あんたは俺のだから。

そらいろ

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side樹矢

「樹矢ってさ、やっぱりプロなんだな」

 お互いの時間を過ごしていると、俺の恋人はポツリと話しだした。

「えー?突然どうしたの?」

 ソファに寝転ぶ朱ちゃんは、さっき俺が渡した発売したての雑誌を見ている。

「この仕事してるとその個々のモデルの良い顔の角度っていうのがあるじゃん?」
「あー。ね……」
「雑誌見てても、この人は右側からが良いの撮れるのにもったいない。とかさ思うわけ」

 朱ちゃんの話は止まらない。

「んでも。この角度にこの表情、完璧じゃん。って止まるページがいっつも決まってあんたなんだよな」

 そう言って見ているページは俺、瀬羅樹矢が載っている。

「撮られ方が分ってんだよなぁ。しかも、樹矢の場合は左から撮られるとカッコイイ。右からは少し柔らかい顔が撮れんだよ」
「……」

(それを教えてくれたのはまだ付き合ってすぐだった頃の朱ちゃんなんだよ)

「プロのモデルなんだなって思わされるってゆうか、流石だなってこうやって出来上がりを見ていつも感心してる」

(プロとして、俺がこうしてモデルでいられるのも朱ちゃんのおかげ)

「あ、ほら。これとか、ストール巻いてて首筋とか顎のラインが消えてて目元だけなのに良い角度向いてるじゃん」
「……」

(そんな俺を見て、更に惚れてくれる?)

「ほんと……いい顔してる」

(もう……、ダメだ)

 朱ちゃんの頬が緩む顔を見て、俺の心は掴まれた。どうやら惚れ直したのは俺の方だったみたいで朱ちゃんにそんな顔をさせた雑誌に写っている自分に嫉妬をした。
 朱ちゃんが寝転がるソファに近づいて、手に持っていた雑誌を取り上げ床へ投げる。
 バサッという音と同時に俺は朱ちゃんのことを抱き締めた。

「朱ちゃん、そんなに褒めて誘ってんの?」

 俺は、本気で聞く。
 それくらい朱ちゃんが素直に俺を褒めることが珍しいからだ。
 むしろ、誘っているようにしか思えないほど。

「え。ちょっと……」

 首筋に顔を埋めて、朱ちゃんに俺の顔が見えないようにする。
 それは、高揚している顔を見せたくないから。
 愛している人に褒めてもらえることが嬉しくて、朱ちゃん同様に俺の頬は緩んでいる。

(普通に照れるって……)

 すると、俺の髪の毛に朱ちゃんの指が絡みついてきた。そのままゆっくりと上下に頭を撫でられる。

「なに。甘えてんの?」
「……」

 俺はまた、答えるのを止める。

「思ったこと言っただけだって。樹矢は最高のモデルだって」

 その一言に抱きしめている朱ちゃんが更に愛おしく感じ、腕の力を思わず強めた。

(嬉しい。嬉しい嬉しい)

 このまま、食べちゃいたい。

「朱ちゃんさ。……あんまり褒めると、このまま襲っちゃうよ?」

 そう耳元で呟けば、朱ちゃんの体温が上がった気がした。
 そして、朱ちゃんは俺に答える。

「……いいぜ、襲えよ」


-------

「っいってぇ……たく、少しは加減を知れよ」
「大丈夫?立てる?俺が抱っこして連れてってあげようか?」

 目の前の裸体には、朱ちゃん自身の汗と愛液が飛び散っている。
 重たそうに腰を抑える愛しい恋人をお姫様抱っこで持ち上げてお風呂場へと移動する。

「朱ちゃん」
「ん?」

 呼ばれた方に向いた彼の不意をついて口付ける。
 シャワーを出して冷たい水がお湯に変わるまでの短い間、俺達は深い口づけを交した。
 唇を離すと、朱ちゃんは俺に言う。

「その顔は、絶対俺だけにしか見せんなよ」

 朱ちゃんのそんな独占欲に俺はまた、彼の虜になるんだ。


fin.

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