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即落ち婚約者
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「リリナの案を採用したら税収が増えました。それだけじゃない。街にも活気が出てきた気がします」
ジュンに協力して知恵を出しているうちに、街の景色はだいぶ変わってきた。
活気のなかった通りに店が並び、それを目的に領民も出歩いている。
私が来た頃には見られなかった光景が、街に広がっている。
ジュンは執務室から覗く通りの様子に満足しているようだった。
「ここまで様変わりするとは思いませんでした」
「帝国の基準で税を取り過ぎているように感じたので、少し下げた方がいいと思ったんです。あまり税が高くなると人が物を買わなくなって、商人も他の領地へ流れてしまいますから」
「最初、税を最大限まで引き下げると言ったときは皆が心配していましたが、うん、リリナを信用してよかったです」
褒めてもらえて嬉しい。
……嬉しいんだけど、少し他人行儀というか、何となく距離感のある喜び方だなって思う。
嫌われてるわけではないんだろうけど、屋敷の中で敬語を使われてるのって私だけだし。
「どうかしましたか?」
「いえ、何となく一段落かな、と」
「ああ……。こちらに来てからほとんど休みなく働かせてしまっていましたからね。もし良ければ今度の休日、休みを取って街を散策にいきませんか?」
ジュンからこういう提案があるのは珍しい。
彼は泳ぐのをやめたら死んでしまう魚みたいな人だから。
「何か失礼なことを考えてませんか?」
「い、いえ、そんなことは」
彼の洞察力って侮れない。
ところどころ私を買いかぶりすぎてるところはあるんだけど。
「ふふ、冗談です。本当はもっと早くにこういう時間を用意したかったのですが、リリナは働くことが好きな様子でしたので、あまり邪魔をしても悪いかなと」
「へ?」
……別に、特別に仕事が好きなわけじゃないんだけど。
「もしかして、失礼なことを言いましたか? 仕事、そんなにお好きではないのですか?」
「ええ、まあ。あればあるだけしますし、人に喜んでもらうことは好きですけど。どちらかといえばプライベートと仕事は両立したいタイプですから」
「なるほど」
ジュンが驚いてる。
えっと、私のキャラクターを誤解されてましたか?
「王子といた頃はずっと仕事ばかりしていたと聞いていたもので、そういうことに「生きがい」や「やりがい」を感じるタイプなのかなと」
四六時中、休みの日でも構わず仕事のことを考えているタイプの方。
正直、そういう人といると疲れるし、私は仕事をしている時間とそうでない時間のオンオフは切り替えたいタイプなので、色々と誤解があったのかなと思う。
「そういえば、まだ一度もデートをしていませんでしたね」
おお、珍しくジュンからの積極的なお誘いだ。
「ではその、今提案されていたように、街へ散策に行ってみたいです。ちゃんと、恋人らしい装いで」
「……しかし自分から誘っておいて何ですが、本当に構わないのですか? 元は平民の僕とそういう関係性になることに多少は抵抗があると思うのですが」
「そんなことを言ってたら子供を作れませんよ?」
「ゴホッ」
ジュンがむせた!?
「あ、ごめんなさい。直接的すぎましたね。でも、私たちの関係だっていつか必ず進みますし、恋人でも妻でもない宙ぶらりんな状態でいることは、どちらにとっても良くないかと」
「なるほど。現実的にはそうだと思いますが、僕が心配しているのはあなたの心の方で……」
「お優しいんですね」
思わずジュンの手を握ってしまう。
「私、ジュンのことを嫌だとかそういう風に思ったことは一度もないですよ。それに、周りが何と言おうと大事なのは私たちの気持ちだと思っています。私はジュンとステップアップしていきたい。だから、あとはジュンの気持ち次第なのだと思いますが」
「その……手を……」
ジュンの顔が赤い。
こんな彼、初めて見るかもしれない。
「ええと、明日のデートプランを練りますので、少し一人にさせていただきます」
「あ、私も一緒に考えましょうか?」
「あまりデートに詳しくないので、今回はアドバイザーを活用します。申し訳ないですが、次回から協力して考えましょう。まずは有識者の意見を聞くべきだと思います。では、失礼」
急ぎ足でジュンは部屋を出ていった。
「……照れてるの丸分かりなんだけど」
サバサバして恋愛ごとに冷めてるイメージの彼に、意外な一面を見た気がした。
「真っ赤なジュン、可愛かったな」
