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真相
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課の人たちには先に帰ると伝えて私と成瀬君は店の外で落ち合った。
近場の適当な店に入る。成瀬君は会社の人がいないかきょろきょろと周囲を確認している。……かなりナーバスになってるみたい。
「なんていうか……ちょっと色々状況がわからなかったんだけど、大丈夫?」
私は尋ねた。
「ああ……うん」
成瀬君は茫然自失といった様子で答えた。
「あれって逆セクハラじゃない?」
「まあ……どうなんだろ、うん」
成瀬君の声に覇気がない。さっきのことでかなりまいっているみたい。
「実は前からちょっとぐいぐい来られててさ」
え? そうなの? なんかウワサで聞いてる話を違うんですけど……?
「あ、もしかして例の噂とか聞いちゃってたりする? 『俺じゃダメですか?』とか言って俺が松本さんに告ったってやつ」
「え……あ、うん」
私は遠慮がちに頷いた。成瀬君、自分がウワサになってたの知ってたんだ。
「あれは嘘でさ、松本さんが俺に好意を持ってるのを知った神木先輩が松本さんをかばうみたいに流してるウワサみたい。俺の方が松本さんを追いかけてるって……」
「そんな……」
あの神木先輩がそんなことをするなんて信じられなかったけど、先ほどの二人のやり取りを見ていたら成瀬君の言うことのほうが真実であるのは間違いないように思えた。
つまり成瀬君が松本さんを好きでフラれたわけじゃなくて、本当は松本さんのほうが成瀬君を好きでフラれたってこと?
「あ、七海ちゃん的には嫌だよな? こういう……神木先輩の悪口を暴露するみたいなの」
成瀬君ってばこんな時まで私のことを気遣わなくていいのに。
「いやでも悪口っていうか、それが事実なんでしょ?」
「まあそうなんだけど……。信じてもらえるかわからないし」
「信じるよ! 信じるに決まってる! さっきあんな場面も見ちゃってるし」
だけど確かに実際にああいう2人のやり取りを見ていない人にとってはにわかに信じがたいことかもしれない。松本さんは美人で親切な大人しい人のイメージしかないし、成瀬君はイケメンでモテるから若干チャラそうなイメージ(失礼)がある。
神木先輩も真面目で誠実なイメージだし、ウワサだけを聞いたらみんながどちらの言い分を信じるかは微妙なところだ。
「ウワサは別にいいんだ。フラれたとか言われても別に気にしないし。だけど今日みたいなのは正直マジで困るし焦る」
そう言って成瀬君は深いため息をつくとうなだれた。
「ああいうのほんとビビるよ。今日は七海ちゃんが見ててくれたから良かったけど目撃者がいなくて俺の方がセクハラしただの無理やりキスしただの言われたらもうたまんないよ」
成瀬君が心の底から参っているのが伝わってきた。なんていうか……イケメンっていうのも大変なんだなぁ。
「それにしても松本さん、成瀬君のことをまだあんなに好きなのにどうして神木先輩と婚約なんてしたのかな?」
正直、私にはさっぱり理解できなかった。
てゆーかさっき無理やりチューしてたよね? しかもベロチューだよ? 浮気だよね? 浮気だよ?!
神木先輩も成瀬君の嘘のウワサを流すくらいだから2人のことを知っていてそれでもいいと思って婚約したってことだよね? 一体どういうことなんだろう? なにもかもがさっぱりわからない。
「なんでだろうね」
成瀬君が言う。もちろん成瀬君にもわからないのだろう。
「あーでも七海ちゃん的にはごめんな。俺が松本さんと付き合えば神木先輩と七海ちゃんが付き合える可能性、ワンチャンあったかもしんないのにな」
「え? あ、ああ……そうね」
成瀬君からそう言われてそんなことを考えもしていなかった私は間の抜けた返事をしてしまった。たしかにそう言えばそうか。
でも正直神木先輩が成瀬君のウワサを流したってことが衝撃的すぎて以前までの恋心がすっかりどこかへ行ってしまった感じがしてる。
とは言え『ワンチャン』って可能性低くない? 成瀬君ってば私の女子力をあなどりすぎでは?
