妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑

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 レールディア・ゲーテを出迎えた辺境伯、ユージン・リードは、空の馬車を検分するとつまらなそうに自分の屋敷にレールディアを招き入れた。

 ユージンは黒髪の、冷たい眼差しをした美青年だった。
 思わず見惚れる程の美貌を持つが、同時に酷く醒め切った目をしている。

「お前がレールディア・ゲーテか。まさか本当に持参金すらなく参上するとは、よほど豪胆なのか知恵が回らないのか」
「ええと、馬鹿ですがあなたに尽くしたいと思います。よろしくお願いします」
「なるほどね。馬鹿か」

 レールディアに屋敷を案内すると言って連れまわしたユージンは、最後にレールディアを寝室へ招くと、状況の分からないレールディアに遠慮もなくキスをした。真っ赤になったレールディアが逃れようとするのを、細腕を掴んで制すると、ドレスを剥いでベッドに転がす。

 レールディアは状況が分からず、目を白黒させている。

「ええと、なぜ急にキスを……」
「やはり馬鹿だな。お前は子を孕ませる為にここへ呼ばれたのだ。ここでのお前の役目は俺に犯されることだけだ」
「そんなこと」

 聞いていなかったと、レールディアは呟く。

 愉快そうにユージンは哂った。

「持参金もなく女を受け入れる家があるか。そういう約束だったんだよ。幸い、お前は顔と胸の大きさだけは俺好みだ。たっぷりと調教してやる。俺好みにな」
「そんなの、愛情がありません」
「愛情などあるはずがないだろう。お前、何を勘違いしているんだ?」

 家を出れば、誰かに愛してもらえると思っていた。
 レールディアはヒックヒックとしゃくり上げる。
 まるで幼子のような反応に、ユージンは困惑した。

 だが、常日頃、辺境伯を馬鹿にしている王都の貴族を犯せるのだ。
 これ程、愉快で楽しいことはない。
 周囲の反対を押し切り持参金も持たない女を呼び寄せて正解だったと思う。

 ユージンはレールディアの腕を掴んでベッドに組み伏せる。

「いやぁー!」
「大人しくしろ」
「お許しを……。怖い。怖いの」

 ガクガクと震えるレールディア。死んでしまうのではないかと言うほど身体を震わせている。

「お前も、俺が辺境伯だから足元を見てるのか。お前の家から送られてきた手紙に書かれてあったぞ。王都では毎晩男を変えて楽しんでいたんだろうが」
「……私、処女です。た、確かめてもらっても構わないから、せめて痛いのはやめてください」
「お前、家族に虐待でもされていたのか?」

 コクコクと、レールディアが頷く。

「チッ。興が削がれた」

 ユージンは突然身を翻す。

「抱かないのですか……」
「お前が怯えるからだろうが!」

 ユージンが怒りに任せて怒鳴る。

「こいつ、男爵家に送り返してやろうかな」
「それだけは……!」

 レールディアが慌てたようにユージンに縋り付く。

「俺は子供が欲しい。子が産めぬというのであれば送り返すしかない」
「子供は産みます。時間が欲しいのです」
「時間だと? 何の時間だ」
「愛を育む時間が……」

 ユージンは冗談かと思ったが、大真面目な顔で、レールディアはユージンに組みついてキスをする。

 真っ赤な顔で、レールディアはユージンを見つめる。

「毎日、一ステップずつがいいです。駄目でしょうか」
「フン。ひとまずキスは許すのか」
「はい。わたくしはユージン様の妻ですから」

 そうか。そういう試みもあるいは悪くないかもしれない。

 ユージンはキスをする度に頬を赤らめるレールディアに、多少の興味が湧くのを自覚した。

 キスの仕方一つで、レールディアがこの手のことに慣れてないのが分かったのである。どうやら王都で毎晩股を開いていたというのは真っ赤な嘘らしい。

 契約違反で家へ送り返すこともできたが、抱ける日までは手元に置いておくことにした。

「分かった。お前の考えに乗ってやろう」

 ぱあっとレールディアが顔を明るくする。

「ユージン様はお優しいのですね!」
「いや、俺のどこがだ」
「ユージン様と交わる前に、私も知識を集めますね?」

 不安しか湧いてこない言動である。

 ユージンはレールディアの肩に手を置き、説得した。

「この手のことは夫である俺以外に尋ねるものではない。お前の身体を狙う者もあるかもしれないからな」
「私を気遣ってくださってる……。私、ユージン様に嫁ぐことができて果報者です!」

 薄々勘付いてきたが、こいつ、幸せのハードルがとんでもなく低いな。
 ユージンはそう思いつつ、妻を着替えをさせる為のメイドを呼んだ。
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