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アレン、良かれと思って働く
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「ふいー。肩が凝りますね」
執務机に座って書類を片付け終わり、ウーンと伸びをする。
今日はジュンが領主の参加する会議で不在だから、いつもより長めに仕事を片付けた。
疲れたなーと思いジュンの執務室でボケーっとしていると、不意に扉がノックされた。
丁寧な叩き方で、相手がアレンだと分かる。
「リリナ様、少し休憩を挟まれたら……あれ? もう仕事が片付いてる?」
「ええ、私の裁量で判断していいと言われたものは片づけ終わったところです」
「何とお早い……。いえ、さすがリリナ様ですね」
「様づけなんてよしてください。そんな大層な令嬢でもありませんし」
「また御冗談を。ところでリリナ様、たまには庭園でお茶会などいかがでしょうか。甘いお菓子と紅茶くらいしかもてなせませんが、根を詰めていらっしゃるようでしたので、少し休憩を挟んでいただいた方がよろしいかと」
……甘いお菓子。
屋敷に居た頃はスタイルを維持する為にキツく食事制限をされていた。
甘いお菓子というのはかなり、心惹かれる提案だ。
「そうですね。せっかくの心遣いですし、素直に受けさせていただきます」
「それは良かった。ではさっそく準備をさせますので、準備ができ次第アリシアを迎えにこさせます」
「はい。よろしくお願いしますね」
アリシアというのは元帝国人の娘で、私はともかくジュンに対して渋々従ってるような印象のある娘だ。
かつての戦争で父母を亡くしているらしく、王国民への恨みは拭い去れるものではないと思う。
だから、私も話すときは細心の注意で接するようにしている。
少しドキドキしながらアリシアを待っていると、しばらくしてから扉がノックされて、線の細い色白の少女が入ってきた。
まだ幼く、愛らしい娘だ。雪ウサギみたいな小柄な少女で、ずっと膝の上に乗せておきたいような愛らしさがある。
「あ……。失礼しました。返事をもらう前に入ってしまいました」
元は貴族のいいところのお嬢さんだったし、いきなりメイドをしろと言われてもすぐに慣れるものではないと思う。
というか、アリシアはまだ幼い。十二歳くらいだろうか?
分からないけど、子供というのは保護するべきものだし、優しくしてあげないといけないと思う。
「もう準備ができたのですね。焼き菓子は誰が焼いてくれたのかしら」
「あ、料理長だと聞いています」
「そうなの。楽しみだわ」
笑顔でニッコリ。
とりあえず笑っておけば屋敷の人たちの緊張がほぐれるというのは、最近学んだことだ。
アリシアも例に漏れず、私が笑顔を向けると緊張しつつも微笑んでくれた。
アリシアに日傘を貸してもらって、庭園へ足を運ぶ。
彼女は私に差そうとしてくれたけど、背の高さが足りないので仕方のないことである。
(……それにしても人手不足よね。信頼できる方がそれだけ少ないということだけど)
手持ち無沙汰になったアリシアの手を握って、お茶会の会場へ。
開けた庭園には壮年の執事とガッシリした体型のクマみたいな騎士、それとアレンがいる。
最近は少し肌寒くなっていたけれど、今日は日が出ていて暖かい。
「皆さんごきげんよう」
「ご機嫌麗しゅう、リリナ様」
クマみたいな騎士が傅き、執事さんが恭しく一礼する。
二人ともジュンと付き合いが長い元傭兵で、今はそれぞれ常駐で働いてくれている。
ギラントは平和だけど、一応暗殺の危険性はある為、基本は身内(元傭兵団)から抜擢した騎士や使用人しか屋敷には置いていないらしい。
そんなわけで実はアリシアについてはあまり風当たりがよくなかったりするんだけど、まあ女子供の働き手は少ないからひとまず屋敷に置いているのだと聞いたことがある。
色々複雑な人間関係の中で、皆は働いてくれてるんだよね。頭が下がる思いだ。
着席してお皿に盛られたクッキーを一枚いただく。
傍らに佇むアレンが今回の主催だ。
私の話し相手にもなってくれるようなので、話しかけてみる。
「とても綺麗な庭園ですね」
空色の透き通るような青い花々が咲き誇っている。
「この庭園に植えた花は団長……ジュン・アルガスの好む花なんですよ。どれも解熱剤になったり鎮痛作用があったり、目で楽しむ以外にも効能があります」
「ああ……そうなんですか」
何となくそんな気はしていたけれど。
花を愛でるジュンってあまり想像できなかったから、逆に良かったかもしれない。
「あ、サクサクして美味しい」
料理長の焼いたクッキーは美味しくて、思わず笑顔になる。
「その、口にあったみたいで良かったです。あまり高価なものは取り揃えていなくて……」
「気にしないでください。ジュンは倹約家ですからね」
「はは……」
別に貧乏ではないと思うのだけど、普段の彼の質素倹約ぶりを見ていると、私ばかり無駄遣いするのもなぁ、と思い自制してしまうところはあるんだよね。
婚約者である私ですらそうなんだから、アレンや他の使用人さんたちもなかなか無駄遣いはできないだろうなと思う。
「それにしても紅茶が遅いですね。っと、やっときましたか」
見れば急いだ様子のアリシアがお盆とティーカップのセットを運んでくるところだった。
あ、そんなに慌てなくても……と思っていたら、彼女は小石に躓いて転んでしまった。
中身が私の膝の上にぶちまけられるけど、あったかいなーってだけで特に気にもならなかった。
ドレスはさほど高いものではないし、母のお古だ。あまり高価なドレスを着ていくと危険だと父に言われ、あえて値の張るものは持ってこなかった。
