皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか?

高井繭来

文字の大きさ
45 / 284
第2章

【番外】魔王side6~デート編エピローグ~

しおりを挟む
 イヤーカフを買ったあと、屋台で軽食をつまみながらリコリスと魔王は街を探索する。
 それぞれの耳に付けられたイヤーカフは相手の色を纏っている。
 その事に幸せを感じながら、手を繋ぐことでお互いの体温を共有しあう事に幸せを感じる。

「魔王、この後どうしますか?王宮に戻って夕食を食べますか?」

「いや、最後に行きたいところがある」

「ではソコに連れて行って下さい」

「少し空間を飛ぶぞ」

 【ゲート】が開かれる。
 それを手を繋いだままくぐる。

 【ゲート】の先には一面の花畑。
 真珠のような白い花。
 その花が咲き乱れていた。
 花は花弁と同じ色の光の粒子を放っていた。
 それが宙にふわりふわりと浮いている。

「夜が早い時期で良かった。この花は昼間見ても美しいが、夜の中で光を放つさまはもっと美しい。お前にコレを見せたかった」

 リコリスが魔国に来て1ヵ月。
 魔王と出会って4ヵ月。
 
 出会った頃は太陽が沈むのは遅くになってからだった。
 今では夕刻には暗くなっている。
 ちょうど花の見時に良かった訳だ。

 リコリスは見たことないので分からなかったが、まるで白い蛍が飛んでいるようだった。

「凄く、綺麗です!!」

 リコリスの目はうっとりと細められている。
 いつもの無邪気な目ではない。
 子供の目ではなく少女の目だった。

「そこに座るぞ」

 魔王は大きの木の下に何処から出したのか高級な絨毯を敷く。
 おそらく収納魔術で出したのだろう。
 攻撃と強化魔術しか使えないリコリスには空間魔術を使えるのは羨ましい限りである。

「座れ、今食事の用意をする」

 収納魔術で絨毯の上に出されたのは飲茶のセットだ。
 
「魔王は飲茶も出来たのですか?」

「恥を忍んで司書に教えてもらった」

「司書さんの飲茶美味しいですもんね!」

「恋人の前で他の男を褒めるのは良くないぞ」

 蒸籠を出しながら魔王は少しだけむくれたようだ。
 子供が拗ねているようで少し可愛いとリコリスは思った。
 同時に胸が何時ものポカポカではなくトクトクと優しくリズムを刻む。

「魔王以上の男なんて存在しません…」

 イヤーカフを指で触りながらリコリスが頬を染めた。

「さぁ好きなだけ食べていいぞ?」

 魔王がリコリスの腕を引き己の腕の中に収める。
 逞しい体の力強さと、その暖かな体温でリコリスは体が緊張するのが分かった。

「緊張しなくて良い。いつも通り美味しそうに食べてくれ」

 魔王の声は優しい。
 声だけじゃない。
 視線も、触れる指先も何もかもが優しい。

 その優しさにリコリスは緊張を解く。
 魔王は自らの足の上にリコリスを座らせて、王宮を出る前に作った点心をリコリスに食べさせていく。

 餃子・肉まん・小籠包・春巻き
 胡麻団子・桃饅頭・杏仁豆腐

 どれもリコリスの好物だ。

「どうだ?」

「とても美味しいです!魔王は何でも出来るのですね!」

 無邪気にリコリスが笑顔を浮かべる。
 本当に美味しいモノに目がない様だ。

「何でも出来る?いや、我は好きな女1人口説けない無能だぞ?」

「ほぇっ!?」

 思わず飲んでいたジャスミンティーを吹き出しそうになる。
 
 魔王を見つめると欲の熱が籠った目でリコリスを見ていた。

「今日は、触れてよいか…?」

「魔王……」

「リコリス、お前に触れたい」

 熱の籠った声にリコリスの体が上気する。

 コロリと絨毯に押し倒される。
 地面に直接敷くのが勿体ないくらいのフカフカの絨毯だ。
 寝転がらされてもリコリスは何処にも痛みは感じなかった。

 絨毯に寝転がらされたリコリスの上に魔王が覆いかぶさる。

 その背には真ん丸な月が夜空に浮かんでいた。

(魔王の瞳の色と同じです…なんて、綺麗なんでしょう……)

「リコリス、月ではなく我を見ろ」

(あぁ同じ色に同じ優しい光でも、魔王の目は月と違って蕩けそうで熱そうです……)

「今日は少し頑張って貰うぞ?」

 微笑みを浮かべる魔王に、リコリスは真っ赤になりながらも頷いた。
 そのまま2つの影が重なり合う。
 見ているのは月だけだった。

 :::

「陛下、今日は機嫌良いじゃいのー?」

 魔王の執務室でオウマが言った。
 オウマはソファに腰かけてコーヒーを飲んでいる。
 執務室のソファーは座り心地が良いし、魔王専用のコーヒー豆は上等な物なのでとても美味しい。
 訓練の休憩の合間にお茶を飲むなら魔王の執務室とオウマは決めていた。

 確かに今日の魔王のオーラはピンク色だ。
 感覚であり実際に見えているわけでは無いが、間違いなくオーラが見れればピンク色だろう。

「昨日のデート上手くいった訳?」

「あぁ。色んな者たちに世話をかけたが上手くいった」

「じゃぁ遂に王妃さん大人の階段を上がっちゃった訳ねー!」

 思わずオウマも興奮する。
 他人の色事は蚊帳の外なら見ていて面白いものなのだ。
 巻き込まれたら堪ったものではないが…。

 魔王のオーラがどんよりと曇った。

(あれ、俺もしかして地雷踏んだんじゃないの~?)

「唇にキスをした」

「あ、うんうん」

「初めてバードキスでなく深い口付けが出来た」

「うむうむ」

「その後、…」

「その後…?」

「服に手を掛けたらリコリスが意識を失ってしまった」

「あ”~やっぱり最後までは無理だった訳ね……」

 ガクリとオウマが項垂れる。

「だが色々と楽しかったぞ。リコリスも喜んでくれた。何よりこれからは我の魔力がリコリスに始終身に着けられてのだからな。虫よけにはぴったりだ」

(あーそれで柄にもなく装飾品なんて着けてる訳ねー)

 魔王の耳に付けられたバラのモチーフのイヤーカフを見てオウマは察した。
 おそらくリコリスにも同じようなアクセサリーを着けているのだろう。

「んじゃ俺は部下の訓練見に行くわ。コーヒーご馳走様ねー」

 オウマも馬に蹴られたくないのである。

 この直ぐ後リコリスの耳に着けられたイヤーカフを見て、その花のモチーフに魔王の嫉妬深さと重すぎる愛情にリコリスはあと何日貞操を守り切れるだろうかと心配になったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー

 最近更新していませんでした。
 心配をして下さった方もいて感無量でございます。
 少し体調崩し気味だったのですが復活したので、こちらの連載もチマチマ上げていきたいと思います。
 宜しければまだまだお付き合い下さいね(*- -)(*_ _)ペコリ
しおりを挟む
感想 753

あなたにおすすめの小説

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

処理中です...