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【18話】

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 少年はスラム育ちだった。
 病気の母親と共に暮らしていた。
 日銭を稼ぎ母の薬代と食費を何とか捻出していた。
 そしてある日、1人の男に出会う。
 その男が母の薬代を出してくれると言う。
 更には母の療養代も出してくれると言うのだ。
 少年は母に健やかな暮らしをして欲しかった。
 母と皇太子の命を天秤にかけた時、天秤は母に傾いた。
 毒見訳とし王宮に入ることで、その全てを叶えてくれるのだと男は言った。
 少年は痛くても苦しくても母の為、魔石を受け入れ皇太子の毒見役となった。

「申し訳ありません!俺を不敬罪で裁いて下さって構いません!俺は皇太子さまの命を奪おうとしました!でも、でも母だけは助けて下さい!母は悪くないのです!悪いのは全て俺だけなんですっ!!」

 全てを話して少年は土下座をしながらルークに許しを請うた。
 自分ではなく母の命だけを。

「少年、君に話を持ち掛けた男の事を話せるか?」

「え、え?あの人は…え、何で…思い出せないんだ……?」

 サイヒの問いに少年は答えられなかった。

「ふむ、どうやら敵さんは私と同じ【認識阻害】もしくは【洗脳】の魔術を使っている様だな」

「だから相手の事を思い出せないのか?」

「そうだろう。そして私的には少年にかけられていたのは【洗脳】であれば良いと思うのだがルークはどう思う?」

「そうか!【洗脳】だ。この少年にかけられていたのは【洗脳】の魔術で違いないと私は思う」

 ルークはサイヒの問いの意味に気づいた。
 その上で少年は【認識阻害】を使用した男に唆されたのではなく、【洗脳】をかけられて自分の意志とは無関係に毒見役をさせられたのだとルークは決めた。

「皇太子さま、俺はっ!」

「少年、其方は【洗脳】の魔術をかけられ命を落とすかも知れぬ立場に追いやられた。【洗脳】されていた其方は己の意志ではなく”毒見役”となったのだ。ならば其方は裁かれる罪は無い。もし其方を裁くと言うものが居るならば、私がソレを許しはしない」

「あっあぁ、皇太子様…俺なんかのために…命を狙った俺なんかのために、何と慈悲深いお言葉を………」

 少年はボロボロと涙を流す。

(国のトップに立とうと言う存在が、何と甘い事を……)

 クオンは小さく溜息を吐く。
 だがクオンはこんな甘さをもつルークだからこそ、主として使えようと思ったのだ。

「さて、これ程に用心深い相手が言葉だけの契約を護っているとは思えんな…全員最悪の事態は想定しておいてくれ。さすがに私でもどうにか出来る案件では無いだろうからな……」

 悔し気に話すサイヒの言葉に、皆がこのまま大団円で終われないのだと気づかされた。
 そして事態は最悪の方向に動き出す。
 あまりにも無慈悲な方向へと………。 
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