聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【113話】

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 ディノート王都には待ち合わせに打ってつけの噴水のある広場がある。
 そして、その日。
 男も女も1人の待ち人に視線を奪われていた。

 細身の青年だ。
 白銀の髪とエメラルドの瞳が美しい。
 顔の造りも神様が丹精を込めて作ったのだろうと信じてしましそうな整った美貌だ。

(あの人、無茶苦茶恰好良くない?)

(格好良いと言うより美人!)

(声かけちゃう?)

(え~レベルが違い過ぎて無理だよ~)

 キャッキャと女子が騒いでいる。

(俺、あれなら男でもイケるわ)

(マジか?あ~でもイケるかも?)

(女より美人じゃん!)

(お前声かけろよ)

(こんな昼間から男に声かけれるかよ!)

「つまり昼間で無かったら声をかける、と」

 落ち着いた甘いアルトの声が聞こえた。
 声の主を探して小声で話していた男たちは視線を彷徨わせる。

「下だ。身長が低くて悪かったな。これでもコンプレックスなのだぞ?」

 視線を少し下に向ける。

 ズッキューン

(((((ヒィィィィィィィッ!)))))

 ソコには空色の髪と翡翠色の瞳の美少年が立っていた。
 銀髪の青年にも負けない美貌。
 中性的で気品に満ちているのに切れ長の目の強さが野性味も感じさせる。
 口角を上げ笑うその様は、男も女も腰を抜かす男前な色気が漂っていた。

「悪いがアレは私のだ。邪な目であまり見ないで貰おうか。まぁ、気持ちは分かるがな」

(ヒィィィィ何この美少年!?)

(色気!色気がぁぁぁぁぁっ!!)

(目つきヤバい!踏みつけられたい!!)

(抱ける!つーか抱いてください!!)

「ルーク、待たせたな」

「リリー、今着いたところだ」

 青年ールークが蕩ける様な笑みを浮かべる。
 その笑みを見てリリーと呼ばれた少年は蠱惑的な笑みで返す。

「嘘をつけ、額に汗をかいている。暑かっただろう?何処か涼しい場所に移動しよう」

 ルークの腰を抱いてリリー、いや、サイヒがエスコートする。

「ディノートは魔術国家だからな。熱を操る術師は重宝されるんだ。夏には冷房、冬には暖房の魔術を店に使ってるところも少し値が張るがあるのだぞ」

「そうか、ではサイヒと一緒に涼しい所で落ち着きたいな」

「何か食べるか?」

 サイヒがルークの唇を綺麗な指でなぞる。

「ん、甘い物…食べたいかも……」
 
 サイヒの指の感触にルークが少しばかり声に甘さを含ませる。
 頬もバラ色に染まり、情操教育に大層良くない光景だ。

「ではこの前見つけた店に行こう。チョコレート専門店だ。チョコ、好きだろう?」

 サイヒが己の唇をぺろりと舌で舐めた。

((((((ヒャァァァァァァァァァッ!!!))))))

 広場に居るモノの腰が抜ける。
 前屈みになる男がいる。
 頬を染めて熱い息を吐く女がいる。
 サイヒの色気に皆飲まれたのだ。

「では行こうか」

 そうして2人は去っていった。

 :::

「何か見てはいけないものを見た気がする………」

 誰かがポツリと呟いた。
 そして腰を抜かした皆がその言葉に縦に首をぶんぶんと振るのだった。
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