やめて!お仕置きしないで!本命の身代わりなのに嫉妬するの?〜国から逃亡中の王子は変態悪魔に脅される!?〜

ゆきぶた

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二章

129、ブラコン度

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暫く横になっていた俺は、どれほど考えてもゼントに接触する方法が思い浮かばなくて悩んでいた。
そして俺が今はこれ以上考えても無理だなと思った頃、俺達をずっと見守っていたダンが口を開いたのだ。

「……あのよ。イルの兄貴がそろそろ落ち着いたなら、横になったままでいいから俺の話を聞いてくれねぇか?」
「なんだ、ずっと部屋にいて邪魔だと思ったらそういう事だったんだ……。デオ、体調は大丈夫?話は聞けそうかな?」

そう言いながら頭を撫でてくれるウルはまだ凄く心配しているようだ。だけど俺がフラついた原因は鈴のせいだし、今は横になってるからそこまで辛くない。
それにダンが俺に何を話すのか少し気になったので、俺はコクリと頷いていた。

「ああ、大丈夫だ」
「それなら遠慮なく……実は1週間後にイルの誕生日がある。だからその誕生日パーティーに二人とも出席して欲しいんだ」
「たんじょうび、パーティー?」

そういえば、俺が起きたばかりの時にも誰かがそんな事を言っていたような……?

「って、待った!イルの誕生日だって!?」

イルの誕生日はすぐだけど、俺がその誕生日パーティーに参加するとなると話は別だ。
確かに家族の中で俺だけが、毎年直接会ってお祝いをしていた。だから出来る事なら今年も祝ってやりたい気持ちは凄くある。
でも参加するなら絶対にイルと顔を合わせしてしまう、それはとても困る……!

「えーっと、それは出れるのか出られないのかどっちの反応だ?」
「いや、確かに凄く祝ってやりたいけど俺はまだイルに合わせる顔が……」
「そんなの、イルなら全く気にしないと思うぜ?」

ダンは軽くそう言っているけど、俺はそうは思えない。

「……俺は進化をするまで帰らないとカッコをつけて家を飛び出したのに、まだ何の成果もあげられてないんだ。だからイルがそんな俺を見たら失望してしまうかもしれない。それで『進化もまだできない兄上なんて、兄上と思いたくもありません』なんて、イルにそんな事言われたら……俺は、俺は生きていけない!」

想像上のイルに言われただけでもショックなのに、もし本物に言われてしまったら俺は暫く引きこもるかもしれない。
そしてあまりにも落ち込んだ俺を見たウルは、俺の手をギュッと優しく握ってくれたのだ。
何故だろう。それだけなのに気持ちが少し落ち着いた気がする。

「デオ落ち着いて、イルは絶対にそんな事言わないよ?」
「……ほ、本当か?」
「うん、本当だよ。イルはデオが大好きだからね。まあ、俺の方がデオの事をもっと好きだけど……」

そう言いながらサラッと手の甲にキスを落とすウルに、俺はドキッとしてしまう。
でも俺は動揺しているのに気づかれたくなくて、ウルの言った事を改めて考え直してどうにか冷静になろうとしていた。

とりあえず落ち着いてよく考えるんだ俺……確かにウルの言う通り、イルは俺を大好きとまではいかなくても家族として慕ってくれている筈だ。それにイルはとても優しい子なんだから、あんな酷い事は言わない。
そう思ったらあれ程取り乱したのが恥ずかしくなってしまい、俺はウルに謝っていた。

「凄く取り乱して悪かった。でもウルのおかげで少し落ち着いたから、ありがとな」
「それはよかったよ。それじゃあさっきの話の続きをするけどさ、デオもイルより俺の方が好きだよね?」
「そ、それは……そうだと思う……」

