チェンジ

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違和感の正体

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1つ目の違和感は、持っていたノートや今の世界に戻ってきた時に見せた日記の字は自分自身の字とは違うが、内容にはどこか記憶にあるように思うとのことだ。
2つ目の違和感は、日記を持って現れた僕を見たときに、始めて会ったような気がしなかったということだ。
この感覚は他人のそら似だったり、初対面でも懐かしい感覚を感じる人もいるから、あまり当てにならないことかもしれない。
このこと以外のいくつかは確かにおかしいかも知れない。僕は別世界から戻っても記憶の混乱はないのに、彼女にはそれが起きている。何故だ。
「確認したいことがあるからついてきてくれないか。」
「どこにいくの。」
「もうひとりの別世界にいった人のところさ。」
そう、僕はもうひとり別世界にいったと思われる彼女、もう1人の江藤結衣である。彼女はもういないが、母親に会いにいってみようと思った。

14才の結衣の母親に会うのは何回目だろう。娘を亡くして、まだ日も浅いなか会うことに抵抗を感じたが、疑問を解消するには仕方がなかった。
確か彼女の葬儀の際に聞いた会話によると、彼女はいじめを苦にして自殺をしたということだった。尚更いろいろ聞きにくい状態ではあった。
それを察してか、一緒に連れてきた15才のもうひとりの江藤結衣も何か落ち着かない様子だ。
彼女の母親は以前会ったことを覚えてくれていたようで話しに応じてくれた。
「彼女が亡くなる前の様子に変わったところはありませんでしたか。」
まるで刑事みたいだと思いながらも聞いてみた。
母親からの返事は思ったより早かった。
「おかしな感じがあったわね。」
急に勉強ができるようになったから、どうしたのかと思ったらしい。
そして彼女が「変だ。変だ。なにかおかしい。」と何度も繰り返していたらしい。
その頃は両親にもよそよそしくなっていたみたいだし、部屋に閉じこもりがちだった。
母親によると学校でいじめはなかったということだ。近所の人の話は当てにならないものだ。
「彼女の日記を読ませていただけませんか。」
僕は彼女の声が知りたくて無理を承知で頼んでみた。
母親は少し困ったようだったが見せてくれた。

「どうなっているのだろう。周りのみんなは私のことを知っているようだけど私は知らない。何かの病気にでもなったのかな。怖い。」
やはり14才の結衣自身もおかしいと思っており、その状況に悩みすぎて自らの命をたったのかも知れない。
もう少し早く彼女に会うことが出来れば助けてあげるキッカケが出来たかも知れないことが残念でならないが、これで僕自身が思っていた疑念が現実のものかも知れないと思えていた。
一緒にきていた15才の結衣は終始無言であったが、その理由も想像できた。彼女自身も気づいたのであろう。
僕が思ったことを彼女に話してみることにした。
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