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王都はパニックに陥っていた。
近郊の町が削り取られ、巨人の手に握りつぶされたのだ。
当然、生存者など期待できないし、王都上空には既に巨人の目がある。
「何よあいつ! これ以上近づいてきたら魔法で攻撃してやるんだから!」
息巻きつつ、上空を睨むアズナ。
彼女は両親と共に、姉の嫁いだ辺境まで逃げる算段をしていた。
「まさかこんなことになるなんて……。逃げるのはいいが、あの子が私達を受け入れてくれるか……」
「はぁ? 何言ってんのよ。あいつは落ちこぼれなんだから、ヘコヘコ頭を下げる必要なんてないでしょ! ていうか、辺境伯もあんなグズ寄こされて怒ってるんじゃないの? なんなら、向こう居る間だけでもあたしが伯爵の相手してあげてもいいけど」
「レールディアは仲睦まじくやってるそうだよ」
父親が小さな声で呟く。
アズナはそんなわけないと鼻で笑った。
「あの器量の悪い女が気に入られるわけないでしょ」
「手紙が来ていた。毎日幸せに暮らしていると」
「あたし達への当てつけよ!」
「ふたりともいい加減にして……!」
母のテレサがヒステリーを起こしている。
「今はそんなことどうでもいいのよ! このままだ全員殺されるのよ!? そんなどうでもいい話、向こうについてからやりましょうよ!」
アズナにとってはいつも見下している母親であるが、あまりの剣幕に何も言えなくなる。
(……あいつが変な手紙寄こすから)
苛立ちつつ、アズナはそんなことを考えていた。
そして、命からがら王都から脱出し、辺境伯領の目と鼻の先まで辿り着いたとき、アズナ達は国境の向こうに大掛かりな光の結界が展開されているのを見た。
「なにこれ……」
見たこともない大魔法に戸惑っていると、検問をしていた騎士が嬉しげに答えた。
「これは領主様の奥方であるレールディア様によって張られた結界ですよ。邪悪なものを遠ざける光の結界だそうです。おかげで、国境を警備する我々も安心して職務に励ます。いや、あの方は本当に素晴らしい奥方だ」
「は? あんた何寝ぼけたこと言ってんの。あいつにそんな魔法使えるわけないじゃない」
「……失礼ですが、あなた様は?」
「よしなさいアズナ。娘がとんだ粗相を……」
父がアズナの頭を掴み、下げさせる。
「離して! 何で平民相手に頭を下げなきゃいけないのよ! あたしはこいつが嘘をついてるから――」
「黙りなさい」
パシン、とビンタされる。
「え……?」
「私は今日までお前を甘やかしすぎたようだ。こんなにも常識がないとは」
「あたしは、三つも魔法が使えて……」
「だからどうした。ここで騒ぐと検問の妨げになる。すでに後ろに列ができている。そんなことにも気づかなかったのか?」
まるで価値のないような者を見るような目で見られて、アズナは自尊心が傷つくのを感じた。
父娘は荷物を騎士に見せて、検問を超えようとする。
と、ガチンと音がして、結界に阻まれた。
「は?」
「おかしいですね。こんなこと今までなかったのに……」
「まさか、レールディアが私達を拒絶しているのか?」
「そんなわけないじゃない!」
アズナが憤り、結界に踏み入ろうとする。
しかし、結界に阻まれて彼女は結界の内側に入ることができなかった。
「嘘……でしょ」
呆然とする彼女達の前に、結界がそびえたっていた。
近郊の町が削り取られ、巨人の手に握りつぶされたのだ。
当然、生存者など期待できないし、王都上空には既に巨人の目がある。
「何よあいつ! これ以上近づいてきたら魔法で攻撃してやるんだから!」
息巻きつつ、上空を睨むアズナ。
彼女は両親と共に、姉の嫁いだ辺境まで逃げる算段をしていた。
「まさかこんなことになるなんて……。逃げるのはいいが、あの子が私達を受け入れてくれるか……」
「はぁ? 何言ってんのよ。あいつは落ちこぼれなんだから、ヘコヘコ頭を下げる必要なんてないでしょ! ていうか、辺境伯もあんなグズ寄こされて怒ってるんじゃないの? なんなら、向こう居る間だけでもあたしが伯爵の相手してあげてもいいけど」
「レールディアは仲睦まじくやってるそうだよ」
父親が小さな声で呟く。
アズナはそんなわけないと鼻で笑った。
「あの器量の悪い女が気に入られるわけないでしょ」
「手紙が来ていた。毎日幸せに暮らしていると」
「あたし達への当てつけよ!」
「ふたりともいい加減にして……!」
母のテレサがヒステリーを起こしている。
「今はそんなことどうでもいいのよ! このままだ全員殺されるのよ!? そんなどうでもいい話、向こうについてからやりましょうよ!」
アズナにとってはいつも見下している母親であるが、あまりの剣幕に何も言えなくなる。
(……あいつが変な手紙寄こすから)
苛立ちつつ、アズナはそんなことを考えていた。
そして、命からがら王都から脱出し、辺境伯領の目と鼻の先まで辿り着いたとき、アズナ達は国境の向こうに大掛かりな光の結界が展開されているのを見た。
「なにこれ……」
見たこともない大魔法に戸惑っていると、検問をしていた騎士が嬉しげに答えた。
「これは領主様の奥方であるレールディア様によって張られた結界ですよ。邪悪なものを遠ざける光の結界だそうです。おかげで、国境を警備する我々も安心して職務に励ます。いや、あの方は本当に素晴らしい奥方だ」
「は? あんた何寝ぼけたこと言ってんの。あいつにそんな魔法使えるわけないじゃない」
「……失礼ですが、あなた様は?」
「よしなさいアズナ。娘がとんだ粗相を……」
父がアズナの頭を掴み、下げさせる。
「離して! 何で平民相手に頭を下げなきゃいけないのよ! あたしはこいつが嘘をついてるから――」
「黙りなさい」
パシン、とビンタされる。
「え……?」
「私は今日までお前を甘やかしすぎたようだ。こんなにも常識がないとは」
「あたしは、三つも魔法が使えて……」
「だからどうした。ここで騒ぐと検問の妨げになる。すでに後ろに列ができている。そんなことにも気づかなかったのか?」
まるで価値のないような者を見るような目で見られて、アズナは自尊心が傷つくのを感じた。
父娘は荷物を騎士に見せて、検問を超えようとする。
と、ガチンと音がして、結界に阻まれた。
「は?」
「おかしいですね。こんなこと今までなかったのに……」
「まさか、レールディアが私達を拒絶しているのか?」
「そんなわけないじゃない!」
アズナが憤り、結界に踏み入ろうとする。
しかし、結界に阻まれて彼女は結界の内側に入ることができなかった。
「嘘……でしょ」
呆然とする彼女達の前に、結界がそびえたっていた。
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