かい山のように届いたメールの仕分けをしていた。

 ……仕事、仕事、仕事。疲れていても、悩んでいても、毎日仕事は溜まっていく。

  定時後、藤澤君と同じ営業二課の木村さんがやって来た。先日の飲み会で少し話したときにリスクマネジメント関連の資料を借りたいと言われていたので、私は書棚から資料を探してきて木村さんに手渡した。

「ありがとう。助かるよ。あ、この間の飲み会、桑野さんは無事帰れた?」

「はい、お陰様で」

  何がお陰様なのかわからないが、社会人というのはこういうときなぜかお陰様でと言ってしまうものだ。

「南沢があんなになっちゃって冷や冷やしたよ」

「ああ……あの新人の子ですか?」

  南沢さんの話題が出るとは思っていなかったので、一瞬動揺したが素知らぬふりで話を合わせた。

「そうそう、その子。結局、藤澤が送っていったけどさ」

「そうなんですか……。お疲れ様でした」

  ボロを出さないように無難な相槌で押し通そうと私は心に決めた。

「それがさあ……、本当に誰にも言わないでほしいんだけど新人の女の子と藤澤がどうも怪しいんだよね」

 聞いた瞬間、頭がぐらりと揺れるほどの衝撃があったが顔には出さずにこらえた。誰にも言わないでほしいなんて言いながら大して親しくもない私にその内容を暴露してくるということは、恐らく誰にでも話しているのだろう。

「え、ああ、そうなんですか」

 そうそう、と木村さんは続けた。

「皆言ってんだよ、間違いなく南沢は藤澤を狙ってるって。あいつさ、俺たちがいるのに困ったとき何かと藤澤を呼ぶんだよ。見積がわかんないとか取引先との交渉が難しいとか言ってさ。藤澤も優しいから親切に世話してやってるし。ひょっとしてあいつもまんざらでもないのかな? ……なんか最近の子って見かけによらずグイグイいくよなあ」

 木村さんは面白くなさそうに言った。

「へえ……」

「入社した時は彼氏がいたらしいんだけど別れちゃったらしくて、皆で励ましてやったりしたんだけど。若い子って切り替えが早いよねえ?」

「……まあ私も新入社員のとき、先輩がすごくかっこよく見えたりしましたから」
 
私は作り笑顔のまま、無難に返答した。

「やっぱりそういうものなのかなあ。ましてやあの藤澤だもんなあ」

「そうですね(ソウデスネー)」

  何と答えたらよいかわからないときは『ソウデスネー』と返してしまうようになってから何年が経っただろう。社会人になってから覚えた省エネ戦術である。

「その点桑野さんは偉いよね、会社に男漁りに来てるって感じじゃないもんね」

「そうですね(ソウデスネー)」

どういう意味だよと思いながら私は愛想笑いを浮かべていた。






  木村さんから南沢さんとの話を聞いてもやもやした気持ちのまま、翌日の土曜日、私は大学時代の友人の結婚式に出席していた。

  二次会まで参加した後藤澤君の部屋に行く予定だったけれど、今日は意地を張らずにちゃんと可愛く甘えることができるか自信がなかった。

  今日の結婚式の新婦は大学時代同じサークルだった子で、会うのは久しぶりだった。オフホワイトのウェディングドレスは新婦によく似あっていてとても素敵だった。料理も美味しくて、久しぶりに昔の仲間にも会えて楽しい一日を過ごすことができた。

  このくらいの年になって友人の結婚式に参加すると、自分の結婚式についても考えずにはいられない。二十代半ば頃までは無邪気に自分の結婚式ではドレスはどんな色で、音楽はどれにして、なんて色々シミュレーションしたものだが、五回、六回と出席するうちに、とりあえず料理は美味しいところがいいな、くらいの感想しか抱かなくなっていた。

  最近考えるのはむしろ結婚式そのものの実現の可能性である。

 藤澤君と結婚……あるのかなあ。普段なら妄想に浸っていたかもしれないけれど、南沢さんのことがあって、今はとてもそんな気持ちになれなかった。

「お、葉月、久しぶり!」

  披露宴と二次会が終わり会場を後にしようとしていた私に声を掛けてきたのは、大学時代同じサークルの同級生だった高橋君だった。

「やだ、すごい久しぶり!」
 
  高橋君に会うのは何年振りだろう。三年ほど前に他の友人の結婚式で会ったのが最後だったと思う。高価そうなスーツに身を包んでいたせいもあり学生時代よりも随分大人びて見えた。

「元気だった? 最近どうしてる?」

「どうもこうも、毎日仕事ばっかりしてる」

  私は自嘲ぎみに言った。少し世間話をした後で高橋君が言った。

「どう? せっかくだし、この後少しだけ近くで飲んでいかない?」

  そう言われて一瞬返答を躊躇った。藤澤君と付き合い始めてから、男の人に誘われたのは初めてだったからだ。断るべきだろうか。目の前の高橋君は『当然行くでしょ?』とでも言いたそうな表情を浮かべてニコニコしている。特別下心がありそうには見えなかった。

「うん、いいね」

  せっかく三年振りに懐かしい友人に会えたのだからもっと話したいという気持ちがあった。藤澤君には『少しだけ遅れます』と連絡しておいた。



    
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