近場の適当な店に入る。成瀬君は会社の人がいないかきょろきょろと周囲を確認している。……かなりナーバスになってるみたい。
「なんていうか……ちょっと色々状況がわからなかったんだけど、大丈夫?」
私は尋ねた。
「ああ……うん」
成瀬君は茫然自失といった様子で答えた。
「あれって逆セクハラじゃない?」
「まあ……どうなんだろ、うん」
成瀬君の声に覇気がない。さっきのことでかなりまいっているみたい。
「実は前からちょっとぐいぐい来られててさ」
え? そうなの? なんかウワサで聞いてる話を違うんですけど……?
「あ、もしかして例の噂とか聞いちゃってたりする? 『俺じゃダメですか?』とか言って俺が松本さんに告ったってやつ」
「え……あ、うん」
私は遠慮がちに頷いた。成瀬君、自分がウワサになってたの知ってたんだ。
「あれは嘘でさ、松本さんが俺に好意を持ってるのを知った神木先輩が松本さんをかばうみたいに流してるウワサみたい。俺の方が松本さんを追いかけてるって……」
「そんな……」
あの神木先輩がそんなことをするなんて信じられなかったけど、先ほどの二人のやり取りを見ていたら成瀬君の言うことのほうが真実であるのは間違いないように思えた。
つまり成瀬君が松本さんを好きでフラれたわけじゃなくて、本当は松本さんのほうが成瀬君を好きでフラれたってこと?
「あ、七海ちゃん的には嫌だよな? こういう……神木先輩の悪口を暴露するみたいなの」
成瀬君ってばこんな時まで私のことを気遣わなくていいのに。
「いやでも悪口っていうか、それが事実なんでしょ?」
「まあそうなんだけど……。信じてもらえるかわからないし」
「信じるよ! 信じるに決まってる! さっきあんな場面も見ちゃってるし」
だけど確かに実際にああいう2人のやり取りを見ていない人にとってはにわかに信じがたいことかもしれない。松本さんは美人で親切な大人しい人のイメージしかないし、成瀬君はイケメンでモテるから若干チャラそうなイメージ(失礼)がある。
神木先輩も真面目で誠実なイメージだし、ウワサだけを聞いたらみんながどちらの言い分を信じるかは微妙なところだ。
「ウワサは別にいいんだ。フラれたとか言われても別に気にしないし。だけど今日みたいなのは正直マジで困るし焦る」
そう言って成瀬君は深いため息をつくとうなだれた。
「ああいうのほんとビビるよ。今日は七海ちゃんが見ててくれたから良かったけど目撃者がいなくて俺の方がセクハラしただの無理やりキスしただの言われたらもうたまんないよ」
成瀬君が心の底から参っているのが伝わってきた。なんていうか……イケメンっていうのも大変なんだなぁ。
「それにしても松本さん、成瀬君のことをまだあんなに好きなのにどうして神木先輩と婚約なんてしたのかな?」
正直、私にはさっぱり理解できなかった。
てゆーかさっき無理やりチューしてたよね? しかもベロチューだよ? 浮気だよね? 浮気だよ?!
神木先輩も成瀬君の嘘のウワサを流すくらいだから2人のことを知っていてそれでもいいと思って婚約したってことだよね? 一体どういうことなんだろう? なにもかもがさっぱりわからない。
「なんでだろうね」
成瀬君が言う。もちろん成瀬君にもわからないのだろう。
「あーでも七海ちゃん的にはごめんな。俺が松本さんと付き合えば神木先輩と七海ちゃんが付き合える可能性、ワンチャンあったかもしんないのにな」
「え? あ、ああ……そうね」
成瀬君からそう言われてそんなことを考えもしていなかった私は間の抜けた返事をしてしまった。たしかにそう言えばそうか。
でも正直神木先輩が成瀬君のウワサを流したってことが衝撃的すぎて以前までの恋心がすっかりどこかへ行ってしまった感じがしてる。
とは言え『ワンチャン』って可能性低くない? 成瀬君ってば私の女子力をあなどりすぎでは?
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