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【オマケ、国王親衛隊と出会う】

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 1夜が明けた。
 今日の厨房見学はその第一歩だ。

「んじゃ早速朝食作り見学してくるわ。ナルは適当に過ごしておいてくれ」

 深海は扉の向こうの兵士に厨房見学の旨を伝えた。
 すでにクロナから話は通されていたらしい。
 簡単に鍵は開けられ、深海は兵士2人に連行されるように厨房へ連れて行かれた。

(護衛じゃなくて監視だろうな)

 兵士の深みを見る目は冷たい。
 もちろん会話の1つもなかった。
 そんなこんなで厨房前。
 中から何やら言い争うような声が深海の耳に入ってきた。

『***********!!』

『*****!************!!』

 会話の内容までは聞き取れない。
 厨房の扉をくぐると昨日のシェフに背の高いオレンジ色の髪の長身の男が何やら責めていた。
 男は貴族なのだろう。
 質の良さそうな衣服を着ている。
 だが召喚の間にいた貴族たちとは違って動きやすそうな恰好であった。
 華美でもない。
 男は二十代前半だろう。
 短い髪に鋭い目つき。
 180センチはありそうな高い身長に服の合間から見える肌には綺麗な筋肉がついていることが分かる。

(闘う体だな。普通の貴族とは違うのか?)

「だからラキザ様に料理を作らせる何て出来ません!聖騎士団長で王様の親衛隊であるラキザ様に王様の食事を作らせるなど!!私は王家に尽くしております!決して毒を入れたりは致しません!!」

「だ~か~ら~毒とかどういうんじゃねーの!お前が作ったら豪華になり過ぎるっつてんだよ!!」

 貴族の男はあまりガラが良くないらしい。
 言葉遣いがチンピラじみている。
 何となく深海は親近感を感じた。これくらい粗野な方が畏まった濁った眼をした貴族共より好感が抱ける。

「ですがクロナ姫より質素なものを王様が召し上がるなんて!」

「あんな、クロナ姫や王宮に居るその取り巻き以外は三食食えるだけでも有難いって奴らがごまんと居るんだよ!城の召使たちだってそうだ。王は贅沢を好まない。少なくとも国民が飢えて死ぬことが無くなるまでな。だから王は俺に飯作れって命じたんだよ。これは王命だ。俺の我が儘じゃない。だから大人しく厨房の隅か大衆食堂の厨房へ行け!」

 貴族の男―ラキザがそう吐き捨てるとシェフはすごすごと厨房の隅へ行った。

「で、お前誰?」

 ラキザの視線が深海に固定された。

「オマケ付き聖女召喚で召喚された1人」

「あ~お前が聖女様の兄貴って奴か。目つきの悪いチビだとは聞いてたけど場を読めるぐらいに頭は回るみたいだし綺麗な顔してるじゃねーか。チビだけど綺麗に筋肉付いてるみたいだしな」

 ラキザが深海を頭の先から爪先まで見た後そう感想を漏らした。
 確かに深海は身長こそ男としては低いが体中しっかり鍛えた引き締まった筋肉のついた体つきをしている。
 子供の頃からあらゆる格闘技に手を出して鍛えぬいているからだ。
 主に鳴海が変質者に襲われた時に撃退するためだ。
 制服越しでそれを見て取ったラキザは王の親衛隊と言っていたし人を見る目はあるらしい。
 ついでに先ほどの会話からかなりの常識人であることも窺えた。
 少なくともクロナの取り巻きよりは話しが通じそうだ。

「んでお前何でここにいんの?」

 どうやらラキザには深海が厨房見学することが伝わっていなかったようだ。
 深海は簡潔的にラキザに説明する。

「ふ~ん、クロナ姫と食事して作ってる所を見たくなったって?お前一癖ありそうだし作る所が見たかっただけか?他意は?」

「厨房の中検索してこの国の食事のレベル見ようと思いまして。ついでに部屋から庭しか見れないので隙をついて他のところも検索してみようかな~と」

「ほ~」

 顎に手をやったラキザは深海の話を聞きうんうん、と頷いた。

「んじゃ俺が後で案内してやるよ。ちゃんと王命貰ってな。じゃねーとあのお姫さんとその取り巻きが煩せーから」

 ラキザなる人物は頭の方も回るらしい。
 深海の説明を聞いてその意図を瞬時に理解してくれたらしい。
 深海としてもこの世界に来てからラキザと話をするのはテンポも良く価値観も近いのか話していて苦にならなかった。

「昨日は王様居ませんでしたよね?」

「ん、外交に行ってたからな。んで嫌な予感がするって夜中馬飛ばして早朝帰宅した」

「馬、ですか。馬車じゃなくて?」

「馬車じゃ時間がかかり過ぎるからな。クロナ姫残して王宮開けたままにしたくなかったんだよ。まぁ予想通りとんでもないことしでかしてくれたみたいだけどな」

 はぁ、とラキザが溜息をつく。
 この男目つきこそ鋭いが中々顔の造詣が整っているのでなかなか絵にならなくもない。

「まぁシェフいなくなっちゃいましたしラキザ様が作る所でも見学させて貰って良いですかね?昨日の晩餐より質素な王様の食事って言うのも気になりますし」

「見て楽しいか分からなけど別に構わないぜ」

 そう言ってエプロンを付け腕まくりをしたラキザは食料を厨房の台に置きだした。
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