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二章
115、夢から夢へ(ゼント視点)
しおりを挟むエロは唐突に終わり話が進みます!
今回はひたすら眠っていたゼント視点です。
ー ー ー ー ー
はぁ、俺がもう眠ってからどれぐらいの時間が経っているのだろう?
とか考えるのは何度目かわからないし面倒なので、最近は夢の中でひたすら寝ている駄目な男、それがこの俺ゼントリールってやつなんですよねー。
それに俺って働くのも嫌なタイプなので、ずっと寝てられるなら睡眠万歳ってやつなんですよー。
でもそんな俺でもひとつだけ困ってる事があって、このままだと運命の相手に会えないって事なんですよねー!!
「だから誰かー。俺を起こしてくれー!」
と無駄に叫んだのも何回目かなと、ため息をつこうとして俺は驚いた。
本当に俺の願いが届いたのか、上空から一筋の光が差し込んできていたのだ。
俺は空から降ってくる光を見つめ、まさかこの演出ときたら降りてくるのは運命の相手では……?
と、期待を高まらせてしまう。
「よっと……おお、ゼントいたいた~」
「あ……」
しかし俺の前に現れたのは、ウルさんだった。
「そんな露骨にガッカリしないでよ~。本当なら俺の方が凄くガッカリしたいんだよ?」
「え、なんでウルさんがガッカリするんですか?」
「俺がゼントの夢に入る為に、イヤイヤ誓約したからだよ!」
「えっと、誰が?」
「俺が」
「誰とですか?」
「ゼントとだよ!!」
「ええっ!!?」
いやいや誓約って確か、愛し合ってる人とパートナーになる為にあるんじゃ……?
「あのね、今回は緊急だから仕方がなくだよ?シカタガナク!!終わったらすぐに解約するから、わかってるよね?」
「わ、ワカリマシタ……あの緊急って、俺が寝てる間に何が??」
「……デオが、ガリアの夢に囚われて目を覚まさなくなったんだよ」
「え、デオさんが!?」
もしかして、俺が役に立たなかったせいでそんな事になったんじゃ……それなら俺はこのままウルさんに殺される予定とか!?
「ゼント、今回は君のせいではないから安心していいよ?だけどね、役に立たなかった代わりにどうしても君にはやって欲しい事があるんだけど……勿論やってくれるよね?」
「こわっ、やっぱり凄い根に持ってるじゃないですかー」
「なんか言ったかなぁ?」
ウルさんの殺気を避けるように、俺は目を逸らしてそれ以上聞くのはやめる。
「い、いえ……ナンデモアリマセン。それで俺にやって欲しい事ってなんですかー?」
「ゼントにはデオを助ける手伝いをしてもらうよ」
「え??俺がデオさんを救い出す!!?」
「救うのは俺だから、君は手伝うだけだよ!」
「ああ、そんなに怒らないでくださいよ。ただの早とちりですからー」
「それならいいけど、発言には気をつけてよね~」
ウルさんはデオさんの事になると、すぐムキになるんだからー。でもそれだけデオさんを愛してるって事だし、その関係は俺の理想で憧れちゃうからなー。
だから2人には幸せになって欲しい。その為に俺もデオさんを救う手伝いを頑張るしかないな。
そして今度こそ役に立ってみせるぞー
「よーし、俺頑張っちゃいますからねー」
「それならその気力が残ってる間に説明するけど、ゼントにはデオの夢に潜入してもらうから」
「……夢に潜入?」
「今現在、デオとゼントは同じ魔法使いの魔法で眠らされているんだよ。だから二人には全く同じ魔力印が残っているわけさ」
「えっと、それなら俺から魔力の逆探知でもするんですか?」
その質問にウルさんは首を振ると、俺にもわかるように話始めたのだ。
「逆探知は既に失敗しているんだよね~。だからこれからやる事は、魔力によって眠っているデオの睡眠時の脳波と、ゼントの脳波を全く同じにする事なんだよ。そして二人の脳波が完全に一致したとき、ゼントはウルと同じ夢に入る事が出来るんじゃないかって、研究者の人達が仮定を出したところなんだけど……どう、今のでわかったかな?」
「え、えーと。夢に入る鍵が脳波だとして、その鍵の形が合えば開く的な考えでいいんですよね?」
「う~ん、まあ凄く大雑把に言えばそんな感じかな」
脳波とかはよくわからないけど、そんな事が実際にできるのかと首をかしげていると、ウルさんは俺の肩に手を置いた。
一応ここは夢の中だから潔癖症の蕁麻疹がでないみたいだけど、ウルさんの手に凄い力がこもっているせいで夢なのに痛く感じるのですけど……圧ですかね、これ?
