日々是成長×神様project・ＨDリマスター

プロローグ&人物紹介？

十月一日その八

十月一日その八。
湯煙に包まれて。














   地図を見ると東の先端には森と深い谷が共存した地方があることをご存じであろうか？
   燎煉で温められた地下水がこの地で湧いて出ているようで、あちこちに温泉が存在している。

   土曜の峡谷、岩動地方というのはまさにここであり、超大型の旅館施設が存在している。
   平日だと言えど連日満員御免の人気宿泊の場所であり、この季節なら近くの渓流の紅葉などがイチオシの季節限定のスポットではなかろうか？

 「……。」

   ほんのり色ずくもみじを見つめながらか露天風呂に入っている少女が、一人寂しく静かに入浴している。
   他の曜日の女神様とは異なり瞳のハイライトが存在せず、まるで生気がないような感覚であるために、ただでさえ寡黙な少女は端から見ればお人形と間違えられてもおかしくはないのでは無いだろうか？

   そんな彼女は土曜神の角田 桃子かくた ももこであり、この旅館を仕切る女将さんである。
   存在感が非常に薄い桃子はよく凝らして見つめないと、存在そのものを認識することは不可能に近いほどにまでであり、極端な人見知りであるために七曜神の皆以外とは口を利くことも無いだろう。

 「……む？」

   人の気配を感じたために振り返ってみると、いつの間にか智美が露天風呂に入っているではないか。
  
 「……智美、おはよう……。 朝早くから遠方より……ご苦労様。」

 「なぁに、単なる朝風呂さ。」

   七曜神達は全員が共通することと言えば風呂が好きなことである。
   これは元々結愛が体を分割したさいに皆に受け継がれたものであるが、どうにも受け継がれなかったものと言えば背丈と胸の大きさぐらいだろう。
   桃子は若干わずかな膨らみがある程度だが、智美は溢れんばかりの男の夢が詰まったほどであり、桃子の一回りも二回り、それどころか三と四を飛ばして五回りほども大きいのかもしれない。

 「……いつ見ても……。 チッ……。」

   智美は視線と舌打ちの理由にすぐに気がつくも、そればかりはしょうがないと慰めてあげるも逆に距離をとられてしまう。
   いつもの茶番なのでこれまた智美にとっては相手を茶化すのが好きなため面白くて仕方がないが、桃子は桃子のままが一番だと頷く。

   そんな真意もわからぬまま湯煙はどこまでも上り詰め、温かな幸せが岩動を今日も包み込んでいた。














土曜の峡谷、岩動地方。
土曜神の角田桃子、入浴中！