大事に育てた畑を奪われたからこの村は見捨てることにした ~今さら許しを乞うても無駄なんだよ~(完)

みかん畑

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80 交渉

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「すっかりレトラが懐いたわね。あんなにあなたを敵視してたのに」
「こうなることも読んでたのか?」
「偶然よ。あなたが庇うだろうことは流石に分かってたけど」

 ジュリの私室で対面する形でソファに腰かける。

「それで、私に何を頼みたいのかしら?」
「ラクシア帝国に揺さぶりを掛けようと思ってるんだ」
「ラクシア? ラムネアとはあまり関わりのなかった国よね」
「あの国に誘拐された女子供を売り物にしていた商人がいるんだ。個人的に始末する予定があってな」
「そうやって女の問題に片っ端から首を突っ込むからハーレムが広がり続けるのよ」

 心当たりはあるが、今更生き方は変えられない。

「マッチポンプになるが、協力してくれるか?」
「簡単に作戦を説明してくれるかしら」
「ま、ざっとこんなところだな」

①俺がラクシア王都の結界を殺す。

②ジュリ達がラクシア帝国の王都を陥落させる
※住民が避難できるよう、時限機能式の召喚魔法辺りが妥当か?

③ラクシア帝国から要請を受けた俺が、コマネシオンを引き渡すことを条件に王都を奪還する

④適当に戦っているフリをした後、ジュリ達は王都から撤退

⑤俺はコマネシオンの身柄を確保し、ジュリ達は魔王軍の力を知らしめることに成功する。めでたしめでたし。

 俺の考えを聞いたジュリは「面白そうね」と微笑した。

「実はマグマシードの出所が気になってたのよ。実の生産をどこが請け負っていたのか調べてくれるなら、協力するわ」

 ああ、あのカルマオンラインの仕様にないアイテムか。

「アレの出所ってラクシア辺りなのか? アルニス王子が生産してたのかと思ったが、調べてもそれらしい研究施設はなかったんだよな」
「それこそ、コマネシオンが怪しいんじゃないかしら。ラムネアで生産工場が見つからないのであれば、彼がラクシア帝国から横流ししていたと考えれば辻褄があってくるはずよ。彼はアルニス、ダイババと手を組んで奴隷売買のネットワークを築いていたのでしょう? だったら、実の取引もあったんじゃないかしら」
「アルニス一派を処刑したせいで流通ルートの情報が手に入らないんだよな……。あれ程のマジックアイテムを個人で用意できたとは思えないから、コマネシオンのバックにも大きい組織がついてるはずなんだが。ラクシアの王宮に出入りしているとも聞いたが、まさか皇帝とグルになって暗躍してたのか?」

 疑念が募ってくる。

「こんなことならコマネシオンのステータスをもっと見ておくんだった」
「仕方ないわよ。よほど長時間顔を会わせるのでなければ、一瞬の邂逅で得られる情報なんて高が知れてるわ」
「ま、それもそうなんだけどな」

 まあ、その辺りもこれから明らかになってくるだろう。

「裏の動きは分かったけれど、表でも動くのでしょう?」
「ああ、陛下に働きかけて外交ルートからコマネシオンの引き渡しを要求できないか試すつもりだ。まあ、十中八九、帝国には断られるだろうけどな。ただでさえ帝国はラムネアのことを弱小国として下に見ているんだ」
「それもそうでしょうし、帝国がもしコマネシオンを通じてラムネアで暗躍していたのなら、尚更のこと、彼は渡せないでしょうね」
「どこまで白を切り通せるか楽しみだ。最悪は『ヒュプノス』で吐かせてやるが」
「あなた、ワタルの技を盗んだの?」

 便利そうだったからな。あいつと違って女に悪用する気はないが。

「いつかジンのスキルも見たいな」
「原型なら私も使えるわよ」
「そうなのか?」
「ただ触れた物の時を止めるっていう単純なスキルだけど、『凍結』って言うのよ。ジンはこれを昇華させて、『永久凍土』っていう結界を張るの。ジンの領域に入った者は時間ごとスキルも凍結させて、満足に本領を発揮できないまま死ぬことになるわ。怖ろしいことに死んだ時点で時間が固定されてるから、蘇生もできなくなるのよ」
「さすが、破壊神序列第一位だな」

 恐らく格上には通じないタイプの能力だと思うが。
 ジュリも俺に試す様子はなかったしな。

『ちなみに、ワタルを倒したからタクマが暫定二位に浮上してたよ? やったねっ!』
『おい、盗聴すんな』
『タクマとジンが戦ったらどっちが勝つんだろう! 楽しみー! 私の予想じゃ『冥王』が勝つと思うけどっ』

 好き勝手言ってラリエが念話を切った。
 困った女だ……。

「この部屋、妙な視線のようなものを感じるわね」
「すまない。俺の新しい女だ」
「帰ってくれるかしら。あなたも部下を管理できてないじゃない」
「部下じゃなくて恋人だ。俺達は対等なんだよ。それに、俺の女達はレトラ程じゃじゃ馬じゃない」
「あなた、自分の足元は見えなくなるタイプよね。盗み聞きなんて犯罪よ」
「ブルームで暴れてたジュリに言われたくないな」
「……酷いわ。好きで魔族に生まれたわけじゃないのに」

 ジュリのすすり泣く声がする。
 売り言葉に買い言葉で残酷な言葉を投げつけてしまった……。

「ジュリ……」
「嘘泣きよ。まさか騙されてないわよね?」
「……ッ! あ、当たり前だろ。魔王の嘘泣きに騙される程、俺は愚かじゃない」
「その様子だと騙されたのね。良かったわ。あなたが女に弱いって噂はずっと聞いてたから、もし戦うことになったら披露しようと思ってずっと練習してたのよ。ちなみに、当初の予定ではあなたに降参した後に一度セックスをして寝首を掻いて、泣き落としで油断させたところでトドメを刺すつもりだったわ。余力を十分に残した上でのセックス行為が『星杯』に敗北と判断される可能性もあったから、私にとってもギリギリの賭けだったんだけどね」

 ――危なかった。
 もし魔王とサシでやりあってたら、最後の最後で罠に嵌められて殺されていた気がする。

 戦わなくて良かった……。

 俺は密かにそんなことを思っていた。
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