自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)

みかん畑

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エピローグ

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「いやあ、すみませんねぇ。わざわざ祝ってもらっちゃって」

 ジュンの元副官、アレン・クーイが宮廷付きのメイド、カレンさんと結婚するらしい。
 知己だけが集まった、深夜の宮廷のバルコニー、満点の星空の下で私たちはグラスを傾けて酔いしれている。

 王様になったジュンは元部下たちを特別に優遇することはなかったけど、生まれではなく実力を重視した彼の政策の結果、何人かは這い上がってきて、今も宮廷で働いていたりする。

 特に、アレンは優秀な成績を収めて情報収集に特化した情報部隊に入隊していて、宰相の直轄で訓練を受けているというから驚きだった。

「おめでとうございます、アレンさん」
「ちょっと、さんづけはよしてくださいよ! 王妃様にさんづけなんかされたら、怒られちゃいますって!」
「すみませんつい癖で」
「だからその口調をー!」
「リリナを虐めるな。非公式の場なんだからお前が我慢しろ」
「理不尽だ!」

 お酒が入ってワイワイと盛り上がってる。
 少し風に当たりたくなって離れた場所へ移ると、カレンさんと目が合った。
 彼女は幸せそうにアレンを見つめていた。

「ご結婚、おめでとうございます」
「リリナ様、ありがとうございます。私と夫を誘っていただいて」

 夫……。当たり前に発せられた言葉で、ああー、アレンてば結婚したんだなぁ、と思う。

 まあ、今日の身内だけの打ち上げはアレンの結婚にかこつけた息抜きみたいなところがあるから、むしろ感謝したいのはこちらの方ではある。

 ジュンは玉座について以来、精力的に働いていて、その目標は王に依存しない枠組みを作ることにあるらしかった。

 彼はいずれ王政がなくなり、人々が自分たちの意思で、知恵を絞って生きていくことを望んでいるみたいだった。

 その為に、まずは平民たちに知識をつけてもらい、積極的に政に関われるよう、意見を出せるようになる為の地固めをしているらしかった。

 私は、何が本当に正しいかなんて分かってないけれど、今日みたいに身分に関係なく集まって、お酒を飲んだり話をできたりしたら楽しいと思うから、ジュンの望む世界を実現させてあげたいなって思ってる。

「また今日みたいに集まりたいですね。次も誘ったら来てくれますか?」
「もちろんです。でも、何だか不思議です。今こうしてリリナ様と話せているのが。何が切っ掛けになるか分からないですね」
「私も、人の縁って不思議だと思う」

 私とジュンがこうして一緒にいられるのは、アリシアを助けたのが切っ掛けだったと思う。

 でも、アリシアを拾った時はこんなことになるなんて思ってなかった。

 ただ、祈ってはいたけど。ジュンともう一度一緒になれますようにって。

「カレンは、宮廷でアレンに助けてもらったのが切っ掛けだったのよね」
「……はい。前国王が、神様の力を悪用していた関係で、近くにいた私にも天罰があるんじゃないかって、皆が私を怖がって、避けてて、元々あった婚約も破談になって……。そうしたらどこからか噂を聞きつけたアレンがやってきて、私に付き合おうって言ってきたんです。傍に居て、自分が何ともなければ噂なんかすぐに消えるって。期間限定の偽物の恋人だったんですけどね」
「でも、いつの間にか本物になってたんだ?」
「……はい。その、彼は私と付き合う気はなかったみたいなんですけどね」

 え!? そうだったの!?

「ひどい。付き合う気もないのにちょっかいかけてたってこと!?」
「あ、違うんです。彼の亡くなったお姉さんに私が似てたから」
「あー……」

 アレンってば、女好きの癖に身内はすごく大事にしてたからね。
 特にお姉さんと妹さんのことは守れなかったことをずっと悔いてて、彼の傷の一つらしい。

 彼は、自分たちを育てる為に無理をして、流行り病で亡くなったお姉さんのことをずっと悔いてた。だから、カレンさんを助けることで過去を乗り越えようとしたのかもしれない。

「付き合えないって、何度も断られて……。最後は、その」

 彼がトイレに入ったところを追撃して関係を持ったんだったよね。

 彼女が言いづらそうにしてたのに無理に聞き出してしまったことがあるから、その馴れ初めだけは二度と聞かないようにしている。

「前陛下のことはすごく残念だったと思います。それでも、私に切っ掛けをくれたのは陛下の事件だったから、気持ちとしては複雑ですね」
「時間って、いいことも悪いことも全部押し流して、無理やり私たちを前に進めちゃうからね」

 結果っていうのは蓋をあけてみなければ分からない。

 舞い降りた不幸が後の幸福に繋がることもあれば、その逆もある。
 せっかく玉座を手に入れたのに、自分で破滅を招いたレギのように。

「運命を選ぶことはできなくても、正しい祈りをいていきたいなって、私は思う」
「……そうですね」

 それが、人の身にできる唯一のことだと思うから。

「幸せになってね、カレン」
「はい。リリナ様の未来にも、幸福がありますように」

 こっちの様子を見ていたジュンと目が合う。

 招かれて、近づくと、すぐに腕の中に収めてキスをされた。

「もう、独占欲強すぎ」
「俺を放っておくからだ」

 わざと怒って見せると、笑われてしまった。

「王様になっても変わらないの好き」
「これくらいのことじゃリリナへの思いは揺るがないからな」

 ジュンと手を握り合う。

 星空の下で、私たちはいつまでも手を握り合う。

 満点の星空の輝きが、皆の正しい祈りでありますように……。

 なんてことを、柄にもなく私は考えたりしていた。
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