あんたは俺のだから。

そらいろ

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side朱斗

「樹矢ってさ、やっぱりプロなんだな」
「えー?突然どうしたの?」

 夕食も済ませ、お風呂も入りもう今日一日が終わろうとしている頃リビングで俺と樹矢はそれぞれの時間をのんびりと過ごしていた。

「この仕事してるとその個々のモデルの良い顔の角度っていうのがあるじゃん?」
「あー。ね……」
「雑誌見てても、この人は右側からが良いの撮れるのにもったいない。とかさ思うわけ」

 ソファに横になり発売されたばかりの樹矢が載っている雑誌を捲り俺は言葉を続ける。

「んでも。この角度にこの表情、完璧じゃん。って止まるページがいっつも決まってあんたなんだよな」

 パラパラと捲っていた指を止め、そのページを見つめれば目が合うのは雑誌の中に写るモノクロの恋人だ。

「撮られ方が分ってんだよなぁ。しかも、樹矢の場合は左から撮られるとカッコイイ。右からは少し柔らかい顔が撮れんだよ」
「……」

 樹矢からは相槌も何も聞こえてこない。
 それに気にも止めず、俺は更に言葉を続ける。

「プロのモデルなんだなって思わされるってゆうか、流石だなってこうやって出来上がりを見ていつも感心してる」

 印刷された紙の中に居る樹矢の頬を指でなぞり、次のページを捲る。

「あ、ほら。これとか、ストール巻いてて首筋とか顎のラインが消えてて目元だけなのに良い角度向いてるじゃん」
「……」
「ほんと……いい顔してる」

 きっと俺の頬はその時、無意識に緩んでいただろう。
 次のページを捲ろうとすると背後から影が俺を覆い、持っていた雑誌が樹矢によって奪われた。

「朱ちゃん、そんなに褒めて誘ってんの?」

 バサッと床に置かれた雑誌を急いで拾い上げようとすると、後ろからがっちりと樹矢の腕で身体をホールドされ動けなくなった。

「え。ちょっと……」

 首筋に埋まった恋人の顔は当然見えない。雑誌へと伸ばした手を止めて、樹矢のサラサラの髪の毛を優しく撫でた。

「なに。甘えてんの?」
「……」

 樹矢はまた、答えるのを止める。

「思ったこと言っただけだって。樹矢は最高のモデルだって」

 すると、抱きつく腕の力が強まった。

(んー。確かに、ちょっと素直になりすぎたかな……)

 そんなことを思っていると、樹矢が沈黙を破る。

「朱ちゃんさ。……あんまり褒めると、このまま襲っちゃうよ?」

 小さく耳元で放った言葉に、俺の身体の体温が一気に上がった気がした。

「……いいぜ、襲えよ」


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