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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!
4、俺は悪魔なので(ウル視点)
しおりを挟むまさかあんなに似ているなんてな~。
そう思いながら俺はデオを置いて宿を出ていた。
これ以上あそこにいたら、俺の理性がもたない気がしたからだ。
なにより、俺が何故デオを追いかけて来たのかは理由がある。
デオの弟くんに頼まれたからだ。
俺は、その弟くんが好きだった。
女好きだった俺が初めて一目惚れした相手だったから特別に思っていたのに……もう俺は彼の一番になる事はできない。
俺はそれでもパートナーになれればいいかなと思ってたのに───。
本当さすが兄弟だよね。
一目見ただけで、俺の心をこんなに揺さぶってくるなんて……。
そんなデオの見た目は、その弟くんを大人に成長させた美人系だった。
ようはその弟に一目惚れしたと言うことは、デオの容姿も俺のタイプにドンピシャだったわけだ。
先にデオに出会っていたら、一目惚れしていたかもしれないと思うほどには……。
そして話せば話すほど、彼が欲しくなってしまった。
なによりも嬉しかったのは、デオが進化する事を目指していると言うことだった。
そのことに俺はとてつもなく興奮した。
何故なら、俺がすでに進化した人間だからだ。
そしてこの性格のせいか、俺は悪魔となっていた。
あまり知られていないが、進化した上位種は同じ上位種をパートナーにする事が多い。
上位種にとってパートナーとは、一生をともにする相手の事だ。
それは俺達が長寿であるため、生涯を共にするパートナーと誓約を結ぶことで、精神を安定させる事ができるからだ。
しかし普通の人間とパートナーを結べば、相手が先に死んでしまうため、進化をした上位種は進化した者同士でパートナーを結ぶことが多い。
そして俺も、もちろん進化した人とパートナーを結びたかった。
だから進化する可能性のあったデオの弟と、パートナーを結ぶ約束をしていた。そして彼は多分もう進化している。だけど彼はきっと俺一人だけとは結んでくれないだろう。
そのときはそれでもいいかかと思っていたのに、デオを見たらその気持ちが揺らいでしまいそうだった。
なにより、俺はデオに期待してしまったのだ。
デオは強い。きっといつか進化できると思えるほどに……。
だから早く自分のモノにしたくて、俺はこの興奮を抑えられなくなっていた。
でも、まだデオに手を出すわけにはいかない。
だってすぐに逃げられたら困るからね……。
だからこそ今の俺には、この興奮を発散する必要があった。
そのために花街に向かっているわけである。
しばらくどのお店にしようかと悩んで歩いていると、後ろから俺を尾行する存在がいることに気がついた。
あー、後ろからデオがついて来てるのか~。
そう思うとなんだか少し嬉しくなってしまった俺は、撒くのは簡単なのにデオで少し遊んでみることにした。
あんな真面目そうな顔して、遊んだことなんてないんだろうなぁ~。
是非とも花街で遊んでみて欲しいよねぇ。
そう思い悪魔のような笑みをこぼした俺は、デオルがついて来ているのを確認して、わざと本番まで出来るお店を選んで入ったのだった。
そして、今俺は女の子達に囲まれていた。
「それでねぇ~、俺が空高くまでジャンプしたらそいつらは、ビックリして逃げていったんだよ~」
「すご~い、流石ウルさん!」
「えー、でも空高くなんて嘘でしょ~?」
「ウル様ならできますよねぇ~」
「あははっ、それはご想像にお任せしちゃおうかなぁ~」
そう言うと、女の子達はキャハキャハ笑ってくれる。
こうやって女の子と楽しい時間を過ごすのもいいけど、今の俺にはなんだか物足りない。
そんな俺の耳へと、隣の部屋に誰かが入って来る音が聞こえた。どうやら思った通りデオは俺の後を追いかけて来てくれたようだ。
デオはその女の子と特に何かをする様子もなく、こちらの扉を少し開けた。
そして俺は女の子と喋っているだけで、何もしていない。それなのに、その扉から俺達を除くデオが驚いて目を見開いたのがわかった。
その姿に俺は興奮した。
あぁ……その顔、その表情。凄くたまらない。
本当はデオを今すぐに襲いたいけど、我慢するためにここに来ているのだ。
ならばこんなのは早く終わらせてしまおうと、俺は服を脱ぐためにボタンを一つ外した。
俺の姿を見て、デオは一体どんな顔をしてくれるのか……楽しみだよ。
「じゃあ。可愛いお嬢さんを悪魔のお兄さんが襲っちゃおうかなぁ~」
「キャア~」
「ウルさん待って~」
「なら私が最初で!」
「ははは、俺は平等に愛を与える男だからね~。安心して欲しいよ?」
そう言って、ベットの上であまり興味のない女の子達をニコニコと見回す。
さあ、デオはどんな顔をしているかなぁ?
そう振り返ろうとしたとき、そちら側から叫び声がした。
「旦那様、いけません!!」
その声とともに、こちらの部屋に飛び出してきたデオの姿がそこにはあった。
いきなり現れた男に、俺の周りにいた女性達は悲鳴を上げながら、素早く避難を終わらせていた。
こういう事は慣れているのか、流石に行動が早い。
それなのに、デオはその事にも気が付かずに俺を睨んでくる。
「ウル、いったいどういう事だ?」
その顔が歪むのを見て、俺はデオを泣かせたくなってしまう。
こんな風に思ってしまうのは、やはり俺が悪魔だからなんだろう。
「どう、というのは~?」
「女性のところへ遊びに行くとは聞いていたが、なんでこんなところにきたんだ?」
「興奮を抑えるためだよ?それにしても、人の部屋に入り込むなんてデオは変態なのかな?」
「そ、そんなことはない!だけど……ウルは俺が欲しいって……」
まさか、デオが思った以上に俺のこと気にしてくれていたなんて……。
俺はそのことに歓喜し、もう興奮が抑えられなくなってしまった。
だからもっとデオの歪んだ表情が見たくなってしまった俺は、最低だとわかっていても口が勝手に動いていたのだ。
「確かに言ったけどね。俺は別にデオを好きなわけじゃないんだよ」
「…………そ、そうなのか……?」
デオが驚きにその目を見開く。
その顔を、もっと滅茶苦茶にしてしまいたい。もっと傷ついて俺のことしか考えられないようにしてあげたい。
そう思ったら、俺はデオに本当の事を伝えていたのだ。
「いい事教えてあげるよ」
「いい事?」
「そうだよ~。それはね、俺の好きな人のことだよ」
「……ウルお前、好きな人いたのか?」
「そうだよ。俺は、君の弟であるイルレインが好きなんだ」
彼の弟の名前はイルレイン。
俺が一目惚れした相手であり、もう俺の想いが届くことのない相手だ。
それなのに俺はショックを受けるデオの姿に興奮し、どうすれば彼をぐちゃぐちゃににする事ができるのか、その事だけを考えてしまっていたのだった。
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