さっそく思い出し笑いをしてしまう。
もっとたくさん、私の知らない色々な表情のジュンが見たいなって、私は思い始めていた。
ジュンに協力して知恵を出しているうちに、街の景色はだいぶ変わってきた。
活気のなかった通りに店が並び、それを目的に領民も出歩いている。
私が来た頃には見られなかった光景が、街に広がっている。
ジュンは執務室から覗く通りの様子に満足しているようだった。
「ここまで様変わりするとは思いませんでした」
「帝国の基準で税を取り過ぎているように感じたので、少し下げた方がいいと思ったんです。あまり税が高くなると人が物を買わなくなって、商人も他の領地へ流れてしまいますから」
「最初、税を最大限まで引き下げると言ったときは皆が心配していましたが、うん、リリナを信用してよかったです」
褒めてもらえて嬉しい。
……嬉しいんだけど、少し他人行儀というか、何となく距離感のある喜び方だなって思う。
嫌われてるわけではないんだろうけど、屋敷の中で敬語を使われてるのって私だけだし。
「どうかしましたか?」
「いえ、何となく一段落かな、と」
「ああ……。こちらに来てからほとんど休みなく働かせてしまっていましたからね。もし良ければ今度の休日、休みを取って街を散策にいきませんか?」
ジュンからこういう提案があるのは珍しい。
彼は泳ぐのをやめたら死んでしまう魚みたいな人だから。
「何か失礼なことを考えてませんか?」
「い、いえ、そんなことは」
彼の洞察力って侮れない。
ところどころ私を買いかぶりすぎてるところはあるんだけど。
「ふふ、冗談です。本当はもっと早くにこういう時間を用意したかったのですが、リリナは働くことが好きな様子でしたので、あまり邪魔をしても悪いかなと」
「へ?」
……別に、特別に仕事が好きなわけじゃないんだけど。
「もしかして、失礼なことを言いましたか? 仕事、そんなにお好きではないのですか?」
「ええ、まあ。あればあるだけしますし、人に喜んでもらうことは好きですけど。どちらかといえばプライベートと仕事は両立したいタイプですから」
「なるほど」
ジュンが驚いてる。
えっと、私のキャラクターを誤解されてましたか?
「王子といた頃はずっと仕事ばかりしていたと聞いていたもので、そういうことに「生きがい」や「やりがい」を感じるタイプなのかなと」
四六時中、休みの日でも構わず仕事のことを考えているタイプの方。
正直、そういう人といると疲れるし、私は仕事をしている時間とそうでない時間のオンオフは切り替えたいタイプなので、色々と誤解があったのかなと思う。
「そういえば、まだ一度もデートをしていませんでしたね」
おお、珍しくジュンからの積極的なお誘いだ。
「ではその、今提案されていたように、街へ散策に行ってみたいです。ちゃんと、恋人らしい装いで」
「……しかし自分から誘っておいて何ですが、本当に構わないのですか? 元は平民の僕とそういう関係性になることに多少は抵抗があると思うのですが」
「そんなことを言ってたら子供を作れませんよ?」
「ゴホッ」
ジュンがむせた!?
「あ、ごめんなさい。直接的すぎましたね。でも、私たちの関係だっていつか必ず進みますし、恋人でも妻でもない宙ぶらりんな状態でいることは、どちらにとっても良くないかと」
「なるほど。現実的にはそうだと思いますが、僕が心配しているのはあなたの心の方で……」
「お優しいんですね」
思わずジュンの手を握ってしまう。
「私、ジュンのことを嫌だとかそういう風に思ったことは一度もないですよ。それに、周りが何と言おうと大事なのは私たちの気持ちだと思っています。私はジュンとステップアップしていきたい。だから、あとはジュンの気持ち次第なのだと思いますが」
「その……手を……」
ジュンの顔が赤い。
こんな彼、初めて見るかもしれない。
「ええと、明日のデートプランを練りますので、少し一人にさせていただきます」
「あ、私も一緒に考えましょうか?」
「あまりデートに詳しくないので、今回はアドバイザーを活用します。申し訳ないですが、次回から協力して考えましょう。まずは有識者の意見を聞くべきだと思います。では、失礼」
急ぎ足でジュンは部屋を出ていった。
「……照れてるの丸分かりなんだけど」
サバサバして恋愛ごとに冷めてるイメージの彼に、意外な一面を見た気がした。
「真っ赤なジュン、可愛かったな」
さっそく思い出し笑いをしてしまう。
もっとたくさん、私の知らない色々な表情のジュンが見たいなって、私は思い始めていた。
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