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元と俺
25、元に付き添って
ご飯を食べ終えた俺は今、リビングで今日のスケジュールをメモしていた。
えーっと、さっきの話から今日は元、優、光、夜の順番で迎えに行けばいいと……。
そう書き終えた俺が顔を上げると、目の前には光が立っていた。
「直ちゃん、俺と優君はもう出るから見送りして~!」
「そうか、二人は学校行くんだったな」
光に急かされるように玄関に行くと、優が靴を履いて待っていた。
そして俺を見た優は、心配そうな顔をして言ったのだ。
「いいか、直……俺が出た後に元から変な事されたらすぐに連絡しろよ……わかったな?」
「変な事ってなんだよ……?」
「直に触れる事とかだ」
「優君、それだけでダメなのはおかしくな~い?」
俺も同意見なので、コクコク頷いておく。
「直に触れていいのは俺だけだから、おかしくない」
優があまりにも直球で言うせいで、俺は恥ずかしくて固まってしまった。
そして見つめ合っている俺達の変な空気を壊してくれたのは、焦っている光の声だった。
「もう、優君! そんな事言ってる場合じゃないよ、早くしないと本当に遅刻するってば~。それじゃあ、直ちゃん俺達行ってくるね~!!」
「ああ、気をつけて行ってこいよー!」
優の腕を掴みながら、手を振る光に俺も手を振り返す。
それなのに、優はまだブツブツを文句を言いながら俺を見ていた。
「まて、光……俺はまだ直に気をつけて欲しい事を伝え切れてない……!」
「それは後でまとめて連絡でもすればいいでしょ」
「いや、ここは直接言わないと……!」
言い合いをしながら遠のいていく二人を見送った俺は、リビングに戻ろうとして仁から連絡がきている事に気がついたのだ。
そして俺は、すぐにその内容を確認した。
『3限の授業は休講らしい。今日俺達はこれしか受ける授業がないから丸一日休みになった訳だ。でも休みだからってマネージャーの仕事し過ぎて、無理するなよ?』
それを読んだ俺は、コイツの心配性も度を超えてるよなと少し笑ってしまったのだ。
リビングに戻った俺は突然休みになってしまった事に、今日の予定をどうしようかと悩んでいた。
そしていつのまにか俺の前に座っていた元は、悩んでいる俺を見て不思議そうな顔をして言ったのだ。
「あれ、直は今日大学じゃなかったのか?」
「いや、それが休講になって……今日の予定無くなったんだ」
「ふーん、そうか……でもせっかく時間が空いたならさ、昼から俺の付き添いついでに一緒に挨拶回りをしてみないか?」
「でも昨日、皆があんなに車から出るなって……」
「大丈夫だって。モデル撮影してる間も目の届く所にいてくれれば、直が絡まれても俺がすぐに助けに行くからさ」
そう言う元は、どうやら俺の事をそれ程心配していないようだ。
確かに元のスキンシップが多いのだって優へ見せつける為だし、俺の事一番何とも思ってなさそうだもんな……。
「そんな心配そうな顔すんなよ。今回の撮影スタッフは全員俺の知り合いなんだ。まあ、今日はイレギュラーがあるから他の人も来てるかもしれないけど、そこは俺がカバーしてやるさ」
その自信満々な瞳は、俺に拒否権はないと言っていた。
「わかったよ……元についていく」
どうせ今の俺が、元の言葉を断れるわけがない。
それに俺にはやり直す前の世界で本当にコイツが俺を陥れた犯人なのか、もう少し確認したいと思っていた。
きっと元の事をもっと知れば、それがわかるかもしれないからな……。
そう思いながら、俺は元の付き添いをするための準備を始めたのだった。
昼食後、俺は元に連れられてとある撮影スタジオに来ていた。
元の仕事はモデルだと聞いていたけど、それにしては気合が入ってるなと俺はスタジオ内を見回す。
元は身長も高いし筋肉もついているのでとてもスタイルがいい。
だから本格的なモデルの仕事もしている元は、有名ブランドからもよくオファーがきているようだった。
そして時間より早めにスタジオ入った俺達は、準備前に色んな人へと挨拶をしていた。
元が俺を紹介する度にその名前に驚かれ、過去の事を聞かれるせいで俺はウンザリしてしまう。
それでもスタッフはいい人ばかりだったので、元が俺の事はあまり広めないようにお願いすると、皆快くそれを受け入れてくれたのだ。
こうして俺がなんとか挨拶回りができるようになってきた頃、なにやら出入り口が騒がしい事に気がついた。
よく見ると人集りができている所には、スーツをカッコよく着こなす若い男性が見えたのだ。
顔もカッコいいし何処かの俳優さんなのだろうかと不思議に思っていると、元が説明をしてくれた。
「いいか直、あの人は今回撮影するブランドの副社長、相田進さんだ」
「え、副社長なのに若くない?」
「まだ20代だけど社長の御子息なんだとさ。しかもとても有能で既に副社長を任されてるって話だ」
もしかして俺も、あの人に挨拶しないといけないのだろうか……?