今回はそれが功を奏した形なんだけど、アリシアの粗相を見た三人の部下が、それぞれ別の意味で殺気立ってしまった。
執務机に座って書類を片付け終わり、ウーンと伸びをする。
今日はジュンが領主の参加する会議で不在だから、いつもより長めに仕事を片付けた。
疲れたなーと思いジュンの執務室でボケーっとしていると、不意に扉がノックされた。
丁寧な叩き方で、相手がアレンだと分かる。
「リリナ様、少し休憩を挟まれたら……あれ? もう仕事が片付いてる?」
「ええ、私の裁量で判断していいと言われたものは片づけ終わったところです」
「何とお早い……。いえ、さすがリリナ様ですね」
「様づけなんてよしてください。そんな大層な令嬢でもありませんし」
「また御冗談を。ところでリリナ様、たまには庭園でお茶会などいかがでしょうか。甘いお菓子と紅茶くらいしかもてなせませんが、根を詰めていらっしゃるようでしたので、少し休憩を挟んでいただいた方がよろしいかと」
……甘いお菓子。
屋敷に居た頃はスタイルを維持する為にキツく食事制限をされていた。
甘いお菓子というのはかなり、心惹かれる提案だ。
「そうですね。せっかくの心遣いですし、素直に受けさせていただきます」
「それは良かった。ではさっそく準備をさせますので、準備ができ次第アリシアを迎えにこさせます」
「はい。よろしくお願いしますね」
アリシアというのは元帝国人の娘で、私はともかくジュンに対して渋々従ってるような印象のある娘だ。
かつての戦争で父母を亡くしているらしく、王国民への恨みは拭い去れるものではないと思う。
だから、私も話すときは細心の注意で接するようにしている。
少しドキドキしながらアリシアを待っていると、しばらくしてから扉がノックされて、線の細い色白の少女が入ってきた。
まだ幼く、愛らしい娘だ。雪ウサギみたいな小柄な少女で、ずっと膝の上に乗せておきたいような愛らしさがある。
「あ……。失礼しました。返事をもらう前に入ってしまいました」
元は貴族のいいところのお嬢さんだったし、いきなりメイドをしろと言われてもすぐに慣れるものではないと思う。
というか、アリシアはまだ幼い。十二歳くらいだろうか?
分からないけど、子供というのは保護するべきものだし、優しくしてあげないといけないと思う。
「もう準備ができたのですね。焼き菓子は誰が焼いてくれたのかしら」
「あ、料理長だと聞いています」
「そうなの。楽しみだわ」
笑顔でニッコリ。
とりあえず笑っておけば屋敷の人たちの緊張がほぐれるというのは、最近学んだことだ。
アリシアも例に漏れず、私が笑顔を向けると緊張しつつも微笑んでくれた。
アリシアに日傘を貸してもらって、庭園へ足を運ぶ。
彼女は私に差そうとしてくれたけど、背の高さが足りないので仕方のないことである。
(……それにしても人手不足よね。信頼できる方がそれだけ少ないということだけど)
手持ち無沙汰になったアリシアの手を握って、お茶会の会場へ。
開けた庭園には壮年の執事とガッシリした体型のクマみたいな騎士、それとアレンがいる。
最近は少し肌寒くなっていたけれど、今日は日が出ていて暖かい。
「皆さんごきげんよう」
「ご機嫌麗しゅう、リリナ様」
クマみたいな騎士が傅き、執事さんが恭しく一礼する。
二人ともジュンと付き合いが長い元傭兵で、今はそれぞれ常駐で働いてくれている。
ギラントは平和だけど、一応暗殺の危険性はある為、基本は身内(元傭兵団)から抜擢した騎士や使用人しか屋敷には置いていないらしい。
そんなわけで実はアリシアについてはあまり風当たりがよくなかったりするんだけど、まあ女子供の働き手は少ないからひとまず屋敷に置いているのだと聞いたことがある。
色々複雑な人間関係の中で、皆は働いてくれてるんだよね。頭が下がる思いだ。
着席してお皿に盛られたクッキーを一枚いただく。
傍らに佇むアレンが今回の主催だ。
私の話し相手にもなってくれるようなので、話しかけてみる。
「とても綺麗な庭園ですね」
空色の透き通るような青い花々が咲き誇っている。
「この庭園に植えた花は団長……ジュン・アルガスの好む花なんですよ。どれも解熱剤になったり鎮痛作用があったり、目で楽しむ以外にも効能があります」
「ああ……そうなんですか」
何となくそんな気はしていたけれど。
花を愛でるジュンってあまり想像できなかったから、逆に良かったかもしれない。
「あ、サクサクして美味しい」
料理長の焼いたクッキーは美味しくて、思わず笑顔になる。
「その、口にあったみたいで良かったです。あまり高価なものは取り揃えていなくて……」
「気にしないでください。ジュンは倹約家ですからね」
「はは……」
別に貧乏ではないと思うのだけど、普段の彼の質素倹約ぶりを見ていると、私ばかり無駄遣いするのもなぁ、と思い自制してしまうところはあるんだよね。
婚約者である私ですらそうなんだから、アレンや他の使用人さんたちもなかなか無駄遣いはできないだろうなと思う。
「それにしても紅茶が遅いですね。っと、やっときましたか」
見れば急いだ様子のアリシアがお盆とティーカップのセットを運んでくるところだった。
あ、そんなに慌てなくても……と思っていたら、彼女は小石に躓いて転んでしまった。
中身が私の膝の上にぶちまけられるけど、あったかいなーってだけで特に気にもならなかった。
ドレスはさほど高いものではないし、母のお古だ。あまり高価なドレスを着ていくと危険だと父に言われ、あえて値の張るものは持ってこなかった。
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