自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)

みかん畑

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王の力

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「愚息め」

 黙って事の成り行きを見守っていた陛下が舞台へ足を向ける。

 そして、勝者となったジュンと対峙した。

「ふむ、やはりジュリアに似た瞳の色だな」
「……何だ?」

 ジュンと国王陛下、二人が正面から向き合い、視線を交わす。

 陛下はジュンの疑問に答えることはなく、倒れたレギの遺体に手を触れた。

「陛下、お召し物が汚れます」
「……よい。どうせ全てなかったことになるのだ。気にする必要などない」

 臣下の言葉も無視してレギに触れ続ける陛下。

 そして、ソレは起こった。

 まるで時間が逆行しているかのように。
 死んだはずのレギの傷が塞がり、衣服を濡らしていた血液が彼の身体へと戻っていったのだ。

「あ、悪魔の技だ!」

 参列していた貴族が悲鳴を上げるが、陛下は気にした風もなく傷を癒した。

 そして、立ち上がる。

「ジュン・アルガスよ。此度こたびの戦い見事であった。しかし、見ての通りレギの傷は癒えた。遠からず奴は目を覚ますだろう。そして、それはお前にとっての敗北を意味する」
「……何を言っている」
「ジュンよ。王になる気はないか」

 唐突な誘い。
 陛下は冗談を言っている風には見えない。
 彼の眼光は冷たく、真剣だ。

「俺は……王になどならない。ギランドの街でリリナと暮らす。それ以上に望むものなどない」
「実に残念だ。お前は私が血を分けた王の器。王になれば全てを手にすることができたというのに」

 ジュンが遠くへ行ってしまいそうな気がして、私も舞台へ向かう。
 アレンに制止されたけど、このまま黙って成り行きを見ていることなんてできない。

「……陛下」
「リリナ・カフテルか。今のお前に用はないが」
「一つだけ質問に答えてください。今の奇跡は何ですか? なぜ、彼の傷が何事もなかったかのように塞がったのですか?」
「古き時代、女神との盟約によって得た力が、私にはあるのだ。かつてこの世界には数多の神があり、そのうちの一柱はトリテ王国の王子と盟約を結んだ。この身に宿す奇跡は、お前たちの常識で推し量れるものではない」

 何か嫌な予感がする。

「さて、頃合いだろう。王になるべきはレギ・フードル。お前たちの配役には手を加えさせてもらうぞ」
「オカルトじみた話は結構だ。行くぞリリナ」

 ジュンが私の腕を掴み、走り始める。
 だけど、地面がグニャグニャに波打って、立っていることすらできなくなる。

「チッ。ふざけたオカルトだ」
「ジュン、あっちを見て!」

 世界が徐々に白い光へ飲み込まれていく。
 その中心には陛下と、蘇ったレギがいた。

「すごい! 父上、俺の身体が元に戻っているよ!」
「これこそが王の力。お前が受け継ぐべき力だ」

 光の渦の中、陛下の身体がボロボロと崩れていく。

「父上!?」
「大きな力を使えば代償を払うことになる。だが、レギよ。お前に道を譲ることが父の望みであった。この国を託すぞ」

 光が強まる!

「リリナ……ッ!」
「ジュン!」

 私と彼の輪郭が溶けて、世界がバラバラになっていく。

 身体と心の境界線が消えて、私はジュンと一つになった。

 そうして、世界は完全なる光に呑み込まれた。
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