「それで俺は何しにここに来たかといえば、ゼントに実験をしに来たんだよ~」
「実験!?」
「とりあえずゼントの脳波を調べるために、何でもいいから全て試す事になったから」
「え、まさか」
「ゼントも夢の中だから寝なくても大丈夫だよね。さあ、今日から俺と実験尽くしだよ!」
そう言って俺の首根っこを掴んだウルさんは、明るく振る舞っているように見えて凄く焦っているのがわかってしまう。
だってここは夢なのに目元の隈がやばいし……怒ってなくてもずっと睨まれてる気分だったからねー。
そんなウルさんを見てられなくて、俺は大人しく実験に付き合う事にしたのだ。
それから1週間ほど、俺はウルさんとともに実験を続けていた。
基本的に脳波を見れるのは外の人だけなので、ウルさんはこの夢の世界から無理矢理外と連絡をとり、ずっと夢の中で実験をしていた。
その実験内容も、俺の感情に合わせて脳波がどのような値になるかを見るという、かなり地味な実験だった。
だけど地味だからこそ試行回数は数万回を超え、どんどんその指定は細かくなっていた。
その結果、俺の脳波をデオさんと全く同じ脳波にする事に成功したのだ。
だから、やりましたね!と、ウルさんと喜びを分かち合おうとしたのに、その瞬間俺の意識は何かに惹かれるように飛びたった。
何が起きたんだ?と、途切れた意識に混乱した俺はとりあえずゆっくり目を開く。
そして、そこにいる人物に驚いてしまったのだ。
「ガリア?」
目の前には、いやらしいネコさんの格好をしたデオさんがいたのだから。
「で、デオさん!?」
「……さん?ガリア、デオさんなんて呼んで一体どうしたんだ?」
何故か俺の顔を見て、ガリアと言うデオさんに俺は困惑してしまう。
えっとガリアといえば、デオさんを今も夢に閉じ込めてる相手だったような……もしかして今、俺はそのガリアって奴の体に入り込んでる?
そう思って俺は少し離れた鏡まで確認しに行くと、その姿は俺じゃなかった。
これがガリアって男の姿かと思っていたら、俺の奇行が心配だったのか気がつけばデオさんが横にいた。
「が、ガリア?本当にどうしたんだよ」
いやらしい服のまま、俺の腕を掴むデオさんは可愛らしい。
だけど今は服を褒めてる時間はないし、まずは俺が誰なのかを伝えなくては───。
「デオさん。今の俺はガリアって男の格好をしてますけど、ゼントリールですよ。いやゼントって言った方がわかりやすいですかね。ほら何故か進化してた適当な男です……もしかして俺のこと忘れてたりしませんよね?」
「……え、ゼント!? ちゃんと覚えてるけど、でもどうしてここに?」
「どうしてじゃないですよ!こっちはデオさんを助けるのに皆必死だったんですからねー」
「助ける……?」
「そうですよ、特にウルさんなんてずっと必死にデオさんの為に……」
「ゼント、待ってくれ!なんか凄く気になった名前が……」
困惑しているのかデオさんは一瞬言葉を詰まらせた。
そしてその口から出た衝撃的な言葉に俺は驚いてしまったのだ。
「……そのウルっていうのは、一体誰なんだ?」
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