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2章
【200話】
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暗い暗い大地の下。
天界の下の地上の下のまだその下。
深淵の渕にその宮殿はあった。
玉座の間に座るのは銀髪にエメラルドの瞳が美しい、闇を支配する魔王。
そう、魔界に魔王が戻ってきたのだ。
悪魔たちは歓喜した。
全能神に攫われていた魔王が我々の元へと帰って来てくれたのだと。
王の帰還に魔界は沸いた。
魔王が魔界に帰還して1週間、祭りは続けられた。
その間に魔王が玉座の間から外に出た事は無い。
玉座の間より奥にある、自分の私室と、専用のダイニングに食事時に姿を現す程度。
執事が呼びに行かなければ食事すら疎かにする魔王。
頼み込んで、1日の半分を玉座の間で過ごして貰っている。
魔王は自分から何かをすると言うことが無いのだ。
浴室も私室についているために入浴のために部屋から出てくることも無い。
本来なら魔王の為のハーレムで女悪魔に体を洗わせるのが基本であろう。
だが魔王は己の身体に他人が触れる事を厭うた。
それでもその美麗な姿が玉座にあるだけで悪魔たちは活気づく。
魔王不在の長い時を経て来た悪魔たちは、魔王がそこに居てくれると言うだけで感涙ものなのだ。
魔王が魔界を統治したなら、次にすることは地上の制覇だろう。
歴代の魔王たちはそうした。
全能神が悉く邪魔をしてくれるために、地上制覇の悲願を果たせたことは無いが。
それでも今回の魔王ならそれすら叶うかもしれない。
美しい魔王は歴代の魔王より遥かに魔力が多く強かったから。
悪魔たちは魔王が地上制覇に乗り出すことを信じていた。
:::
「魔王様!何時になったら地上に進軍するのですか!?」
宰相が叫ぶ。
魔王の片腕だ。
主に参謀面で魔王を支援する。
「我々は血が疼いてたまりませぬ!早く進軍の合図を!!」
騎士団長が願う。
長年の地上制覇を己の代で出来る事に喜びを感じながら。
だが魔王は口を開かない。
「好きにしろ」
そう1言だけ言った。
好きに地上を攻めればよいと。
己はソレに係る気はないと。
冷ややかなエメラルドの瞳に見つめられると、その美しさに陶酔すら感じるのに同時に己の首が刎ねられるイメージが頭を浮かぶ。
冷たく、その冷たさは絶対零度を思わせるほどの冷たさで、誰も何も言えなくなる。
「私は何にも興味はない」
そう言って魔王は玉座から引こうとした。
「お待ちください!せめて、この天界からの使者の首を獲ることの命を出して下さい!この雄ガキのせいで地上に派遣した悪魔たちが次々に行方不明になっているのです!!」
参謀は壁に悪魔を体術だけで地に沈めていく少年の映像を浮かべた。
空色の長い髪に翡翠色の瞳。
この世のものとは思えない整った容貌。
しなやかに身を翻し、悪魔をその拳で、健脚で地に沈める。
敵でありながらその少年の動く姿は芸術的としか言いようが無かった。
誰もがその美しさに魅入られる。
だから誰も気付かなかった。
冷酷な魔王が食い入るようにその少年の姿を瞼の裏に焼き付けていたことを。
魔王ルークは、天界から派遣された1人の少年にその心の1部をこの時奪われたのだった。
天界の下の地上の下のまだその下。
深淵の渕にその宮殿はあった。
玉座の間に座るのは銀髪にエメラルドの瞳が美しい、闇を支配する魔王。
そう、魔界に魔王が戻ってきたのだ。
悪魔たちは歓喜した。
全能神に攫われていた魔王が我々の元へと帰って来てくれたのだと。
王の帰還に魔界は沸いた。
魔王が魔界に帰還して1週間、祭りは続けられた。
その間に魔王が玉座の間から外に出た事は無い。
玉座の間より奥にある、自分の私室と、専用のダイニングに食事時に姿を現す程度。
執事が呼びに行かなければ食事すら疎かにする魔王。
頼み込んで、1日の半分を玉座の間で過ごして貰っている。
魔王は自分から何かをすると言うことが無いのだ。
浴室も私室についているために入浴のために部屋から出てくることも無い。
本来なら魔王の為のハーレムで女悪魔に体を洗わせるのが基本であろう。
だが魔王は己の身体に他人が触れる事を厭うた。
それでもその美麗な姿が玉座にあるだけで悪魔たちは活気づく。
魔王不在の長い時を経て来た悪魔たちは、魔王がそこに居てくれると言うだけで感涙ものなのだ。
魔王が魔界を統治したなら、次にすることは地上の制覇だろう。
歴代の魔王たちはそうした。
全能神が悉く邪魔をしてくれるために、地上制覇の悲願を果たせたことは無いが。
それでも今回の魔王ならそれすら叶うかもしれない。
美しい魔王は歴代の魔王より遥かに魔力が多く強かったから。
悪魔たちは魔王が地上制覇に乗り出すことを信じていた。
:::
「魔王様!何時になったら地上に進軍するのですか!?」
宰相が叫ぶ。
魔王の片腕だ。
主に参謀面で魔王を支援する。
「我々は血が疼いてたまりませぬ!早く進軍の合図を!!」
騎士団長が願う。
長年の地上制覇を己の代で出来る事に喜びを感じながら。
だが魔王は口を開かない。
「好きにしろ」
そう1言だけ言った。
好きに地上を攻めればよいと。
己はソレに係る気はないと。
冷ややかなエメラルドの瞳に見つめられると、その美しさに陶酔すら感じるのに同時に己の首が刎ねられるイメージが頭を浮かぶ。
冷たく、その冷たさは絶対零度を思わせるほどの冷たさで、誰も何も言えなくなる。
「私は何にも興味はない」
そう言って魔王は玉座から引こうとした。
「お待ちください!せめて、この天界からの使者の首を獲ることの命を出して下さい!この雄ガキのせいで地上に派遣した悪魔たちが次々に行方不明になっているのです!!」
参謀は壁に悪魔を体術だけで地に沈めていく少年の映像を浮かべた。
空色の長い髪に翡翠色の瞳。
この世のものとは思えない整った容貌。
しなやかに身を翻し、悪魔をその拳で、健脚で地に沈める。
敵でありながらその少年の動く姿は芸術的としか言いようが無かった。
誰もがその美しさに魅入られる。
だから誰も気付かなかった。
冷酷な魔王が食い入るようにその少年の姿を瞼の裏に焼き付けていたことを。
魔王ルークは、天界から派遣された1人の少年にその心の1部をこの時奪われたのだった。
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