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十月
十月十七日
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十月十七日。
逃げられないカルマと萎縮の定め。
夜朧城は聖奈の拠点地であるが主人面の玄弥はズカズカと上がり込んでは、居間の畳にゴロリと寝そべる。
もうじき夜ご飯ではあるが聖奈は想定済みなのか、人数分のお膳のご用意で忙しく、今回はまた別な珍客も居るようだ。
「まったく、こんなところでゴロゴロしないでよねっ! 我が物面しちゃって。」
恋は呆れた様子だが、それを許容する聖奈に対してもあまりよく思っていない。
けど、呆れてはいるものの怒ることはない。
「良いではありませんか。」
聖奈は世話を焼くのがとても大好きなようで、別にヒモの玄弥のために尽くす程度造作も無いことなのだから許してしまうし、恋だって自分の会社の自宅部分にはたまに玄弥は来るものの好き勝手寝転がられても邪魔とはあまり思わないのだ。
そんな気持ちなどだと考えると、やはり恋も自信の甘さにため息を軽く微笑みながらつく。
「玄弥様のための減塩お味噌汁もお作りいたしたので、きっと喜んでくれますよ。」
聖奈は大喜びだが、恋はギョッとした表情。
七刻においては西側全域は白味噌の派閥が多く、東側では赤味噌が多いのだが、もちろん風見も愛染も東側なのだから、西に位置する夜朧の聖奈より味覚はキツく、塩分も多目。
ただでさえ薄い味噌汁に、減塩を要した玄弥の味噌汁を味見した暁には、味噌汁ではなく、味噌風味のお湯に等しい。
どちらかというと、風味を楽しむ水の飲料の熱いバージョンを想像した方が早い。
「玄弥もかわいそうね……。」
かわいそうと思うも自分も何かと最近は馬鹿にできないものが心によぎるし、カップ麺のスープもたまにだが飲み干すような生活も珍しくはないと思うと、ここで恥を忍んで減塩を頼むのも一手だと恋は思う。
だけど言ったが最後、聖奈の管理下の生活など退屈すぎて真っ平になるのが嫌なので恋は苦笑いすることに。
「ほら、ご飯よそったわよ。 起きなさい!」
「ぬぬぬ……眠いのだぜ。」
むっくり玄弥は起き上がると、いただきますは小声ながらも五秒ほど無言の合掌をしたのち味噌汁を一口。
「ふぁ、うまい。」
「ありがとうございます。」
聖奈もこんな笑顔なのだが、これで満足している玄弥を見ながら、味覚矯正とはある意味で恐ろしい事を実感した恋である。
塩分控えめに。
七刻全土の味噌は実は風見自然開発センターで作られているみたいだ。
逃げられないカルマと萎縮の定め。
夜朧城は聖奈の拠点地であるが主人面の玄弥はズカズカと上がり込んでは、居間の畳にゴロリと寝そべる。
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「まったく、こんなところでゴロゴロしないでよねっ! 我が物面しちゃって。」
恋は呆れた様子だが、それを許容する聖奈に対してもあまりよく思っていない。
けど、呆れてはいるものの怒ることはない。
「良いではありませんか。」
聖奈は世話を焼くのがとても大好きなようで、別にヒモの玄弥のために尽くす程度造作も無いことなのだから許してしまうし、恋だって自分の会社の自宅部分にはたまに玄弥は来るものの好き勝手寝転がられても邪魔とはあまり思わないのだ。
そんな気持ちなどだと考えると、やはり恋も自信の甘さにため息を軽く微笑みながらつく。
「玄弥様のための減塩お味噌汁もお作りいたしたので、きっと喜んでくれますよ。」
聖奈は大喜びだが、恋はギョッとした表情。
七刻においては西側全域は白味噌の派閥が多く、東側では赤味噌が多いのだが、もちろん風見も愛染も東側なのだから、西に位置する夜朧の聖奈より味覚はキツく、塩分も多目。
ただでさえ薄い味噌汁に、減塩を要した玄弥の味噌汁を味見した暁には、味噌汁ではなく、味噌風味のお湯に等しい。
どちらかというと、風味を楽しむ水の飲料の熱いバージョンを想像した方が早い。
「玄弥もかわいそうね……。」
かわいそうと思うも自分も何かと最近は馬鹿にできないものが心によぎるし、カップ麺のスープもたまにだが飲み干すような生活も珍しくはないと思うと、ここで恥を忍んで減塩を頼むのも一手だと恋は思う。
だけど言ったが最後、聖奈の管理下の生活など退屈すぎて真っ平になるのが嫌なので恋は苦笑いすることに。
「ほら、ご飯よそったわよ。 起きなさい!」
「ぬぬぬ……眠いのだぜ。」
むっくり玄弥は起き上がると、いただきますは小声ながらも五秒ほど無言の合掌をしたのち味噌汁を一口。
「ふぁ、うまい。」
「ありがとうございます。」
聖奈もこんな笑顔なのだが、これで満足している玄弥を見ながら、味覚矯正とはある意味で恐ろしい事を実感した恋である。
塩分控えめに。
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