そう思った俺は突然のお偉いさんに、緊張で固くなってしまう。
「やっぱり、挨拶は必要だよね……?」
「実は今回のモデル撮影はあの人が俺を直々に推薦した結果実現したらしい。それなのに俺が挨拶しないわけにはいかないからな……直、一緒に行くぞ」
「わ、わかった」
俺達は急いでその有名ブランドの副社長の所に向かうと、すぐに挨拶をした。
「おはようございます。P・Mエンターテイメントから来ました、Cronus*Fantazumaの火野元です」
「おはようございます。私、Cronus*Fantazumaのマネージャーをしております風間直です。この度はうちの火野に声をかけて頂き有難うございます」
副社長は名刺と俺を交互に見ると、一瞬何かを考えてから首をかしけだのだ。
なんだろう……俺、もしかして既に失礼な事でもしただろうか?
「君、もしかして……昔、子役で有名だった風間直君じゃないか?」
「え、あの……。そうですけど?」
「ああ、やっぱり。あの天才子役だった風間直なんだね!!」
そんな大声で言ったら、名刺を渡してない人にまでバレるからやめて欲しいのに……この人は副社長さんだからと、俺はぐっと堪えていた。
「そ、それは子供の頃の話ですし、今はただのマネージャーですから……」
「そうか、マネージャーなのか……。それにしても君は弟の風間優みたいに、身長は伸びなかったんだね」
「……そ、そうですね」
「子役の時から小さくてかわいいとは思っていたけど、そのまま大きくなったようだね。もしかして身長が伸びなかったから芸能界を辞めたのかい?」
凄い嫌味を言われているのは気のせいだろうか?
俺は反論しそうになるのを堪えて笑顔で返していた。
「いえ、身長は関係ないです。それに今の私は元のマネージャーですので……」
「でも、こんなに綺麗な顔してるのに勿体ないな。今度私が監修してる服のモデルやってみない?」
「え、いや……」
俺が押しに弱いのはわかってるけど、それでも絶対芸能界には戻りたくない……。
「君なら絶対に過去と同じぐらい、いやそれよりも大物になれると思うのだけど?」
「あ、あの……」
上手く断れなくて困ってると、俺は突然元に腕を引かれたのだ。
そして気がつけば、俺を守るように元が俺の前に出ていた。
「相田副社長、今日は俺の撮影ですよ? それにマネージャーを取られたら俺達が困るのでやめて下さい」
元が俺を助けてくれるとは思っていなくて、俺は驚いてしまう。
そして副社長はそんな元の姿に苦笑いをしていた。
「そうだったね。それでも俺は良い返事を待ってるから、この名刺だけでも受け取ってくれるかい?」
そう言って俺に無理矢理名刺を渡すと、副社長は「それじゃあ、またね」と去っていったのだ。
しかも受け取った名刺の裏には、モデルがやりたくなったらいつでも連絡が欲しいと書かれていた。
それを見た俺はモデルなんて絶対にやりたくないと、知らぬふりをしてそれを名刺入れにしまったのだった。
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