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【6話】
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ガフティラベル帝国では年に1度祭りがある。
その目玉が武道大会だ。
屈強な男たちが勝ちでぶつかるバトル。
男も女も熱狂する。
それは後宮に住まう女性たちも例外ではない。
第3皇太子妃マロンも楽しみにしているらしい。
サイヒ情報である。
そしてサイヒの優勝を楽しみにしているのだと。
「で、武道大会にエントリーすることになったと?」
「うむ、楽しそうで実に良い」
食堂でそれぞれ別の定食をたべながらサイヒはルークに報告していた。
別のメニューを頼むようになったのは互いにオカズの交換をするためである。
どこの女子かと見る者がいれば突っ込むだろう。
【認識阻害】のおかげで会話もろくに他の者の耳には入っていないだろうが。
「サイヒは体術も得意なのだな」
「武器と名がつくものは一通り扱える」
聖女に必要なスキルでは無かったが。
こうして今になって役に立つのだから人生何があるか分からないものだ。
「私も応援しに行くぞ」
「ルークも応援してくれるのか?なら良い所を見せねばな」
「当日何か差し入れする物はあるか?」
「いや、応援だけで充分だ。それより大会が始まるまで露店などを見たいな。屋台で買い食いもしたい」
「ならソレに付き合おう。私も建国祭に参加するのは10年ぶりぐらいなので楽しみだ。サイヒと回れば全てが楽しいだろうな」
ルークは良く笑うようになった。
サイヒはそんなルークの笑顔がお気に入りだったりする。
ルークにはそれは伝えられていないが。
「そう言えばマロンから聞いたのだが皇太子妃は見物に参加しても皇太子自身はここしばらく見物に参加していないらしいな。あまりこう言った行事が興味ない人なのだろうか?」
「今年は興味があると思う。ただ皇族の席で見物などは行わないと思われるが…サイヒは皇太子に興味があるのか?」
「ん~まぁ皇太子の後宮で働いているし自分の上司を全く知らないと言うのも問題があるかと思ってな。何せ容姿どころか名前も知らん」
「サイヒ!皇太子に向ける分の興味は私に向けて欲しい!」
珍しくルークが焦った声を出す。
「何だルーク嫉妬か?お前はそう言うところが可愛いな。心配するな、私は皇太子よりルークの方が大事だぞ?お前に害をなすなら皇族に喧嘩を売ってもいい程度にはお前の事を気に入っている」
クスクス笑うサイヒに見惚れて、ルークは顔を真っ赤にさせる。
「サイヒ、唐揚げもう1つ食べるか?」
「お、良いのか?では有難くいただこう」
ルークが箸で摘まみ差し出した唐揚げをサイヒはパクリと口の中に入れる。
普通は同性どうしで”あーん”はしないものなのだがサイヒは神殿育ち、ルークは王宮育ちなので一般人の感覚を持ち合わせていなかった。
「美味しいか?」
「ん、前より美味しくなった気がする。良いところに就職したものだ」
「そうか」
嬉しそうにルークは頬を上気させる。
(国中から腕自慢の料理人たちのレシピを買い取って正解だったな)
食堂のオバちゃんたちは届いた様々なレシピを試行錯誤してさらに腕を上げた。
皇太子の後宮の宦官用食堂は今や国中でもトップに入る料理の美味しさであろう。
ルークの初めての職権乱用であった。
その事にルーク付の執事が”子供の時から感情を表に出さず何にも興味を示さない皇太子さまが、ようやく我儘の1つも言ってくれるようになった”と感激し涙していた事をルークは知らない。
その目玉が武道大会だ。
屈強な男たちが勝ちでぶつかるバトル。
男も女も熱狂する。
それは後宮に住まう女性たちも例外ではない。
第3皇太子妃マロンも楽しみにしているらしい。
サイヒ情報である。
そしてサイヒの優勝を楽しみにしているのだと。
「で、武道大会にエントリーすることになったと?」
「うむ、楽しそうで実に良い」
食堂でそれぞれ別の定食をたべながらサイヒはルークに報告していた。
別のメニューを頼むようになったのは互いにオカズの交換をするためである。
どこの女子かと見る者がいれば突っ込むだろう。
【認識阻害】のおかげで会話もろくに他の者の耳には入っていないだろうが。
「サイヒは体術も得意なのだな」
「武器と名がつくものは一通り扱える」
聖女に必要なスキルでは無かったが。
こうして今になって役に立つのだから人生何があるか分からないものだ。
「私も応援しに行くぞ」
「ルークも応援してくれるのか?なら良い所を見せねばな」
「当日何か差し入れする物はあるか?」
「いや、応援だけで充分だ。それより大会が始まるまで露店などを見たいな。屋台で買い食いもしたい」
「ならソレに付き合おう。私も建国祭に参加するのは10年ぶりぐらいなので楽しみだ。サイヒと回れば全てが楽しいだろうな」
ルークは良く笑うようになった。
サイヒはそんなルークの笑顔がお気に入りだったりする。
ルークにはそれは伝えられていないが。
「そう言えばマロンから聞いたのだが皇太子妃は見物に参加しても皇太子自身はここしばらく見物に参加していないらしいな。あまりこう言った行事が興味ない人なのだろうか?」
「今年は興味があると思う。ただ皇族の席で見物などは行わないと思われるが…サイヒは皇太子に興味があるのか?」
「ん~まぁ皇太子の後宮で働いているし自分の上司を全く知らないと言うのも問題があるかと思ってな。何せ容姿どころか名前も知らん」
「サイヒ!皇太子に向ける分の興味は私に向けて欲しい!」
珍しくルークが焦った声を出す。
「何だルーク嫉妬か?お前はそう言うところが可愛いな。心配するな、私は皇太子よりルークの方が大事だぞ?お前に害をなすなら皇族に喧嘩を売ってもいい程度にはお前の事を気に入っている」
クスクス笑うサイヒに見惚れて、ルークは顔を真っ赤にさせる。
「サイヒ、唐揚げもう1つ食べるか?」
「お、良いのか?では有難くいただこう」
ルークが箸で摘まみ差し出した唐揚げをサイヒはパクリと口の中に入れる。
普通は同性どうしで”あーん”はしないものなのだがサイヒは神殿育ち、ルークは王宮育ちなので一般人の感覚を持ち合わせていなかった。
「美味しいか?」
「ん、前より美味しくなった気がする。良いところに就職したものだ」
「そうか」
嬉しそうにルークは頬を上気させる。
(国中から腕自慢の料理人たちのレシピを買い取って正解だったな)
食堂のオバちゃんたちは届いた様々なレシピを試行錯誤してさらに腕を上げた。
皇太子の後宮の宦官用食堂は今や国中でもトップに入る料理の美味しさであろう。
ルークの初めての職権乱用であった。
その事にルーク付の執事が”子供の時から感情を表に出さず何にも興味を示さない皇太子さまが、ようやく我儘の1つも言ってくれるようになった”と感激し涙していた事をルークは知らない。
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