妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑

文字の大きさ
5 / 12

5

しおりを挟む
 天が裂け、手が伸びてきた。
 それは、白昼夢のような光景であった。

 突然、暗雲の奥から白い老人の手が現れ、王都近郊の街を丸ごと掴んで握りつぶしたのである。
 王都に居た者は悪夢のようなその光景を、ただ黙って見ていることしかできなかった。

 玉座にて、若き賢王クードリファは水晶越しにその光景を見ていた。

「馬鹿な……。異界に封じられていた魔王が復活した……だと」

 王都には魔王の復活を妨害する為の聖人が居たはずだ。
 彼らがいる限り、異界への扉は固く閉ざされている、はずだった。

 クードリファは水晶に答えを出させる。
 そして、唖然とした。
 なんと、王都に居たはずの聖人達の血が、途絶えているのである。

 かつて数百年前、古の賢者ガルスは王都に居た者達に聖人の祝福を与え、彼らの子孫の心が清らかな内は魔王の復活を阻止できるよう呪術を行使した。

 以来、封印は聖人の血によって守られていたはずだが、それが消え去っていたことに恐怖を覚える。聖人がこうまで途絶えてしまうとは……。

「む……?」

 水晶に一点の輝きが示される。
 それは、聖人がまだ死に絶えていなかったことを意味した。

「だが、これは辺境伯の……直接行って確かめるか」

 賢王はグリフォンに騎乗すると、辺境へと飛び立った。

 そうして、賢王が飛び立つと同時刻、レールディアはユージンから贈られた指輪が強く発光していることに気づく。

 二人はいつものように畑の土壌に魔力を流して、実りをよくしてから屋敷へ帰っていく最中だった。

 そんな折、突然レールディアの薬指の指輪が強く明滅し始めたのだ。

「レールディアの魔力に指輪が反応しているのか?」
「ユージン様、私から離れてください。何かが起こるのかも!」

 怯えるレールディアの肩を、ユージンが強く抱きしめる。

「離れてください! 危険です!」
「黙れ! 指輪が……チッ。外れなくなってるのか」
「キャッ!」

 視界が真っ白になる。レールディアはユージンの腕の感覚を覚えて、申し訳なく思う。

(この勇敢なお方は、私を決して見捨ててくださらないのだわ)

 そう知覚した時、レールディアは久しぶりに己の魔力と向き合うことができた。ずっとコンプレックスだった自分の魔力の源と、向き合う。

 暴走している魔力を抑え込んで、ユージンだけは守りたいと願う。
 そして、レールディアは自分に隠されていた真の魔法を理解した。

(……そうだったのね。私の第二魔法はこの時の為に)

 光の明滅が収まった時、ユージンは自分の足元に巨大な魔法陣と、光の守りがあるのを見た。

「これは……なんだ?」
「私はどうやら聖人だったらしいのです」
「聖人? あの魔王を封じる力を持つという奴か」
「ええ。その……今まで眠っていた力が、ユージン様と心を通わせたことで目覚めたようなの」
「それは何とも照れくさい話だが、なぜ今このタイミングなんだ」
「……王都の方から、邪な力を感じます」

 王都上空、巨大な老人の瞳が、眼下の街を見下ろしていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

聖痕を奪われた無自覚最強聖女、浄化力が強すぎて魔界の王子を瀕死(HP1)にしてしまう。物理的に触れられないのに、重すぎる愛で逃げられない

唯崎りいち
恋愛
「役立たず」の聖女アイドル・私。教皇に「悪魔の聖痕だ」と追放され、魔界の森に捨てられたけれど……実は私の聖痕、世界を浄化しすぎる最強の力でした。 そこで出会ったのは、呪いでHP1の瀕死な魔界王子。 「君に触れると浄化で死にそうだが……一生離さない」 いや、死んじゃいますよ!? 王子が写真をばら撒いて帝都を大混乱に陥れる中、私は「専属契約(ガチ恋)」から逃げられないようで――!? 勘違い聖女と執着王子の、ドタバタ魔界ラブコメ!

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。 聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。 やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。 女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。 素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。

王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!

奏音 美都
恋愛
 ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。  そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。  あぁ、なんてことでしょう……  こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

処理中です...