そう言って恥ずかしくなった俺はすぐに顔をそらしてしまった。
しかもその先には俺達を見て呆れているダンがいて、俺は真っ赤になった顔を手で覆い隠したのだ。

「あのさぁ、なんでお前らはいきなり惚気始めるんだよ……?」
「何言ってるんだい。俺はこうやってデオと真剣に向き合ってるだけなんだけど?それよりダンもデオをパーティに出したいなら、何か言ったらどうなのかな」
「なんか腑に落ちねぇが、確かにその通りだな。というか俺には、イルの兄貴が何をそんなに心配してるのかわからねぇんだけど……。イルって極度のブラコンだぞ?つまりどんな姿であれ帰って来てくれた事が、1番のプレゼントになるんじゃねぇのか」
「……?」

一瞬ダンが何を言ってるのかよくわからなくて、俺は首を傾げてしまった。
俺がイルのプレゼント……俺が?
それ以前にイルが俺を貰って喜ぶとは思えない。

「ダン、頭は大丈夫か?人はプレゼントにはならないだろ」
「いやなんで俺の回答には辛辣なんだよ……?」
「それはダンが適当に答えているからじゃないのかい。これでもデオはイルに嫌われたくなくて真剣に悩んでるんだよ?」
「いや、俺も割と本気でイルなら1番喜ぶと思ってるんだが?」

その根拠がどこから来るのか全くわからなくて、俺はまた首を傾げてしまう。
だって俺が1番のプレゼントになるわけがないのに、どうしてダンはそんなに自信満々なんだ?
そしてそんな俺を見ていたダンは何か気がついたのか、突然俺を指を差しながら言ったのだ。

「成る程、俺はわかったぜ!お前ら兄弟は、互いのブラコン度がわかってねぇんだな?」
「ぶ、ブラコン度……?」
「イルも、兄貴の方も互いに凄く大事に思い合ってるのに、相手からの評価が低いと思い込んでるって事だよ」
「そんな事言われても……俺はイルの気持ちが目に見えるわけじゃないんだから、そう言われてもわからないのは仕方がないだろ?」

そんな俺の言葉に、突然何か閃いたのかポンっと手を叩いたのはウルだった。

「ああ、そっか!つまりは、目に見えればいいんだよね?」

突然ウルが変な事を言い出したせいで、俺とダンは二人で同じ事を聞き返してしまったのだ。

「「目に見えれば?」」
「そうだよ。イルがどれほどブラコンでデオが帰ってくるのを待ち望んでいるか、その目で直接見て確かめればいいんだ!」
「成る程な、その手があったか……!確かにイルは毎日の日課で必ず行くところがあるからな。その様子もバッチリ見れるはずだぜ?」
「に、日課?それにその様子……って、一体?」

すぐに話を理解したダンと違って、俺は完全に置いてけぼりをくらいポカンとしていた。
そんな俺にウルは改めてわかるように言い直してくれたのだ。

「俺達はデオがいなくなった事で、イルがどれほど寂しがってるかコッソリ見に行くって話をしてるんだけど、デオは寂しがってるイルを見たくないかな?」
「……え?」

俺がいなくなって、寂しがっているイルが本当にいる……?
だけどもしそんな姿のイルを見てしまったら、俺はプライドなんて全て投げ捨ててイルの前に飛び出してしまうかもしれない。
そう考えていたら、ダンが首を傾げながら言ったのだ。

「いや、でもよく考えたらイルにバレないように見るのは無理じゃねぇか?」
「そこはちゃんと俺に考えがあるんだよ。ここまできたら、スライム君にも協力をお願いしてみようかと思ってね」
「げぇっ!アイツかよ……?だけどアイツはそんな事、わざわざ手伝ってくれねぇと思うけど?」
「大丈夫、大丈夫。彼はイルの為だと言えば大体の事は協力してくれる筈だからね」
「確かにそうかもしれねぇけど、でも本当に上手く話に乗ってくれるのか……?」

……スライム?アイツ?
一体二人は何の話をしているんだろう。

そしてその後も俺には二人の会話が全くわからないまま、話はどんどん進んでいった。
その結果、今現在俺たちの目前には何故か大量のスライムがいて、俺は唖然としてしまったのだった。
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